まだまだ辞めてほしくない若手社員の離職が止まらない。原因を究明して対策を打ちたい。
当記事では上記のような人事のお悩みに答えます。
近年、若手社員の早期離職率は平均で30%を超えているといわれており、多くの企業で課題となっています。
今回の記事では、入社2~5年目の若手社員の離職理由と、離職防止のために企業が取り組むべき4つの対策をご紹介します。
目次
早期離職とは?若手社員の早期離職率と離職理由
早期離職とは、社員が企業に就職・転職してから3年以内に離職すること。近年、入社後3年以内に3人に1人が離職していると言われています。
厳しい就職活動や転職活動を経て内定を勝ち取り、将来への期待に胸を膨らませて入社したにも関わらず、なぜそんなに早く離職してしまうのでしょうか。
若手社員の早期離職率の現状と離職理由を探ってみましょう。
若手社員の早期離職率
厚生労働省では毎年、新規学卒就職者の離職状況を「学歴別就職後3年以内離職率の推移」として発表しています。
(出典:厚生労働省「学歴別就職後3年以内離職率の推移」)
上に紹介した大学卒の離職率の推移は、大学卒業後1年目から3年目の離職率を表したグラフです。1995年(平成7年)以降、大学卒では約30%の人が早期離職していることがわかります。
大学卒以外でも中学卒、高校卒、短大卒共に3年以内の離職率は高い傾向にあり、若者の早期離職は社会全体の問題として捉えられています。
若手社員が早期離職する4つの理由
若手社員が、早期離職を選んでしまう原因について4つの理由を解説します。
- 仕事内容が自分に合わない
- 職場の人間関係がよくない
- 労働条件が整っていない
- 昇進やキャリアに将来性がない
仕事内容が自分に合わない
入社後の仕事内容が本人の適性に合っていないと、早期離職の可能性が高くなります。
特に、入社前のイメージと実際の仕事の内容にギャップがある場合には、不満やストレスにつながりかねません。
「想定外の仕事を任される」「能力以上のノルマを課される」など、仕事内容のミスマッチは早期離職の理由として多くあげられます。
職場の人間関係がよくない
職場における人間関係の不満が、早期離職の原因となることもあります。会社員は、一日の大半を仕事をして過ごしているからこそ、職場の人間関係が重要です。
また、上司の態度が人によって変わったり、高圧的な言葉遣いをされたりすることも、若手社員にとってはストレスに感じモチベーションに大きく影響します。
労働条件が整っていない
賃金や待遇、福利厚生など、労働条件への不満も早期離職の理由になり得ます。
働き方改革によって働き手の意識は大きく変化しており、特に若手社員はワークライフバランスを重視する傾向が強いです。
近年では、Web上で他企業と労働条件を比較したり、転職成功者のエピソードを目にしたりする機会も増えていることから、入社後もよりよい労働条件で働ける環境を求め、早期離職を検討するケースも増えています。
昇進やキャリアに将来性がない
自社では自身のキャリア形成を見込めないという場合も、早期離職を検討する理由として珍しくありません。
例えば、社内にロールモデルとなる存在がいないと昇進やキャリアパスが描けず、長く働き続けるイメージや会社への貢献意欲を持ちにくいと言えるでしょう。
また、企業としての将来性が見込めないことが早期離職につながる場合もあります。
具体的には「会社のビジョンが不明確」「事業が安定していない」などという状態では、社員は不安感から早期に離職を検討し始めます。
離職の理由についてさらに詳細を知りたい方は以下記事もあわせてご覧ください。
若手社員が早期退職することによるデメリット
若手社員が早期退職してしまうことで生じるデメリットについて解説します。
- 採用コストの損失
- 教育コストの損失
- 新たな人材を確保しなければならない
採用コストの損失
企業は、組織の成長のために、人材の採用に多大な投資をしています。
最近は労働人口の減少で売り手市場なことから、採用代行のためのサービスも増えており、人材採用コストは上昇傾向にあります。
そのため、若手人材に早期離職されてしまうと、採用活動にかけたコストと採用担当者の工数が無駄になってしまいます。
また、将来の戦力と見込んでいた人が離職してしまうと、その補填をするために追加のコストがかかってしまいます。
教育コストの損失
新入社員が業務に慣れ、会社に利益を生み出すに至るまでには、教育コストがかかります。
業務工数を割き新人教育をしたにも関わらず、早期離職されてしまうと教育にかけたコストが無駄になってしまいます。
新入社員の教育については、入社直後の研修だけでなく、実際の配属後もある程度の時間が必要です。
早期離職者が増えれば増えるほど生産性は下がってしまうため、企業として大きなデメリットとなります。
新たな人材を確保しなければならない
人材不足に陥り組織の利益が上がらなくなることも、大きなデメリットの一つです。そのような場合には、早急に新たな人材を確保しなければなりません。
しかし、ここ数年の採用現場は売り手市場であることから、すぐに新たな人材を確保できるとは限りません。
また、採用を進める際には、現状でなぜ早期離職者が出ているのか原因を解明し、次に採用する人材に向けて離職対策をしないと、問題は解決しないでしょう。
若手社員の離職防止のための4つの対策
若手社員の離職防止に繋がる効果的な対策を4つに分けてご紹介します。
- 経営方針への理解を深め、企業の発展性を共有する
- コミュニケーションを活性させ相談できる雰囲気を作る
- フィードバックと評価で目標と課題を意識させる
- キャリアデザインをサポートする
以下で詳しく解説します。
対策(1)経営方針への理解を深め、企業の発展性を共有する
入社3〜5年目になると、一人で任せられる仕事も増えてくる頃でしょう。
企業としても一人前になったタイミングで離職されるのは大きな痛手になります。限られた人数で業務を担当している中小企業ではなおさらのことです。
仕事の楽しみを覚え始めることで、仕事に対する期待も大きくなります。
会社の方針に留まらず、その先を見据えた経営方針や課題などを意識的に伝えましょう。
会社の発展性への理解を深めることが仕事へのモチベーションを保つことに繋がるはずです。
対策(2)コミュニケーションを活性させ相談できる雰囲気を作る
若手社員の中には先輩や上司に相談できずに退職する人が多いのも特徴です。
意見を言いやすい職場の雰囲気を作ることは離職防止に欠かせない対策と言えるでしょう。
特に3年目以上の社員は、仕事が任せられるようになったことで放置されがちな状況にあり、不満や悩みを打ち明けられないまま日々の業務に追われている可能性もあります。
先輩や上司が話やすい雰囲気を作ったり、常に若手社員を気にかけたりといった配慮が大切です。
社内コミュニケーションを活性化にはツールも有効
コミュニケーションを活性させるために、複数でコミュニケーションを取る機会を積極的に設けましょう。業務上関わりが薄い部署の人とも接点を持つこともよい方法です。
社員同士で「ありがとう」を伝え合うサンクスカードや、社員の体調の状態などがわかるコミュニケーションツールの導入なども効果が期待できます。
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対策(3)フィードバックと評価で目標と課題を意識させる
一人で仕事をまわせるようになった若手社員は頼もしく見えるかもしれませんが、一人で仕事を抱えこみ、業務過多になってしまっている状態も多く見受けられます。
優秀な人に仕事が集中する状況が改善されず、それにより疲弊してしまった場合、離職を考えるきっかけに十分なり得ます。
こうしたケースには「1on1」などの面談を設け、上司が部下の不安や悩み、仕事状況を把握することが必要です。
その際に、仕事に対する評価をフィードバックし、新たな目標や課題を意識させましょう。
会社にいる意味やおもしろい仕事に携わえるという期待が持てれば、若手社員も前向きに業務に取り組めるようになるでしょう。
対策(4)キャリアデザインをサポートする
一人ひとりのキャリアプランに沿った経験やスキルを仕事で得られるようにフォローすることも離職防止策となります。
達成できそうな目標を設定させるなどの工夫をし、必要に応じて研修などでスキルを付与するようにしましょう。
20代の半ばを過ぎた社員は、性別などの属性によってキャリアの描き方が大きく違ってくるため、個別でアプローチの仕方を変えることも重要です。
キャリアや成長、収入、ワークライフバランスなど、何を重要にしているのかを共有しましょう。キャリアイメージに沿う選択肢を提示することが大切です。
現代の若手社員の考え方
早期離職防止対策を考える際には、現代の若者が働き方や日常生活で重視している価値観を理解することが重要です。
若手社員の考え方には以下のような傾向がみられます。
1.自分の時間を大切にしたい
プライベートの時間を重視し、仕事においては「残業は無駄・したくない」「サービス残業はあり得ない」という考え方を持つ人が多くいます。
仕事に対して責任感や意欲が低いのではなく、「定時までしっかり働いて、その後は自分のプライベートの時間」という区切りがしっかりしています。
2.承認欲求が高い
「認められたい、すごいと言われたい」という承認欲求が高い傾向にあります。対して物欲はあまり多くないようです。
3.ムダな努力をしたくない
努力を進んでするというより、いかに効率的に物事を進めるかを実践していく傾向が強くあります。デジタルネイティブ世代であることも関係していると考えられます。
若手社員の離職防止のためにできることとは?
若手社員の離職を防止するために、人事担当者やリーダー層はどのようなことを意識すればよいのでしょうか。
離職防止アドバイザーに、すぐにでも取り入れたい若手社員に向けた離職防止対策について聞いてみました。
教育研修事業部 事業部長
若手社員の離職防止のために、人事担当者やリーダ層に必要な意識とは?
入社2~5年目となると、今後を見据えたキャリアプランのすり合わせが必要となってくるタイミングです。
ある程度自立すると、このような仕事がしたいという希望を持つようにもなり、将来について考え始めます。
企業として社員のためにできることは、キャリアプランに合った経験を付与することではないでしょうか。
「こういうキャリアを積みたいのであればもっとチャレンジをするべきだ」などと上司が背中を押すことで、「もっと学べることがある」「成長できる」と意識を変えられるはずです。
社員の可能性を広げるためにも、新たなチャレンジに繋がる仕事への関わり方を伝えることが重要でしょう。
大手企業と中小企業で若手社員の早期離職を防止する対策に違いはありますか?
若手社員の早期離職率には、中小企業と大手企業で違いがあるように感じています。
中小企業は大手企業より研修が少ないものの、若手でも仕事を任される環境にあるため、成長のスピードは早いのではないでしょうか。
販売や営業職ではクライアントと接する機会も多く、優秀な人材は引き抜かれることも多々あります。
一方で中小企業は、部署が少なく仕事の領域が狭いため、やれることの限界があり、先を見据えやすいという面もあります。中小企業ほど手厚くテコ入れして、若手社員の離職防止に取り組まなけらばならないでしょう。
大手企業は、部署異動などで違う業務に就ける確率が高いので、チャレンジの選択肢も多いでしょう。入社3~5年目ではまだ見切りをつけずに、30代前半や40歳前に離職が多くなる印象があります。
ただ、辞めさせたくない人材は他社からしても欲しい人材だということを忘れず、キャリアプランに寄り添ったチャレンジ支援を続けていただきたいですね。
まとめ
今回は、若手社員の早期離職の原因と対策について解説してきました。入社3年以内の早期離職は平均で3割以上に及びます。よくある離職理由は以下の通り。
- 仕事内容が自分に合わない
- 職場の人間関係がよくない
- 労働条件が整っていない
- 昇進やキャリアに将来性がない
それに対する有効な4つの施策は以下の通りです。
- 経営方針への理解を深め、企業の発展性を共有する
- コミュニケーションを活性させ相談できる雰囲気を作る
- フィードバックと評価で目標と課題を意識させる
- キャリアデザインをサポートする
若手社員は仕事の楽しみを感じ始めながらも、不安や悩みを打ち明けられずに離職してしまう傾向があります。
育成に時間をかけた若手社員が早期離職してしまうのは、企業にとっては大きなデメリットです。コミュニケーションを活性化させ、意見を言いやすい職場環境作りを心がけましょう。
キャリアプランのすり合わせをして、企業としても社員の将来に寄り添うことが若手社員の離職防止につながります。
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