部下や同僚から突然「退職したい」と告げられて驚かされた経験はありませんか。退職の決意は徐々に固められるものであるため、退職の兆候を見逃さないことが重要です。
今回の記事では、退職希望者が見せる兆候を3段階のレベルで取り上げ、退職兆候を見せた社員への対応をご紹介します。
目次
退職希望者が見せる3段階の兆候・前兆
社員の退職意思を見極めるのは難しく、上司や人事部が状況を把握しきれないのが現状ではないでしょうか。
退職を決意してしまう前に、姿勢や言動に表れる「退職の兆候」にいち早く気付くことが大切です。
退職の兆候と考えられる行動や振る舞いを3段階のレベルに分けて見てみましょう。
- いつもと違う?日頃の態度や発言の変化
- 仕事中に別の用事?普段とは違う行動スタイル
- 退職をいつ切り出されてもおかしくない!身辺整理の開始
レベル1.いつもと違う?日頃の態度や発言の変化
退職に至るまでの初期段階には、退職するべきか、続けるべきかと今後について悩んでいる期間があるはずです。
進退について悩んでいるときは、日頃の態度や発言に少し変化が表れる可能性が高くなります。
例えば、日常的におこなっている挨拶や世間話に参加しないなど、いつもとは少し違う振る舞いをしていた場合には、何か悩みを抱えているのかもしれません。
もし、あからさまに愚痴や不平不満を言うことが増えているのであれば、仕事内容や職場の雰囲気に不満を抱えている可能性もあります。
また、退職を検討し始めるタイミングで、心許せる人に相談をする可能性もあります。
仲のよい同僚といつも以上のペースで頻繁にランチや飲みに行く行動から、退職の前兆が見受けられるかもしれません。
レベル2.仕事中に別の用事?普段とは違う行動スタイル
日頃の態度や発言に変化が表れた後、普段と違う行動スタイルを取るようになると、退職への意思を少しずつ固め、次の準備を始めている可能性があります。
特に大きく変化があったとはいえないけど「なんとなく業務中よそよそしい」もしくは「今までより退勤が早くなっている」という場合なども、退職の兆候かもしれません。
退職しようと考えている人は、悟られまいと平然を装いますが、転職に向けた準備を徐々に進めている段階では、日々の行動に少し変化が現れるものです。
また、仕事中に私用電話をするなど、業務に取り組む姿勢に支障がある場合は、かなり注意深い観察が求められます。
加えて、資格取得にこれまで全く興味を示さなかった人が、資格勉強を突然始めた場合も退職を検討している可能性があります。
今の職場にいるうちに、転職活動に役立つ資格を取得しようと考えているケースです。
ただしこの場合、単なるスキルアップのための資格取得の可能性もあります。
どちらにせよ、その資格を自社で評価する旨を伝え、社員の利益になることを示して自社のイメージアップを図りましょう。
レベル3.退職をいつ切り出されてもおかしくない!身辺整理の開始
短期間の内に、欠勤や半休、早退が増えている場合には、既に転職活動をかなり進めている可能性があります。
ここまでくると退職の意思は固く、仕事に身が入らないこともあるでしょう。
「新しい業務に関心がない」「仕事中もボーっとしている」という状態は、次の仕事や転職先のことを考えていると捉えることもできます。
引継ぎのためのマニュアルを作成し始めたり、少しずつ私物を持ち帰りデスクがきれいになったりといった変化が見られると、いよいよ退職の準備に取り掛かっていると考えられるでしょう。
この段階になってしまうと、退職を引き止めることはなかなか難しいかもしれません。
仕事を辞める人が感じる退職の理由は?
社員はどのような理由から、退職を考えるのでしょうか。さまざまなケースが考えられますが、多く見られる退職理由を6つ紹介します。
- 成長の機会を求めている
- 評価や業務量に不満がある
- 会社に魅力を感じない
- 人間関係がうまくいっていない
- 会社に将来性を感じられない
- 不満以外が理由の場合も
成長の機会を求めている
近年、終身雇用の崩壊や、転職に対する意識の変化もあり、社員は入社後も今後のキャリアについてどうするべきかを考えています。
多くの社員が、社内外でのキャリア形成を視野に入れていることから、自社である程度成長できたと感じたタイミングで次のステップへと退職してしまうケースが見られます。
また、キャリア形成を目的として転職する人は、モチベーションが高く多くの努力をしている傾向があります。
努力の結果、仕事の習熟度が早く、その会社にいることで得られる刺激が減少してしまい、新たに挑戦できるフィールドを求めて、退職することもあるでしょう。
評価や業務量に不満がある
社内に年功序列の慣習が残っていたり、正当な評価制度がない組織の場合、自身の評価や担当している業務量に不満を感じ退職を検討する人もいます。
優秀な社員ほど、要領よく仕事をこなし、多くの成果を上げることができます。
しかし、他の社員よりも多くの仕事を任されることになったり、成果に対して正当な評価をしてもらえなかったりすると、組織に対して不満が強くなります。
その結果として、より自分を評価してくれる転職先を探し、退職につながることもあります。
会社に魅力を感じない
勤めている間に、会社のビジョンや方向性に違和感をもったり、共感できないと判断した場合にも、社員は退職を検討します。
また、他社と比較して福利厚生や待遇が不十分だと感じている場合にも、転職を検討するきっかけとなるでしょう。
人間関係がうまくいっていない
社内での人間関係に問題を抱えている場合、精神的なストレスを感じて退職を検討する人が多いです。
同僚や上司など、身近な人間関係がうまくいかないと、誰にも相談できずに突然退職してしまうことも。
日頃から社員間のコミュニケーションに目を向け、トラブルや悩みを抱えていないかどうか確認する必要があります。
変化をいち早く察知し、原因となる人間関係の問題を解決することで退職を防げる可能性は高まります。
会社に将来性を感じられない
会社のビジョンや方針に対して違和感や不安を感じる場合も、退職を検討する理由になり得ます。
優秀な人材ほどキャリアプランを大切に考え、自身のキャリアビジョンを描ける会社であるかを重視する傾向にあるためです。
例えば、「経営陣が時代にそぐわない考え方をしている」「古い仕組みやシステムに依存している」など、多様性やDXといった時代の変化に柔軟に対応できていない会社だと、社員から見放される可能性があるでしょう。
また、会社の業績が悪化していたり回復する見込みがなかったりするケースでは、給与や福利厚生などの待遇面への不満が、退職を考える要因となります。
不満以外が理由の場合も
社員が退職を検討するのは、会社に対して不満がある場合だけではありません。
例えば、結婚や育児、病気や介護、家族の転勤など、ライフスタイルの変化が退職理由となる場合もあります。
現状に不満がなくとも退職せざるを得ない人がいることも、把握しておきましょう。
その他、独立や起業などにより、退職を選択するケースもあります。
突然会社を辞めてしまうタイプとは?
前述したような兆候がなくとも、ある日突然退職してしまう人もいます。次のようなタイプの人に多いようです。
- 上昇志向のある人
- 真面目で人当たりがよい人
- 内向的な人
- 人付き合いがドライな人
上昇志向が強い人は、常にキャリアアップの可能性を探っているため、突然会社を辞める可能性があります。日頃からキャリアチェンジや起業について話題にする人は要注意です。
普段から人当たりがよく真面目な人は、実は心の中にストレスを溜め込みがちで、突然会社を辞めることが多いタイプです。
あまり人と話さない内向的な性格の人の中には、不満を抱えていてもそれを人に相談できず、ある日限界を迎えてしまい退職につながるケースがあります。
人間関係にドライで、自分のプライベートを明かさない人などは、仕事とプライベートの線引きがはっきりしています。そのため、会社を辞めることに抵抗がない傾向があります。
退職の兆候をみせた社員に取るべき対応
社員の退職兆候を察知したとき、どのようなフォローが必要でしょうか。すぐにでも取り入れたい具体的な対応を3つに分けてご紹介します。
- 退職兆候に気付いたら、まず話を聞く
- 業務内容と量を精査し、問題を解消する
- キャリアプランを共に考える
対応(1)退職兆候に気付いたら、まず話を聞く
仕事に不満を感じているかもしれない、退職を考えているかもしれないと感じた場合、まずは話を聞くことから始めましょう。
話を聞く際に注意したいポイントは、「仕事が嫌になった?」「転職活動してるの?」など、いきなり核心的な質問をしないことです。
「最近調子が悪いみたいだけど大丈夫?」「いつもと様子が違うけど何かあった?」というように、相手の立場に立って話を聞くことを心がけましょう。
打ち明けられた不満や悩みを聞くだけに終わらせず、解決策を一緒に考え、納得するまで話し合うことが重要です。
退職兆候に気付くためには、大前提として、日頃から部下やチームスタッフに関心を持ち、積極的に接点を持つようにしましょう。
日常のコミュニケーションを大切にすることで、ささいな変化にもすぐに気付くことができます。
対応(2)業務内容と量を精査し、問題を解消する
労働条件や福利厚生などは、すぐに改善することは難しい場合があります。
それに対して、業務内容の見直しは、比較的すぐに対応できます。
どれだけ業務内容にやりがいがあったとしても、業務量が多すぎると誰でも疲弊してしまいます。
残業時間や健康状態などをチェックし、なるべく早く業務量の見直しを行い、フォローできる体制を整えましょう。
業務内容が適していないようなら、ジョブローテーションを検討するのもいいでしょう。
人材育成の目的を持って、計画的に業務内容や職務を変更することは、社員のスキルアップや知識の充実、企業の生産性向上にもつながります。
対応(3)キャリアプランを共に考える
退職の兆候を見せている社員は、「この会社ではなりたい自分になれない」と自身のキャリアについて不安を抱えている可能性があります。
「この先どのようなキャリアを築いていきたいのか、そのためにはどのようなチャレンジやスキルアップが必要になるのか」を共に考えてあげましょう。
本人の意思や希望を確認した上で、自社でどのようなキャリアアップが可能なのか、いくつかの選択肢を提示すると、社員も先のキャリアをイメージしやすくなります。
退職を検討している社員を引き止めるには
退職を検討している人に気付いた場合、上手に対策を取ることで退職を阻止できる可能性もあります。
以下でいくつかの方法をご紹介します。
辞めないでほしいことを率直に伝える
率直に「辞めないでほしい」と伝えることは効果的な方法です。
退職の意思表示をされて何も行動しなければ、社員は「この会社に自分は必要ない」と感じてそのまま辞めてしまいます。
社員がどの程度真剣に退職を検討しているのかを十分に把握した上で、自社にとって必要な人材であることをしっかり意思表示して伝えましょう。
説得することで考え直すきっかけになる場合もあります。
カウンセリングをおこなう
辞めそうな兆候が見えた社員には、早い段階でカウンセリングをおこなって話を聞くことが大切です。
退職を検討している人は、悩みや自社に対する不満を抱えているケースがほとんどのため、面談や雑談の場を設けて聞き出します。
ポイントは、無理に聞き出すのではなく、カジュアルな雰囲気で雑談を交えつつ、話しやすい雰囲気を作ることです。
社員の気持ちを尊重し、話に耳を傾けて受け止める姿勢を見せましょう。
悩みや不満を吐き出すことで社員はストレス発散ができ退職防止につながる上、企業は社員の不満を取り除くための改善策を取ることができます。
配置や待遇を見直す
仕事や職場の人間関係に悩んでいる場合、他部署へ異動させるのも一つの方法です。
環境が変わることで、心機一転して仕事に取り組める可能性が高まります。
また、給与や福利厚生など待遇に不満がある場合は、必要に応じて改善を図ります。
評価をする際には、多角的な視点からの意見を取り入れて客観性を保つことで、社員の納得感を得やすくなります。
個人の待遇に限らず、制度自体を定期的に見直して改善していきましょう。
退職兆候にいち早く気付くためにできることとは?
社員の退職兆候を早期発見するために、人事担当者やリーダー層はどのようなことを意識すればよいのでしょうか。離職防止アドバイザーに、退職兆候にいち早く気付くためにできることを聞いてみました。
教育研修事業部 事業部長
退職の兆候をいち早くキャッチするための質問とは?
退職の理由は人それぞれなので、これで全てがわかるという魔法の質問はないかもしれません。
しかし、さまざまな角度からの問いかけをすることで、退職の素因を知り早めに摘むことが重要です。
「最近どう?」「うまくいってる?」などの日常的な質問が、退職の意思を固め始めている社員に対して、効果を発揮することがあります。
会社での居心地のよさや人間関係、やりがいや成長実感など、いろいろな視点からの質問を投げかけてみましょう。
社員が本音を話してくれるよう、細やかなコミュニケーションで信頼関係を築いておくことが重要ですね。
社内のコミュニケーションを活性化し、社員の定着支援するためのツールもあります。
社員の働き方やモチベーションの状態を把握するという意識に加え、ツールを活用することで、退職の兆候にもいち早く気付くことができるでしょう。
離職の兆しを早期発見!離職防止アプリ「HRRing」
退職の兆候を見逃さないために、普段からできることとは?
退職を防止するためには、退職因子を早めに取り除くことが重要です。
そのためには部下やチームスタッフが何に困っているのか、業務が滞ってる原因は何かを、寄り添いながら共に考えて改善方法を探ってください。
見逃し続けてしまうと、退職へ気持ちが傾くのは当たり前ですよね。
不満や不安といったマイナスポイントが蓄積され、それが改善されず退職につながります。
なるべく早い段階で問題点に気付ければ、引き留められる対策を打つことができるはずです。
退職が起こりにくい組織を形成するポイント
社員の退職を防ぐためには、退職の兆候を察知するだけでなく、社員が退職を考えないような組織を作ることが大切です。
ここからは、退職が起こりにくい組織を形成するポイントをご紹介します。
社員の意見を聞く
社員にいつもと違った様子や仕事に対する不満・不安を抱えている様子が見受けられた際は、まずはじっくり話を聞くことが大切です。
相手が話しやすい環境を整えた上で、「いつもと様子が違うようだけど何かあった?」「体調が悪いようだけど大丈夫?よかったら話を聞くよ」というように、相手の立場に立った言葉をかけましょう。
一方、「退職を考えているの?」「仕事に不満があるの?」など、寄り添う姿勢とは異なるような直接的な表現は望ましくありません。
また、悩みを打ち明けられた場合はその解決策を一緒に考え、相手が納得するまで相談に乗ることを心がけましょう。
従業員の些細な変化を察知するには、日頃のコミュニケーションも大切です。
部下や同僚の態度や発言に常に関心を持ち、積極的に関わることで、退職の兆候に気付きやすくなるでしょう。
労働環境を改善する
労働条件や職場内の人間関係、業務内容など労働環境に課題がある場合、社員の退職が起こりやすくなります。
すぐに改善することが難しいケースもありますが、例えば業務内容の見直しであれば、比較的改善がしやすいでしょう。
社員が業務にやりがいを感じていたとしても、業務内容が適していなかったり業務量が多すぎたりすると、やる気が失われる可能性があります。
業務内容が合わないケースでは、社員の残業時間や健康状態などを把握し、できるだけ早めに業務内容の変更やフォローをするのが重要です。
その他、ジョブローテーションを検討してもよいでしょう。
業務内容や職務を変更することで、社員のスキルアップも期待できます。
多様な働き方を実現する
ライフスタイルが多様化している現在、個々人の事情やライフスタイルに合わせた働き方を選択できるよう、多くの企業においてさまざまな取り組みが進められています。
テレワークやフレックスタイム制の導入、副業や兼業を可能にするなど、場所や時間にとらわれずに働ける環境を作ることも、退職を起こりにくくする組織形成のポイントです。
多様な働き方を実現できれば、社員が定着するだけでなく、エンゲージメントの向上や企業の生産性向上にもつながるでしょう。
まとめ
社員が普段と違う言動を取った場合、退職を考えている可能性があります。
退職希望者が見せる兆候にいち早く気づくためには、細やかなコミュニケーションで日頃から信頼関係を築いておくことがポイント。
一度退職を決意した社員を引き止めるのは至難の業です。
そのため、異変に気づいたら、早め早めの対策を講じることをおすすめします。
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