心理的安全性とは、自分の発言や行動に対する周囲の反応を恐れたり、恥ずかしく感じたりせず、ありのままの自分を出せる状態を意味します。
米Google社で実施されたリサーチプロジェクトにおいて「心理的安全性がチームの生産性を向上する重要な要素となる」との成果報告が発表されたことで、心理的安全性に注目する企業が増えました。
では実際に、心理的安全性が高い企業にはどのような特徴があるのでしょうか。
今回の記事では、心理的安全性が高い組織をつくるメリットやチームにもたらす効果、心理的安全性の測り方についてご紹介します。
目次
心理的安全性とは
心理的安全性とは、個々人が恐れや不安を感じることなく発言・行動できる状態を言います。
ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン氏が提唱した概念として知られ、英語の「サイコロジカル・セーフティ(psychological safety)」を和訳した心理学用語です。
職場における心理的安全性とは、「このチームなら、無知・無能・ネガティブ・邪魔だと思われる可能性のある発言や行動をしても大丈夫」と信じられるかどうかを意味します。
心理的安全性が確保されていれば、質問をしたり、新しいアイデアを披露したり、自分の過ちを認めたりしても、誰も自分を責めたり罰したりしないと信じられる余地があるということです。
このような安心感を得られる職場は、心理的安全性が高いと言えるでしょう。
心理的安全性が注目を集めている背景
心理的安全性が注目されてきた背景として、米Google社のリサーチチームによる「プロジェクト・アリストテレス」と名付けられた計画が関係しています。
米Google社の調査によると、生産性が高い働き方をしているチームには「他者への心遣い」や「どのような気づきも安心して発言できる」という特徴が挙げられました。
これらの特徴はチーム内の心理的安全性の高さを表しており、プロジェクトの成果報告として「心理的安全性がチームの生産性の向上に影響している」と結論付けられました。
この発見が発表されて以来、多くの企業が心理的安全性に関心を示しています。
(参考:Google re:Work『「効果的なチームとは何か」を知る』)
心理的安全性が高い組織をつくる3つのメリット
心理的安全性が高い組織をつくることで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。生産性の向上にもつながるメリットを3つご紹介します。
- 社員一人ひとりのやる気や責任感が高まる
- 前向きな挑戦により、イノベーションや改善が生まれやすい
- 多様な価値観が認められるため、議論が深まりやすい
メリット(1)社員一人ひとりのやる気や責任感が高まる
一人ひとりの発言を認める心理的安全性の高い組織では、社員は自分の発言により責任を持つようになります。
仕事に対する責任感や関心が高まることで、積極的に業務に取り組む社員も増えるでしょう。
また、個人レベルのコミュニケーションが円滑になると、好ましくない発言や行動に対して注意を促すことにつながり、パワハラなどのリスク軽減も期待できます。
メリット(2)前向きな挑戦により、イノベーションや改善が生まれやすい
心理的安全性が高い組織をつくることで、何事にも挑戦しやすく、イノベーションや改善が生まれやすいというメリットもあります。
また、心理的安全性によってマネジメント層だけではなく、一人ひとりが現状をより良くしていこうという前向きなマインドを持つようになるでしょう。
新しい業務や課題にも立ち向かいやすくなるため、イノベーションや改善が生まれやすい組織形成につながります。
メリット(3)多様な価値観が認められるため、議論が深まりやすい
近年は、新たなイノベーションを生む多様性(ダイバーシティ)が注目されています。
「多様な価値観」を重視する組織は心理的安全性が高く、さまざまな個性や能力を持った人が集まりやすくなるでしょう。
同じような価値観を持った人同士が自由に話すより、異なる価値観を持った人たちが話し合う方が議論が深まりやすいというのもメリットに挙げられます。
心理的安全性がチームにもたらす効果
ここでは心理的安全性がチームにもたらす効果についてご紹介します。
- 情報やアイデアの共有が活発になる
- 目指すビジョンが明確になる
- エンゲージメントが向上する
(1)情報やアイデアの共有が活発になる
心理的安全性がチームにもたらす効果として、情報やアイデアの共有が活発になると考えられます。
その理由として、チームのメンバー同士がお互いを認め合い、尊重し合うことで、職場内に価値観の共有が根付くためです。このような環境でメンバー同士が切磋琢磨すれば、個人が持つ能力の向上も期待できるでしょう。
また、失敗を恐れない挑戦によるトライ&エラーで、学習の理解が速くなるという効果も挙げられます。
(2)目指すビジョンが明確になる
心理的安全性は、組織の目標や課題に対して社員同士が自由に議論できる環境も醸成します。
目標達成に向けた建設的な議論を行えることで、チームの目指すビジョンを明確にできます。
チームの全員が納得したビジョンを共有できるうえ、メンバー全員が同じ目標に向かって働くことで、目標達成のスピードも速くなるでしょう。
(3)エンゲージメントが向上する
心理的安全性が高い職場は「仕事がしやすい」「居心地がいい」ため、社員のエンゲージメントが高い傾向にあります。
エンゲージメントの高さは仕事へのやりがいになるとともに、自分の能力や特技を活かせる環境で長く働きたいという考えにつながるでしょう。
その結果、離職率が低くなり、優秀な人材の流出の抑制が期待できます。
心理的安全性の測り方
心理的安全性を測るためには、メンバーの一人ひとりがチームの現状をどのように捉えているかを確認する必要があります。
心理的安全性の測り方には、「自分がチームに感じていること」「チームメンバーの状況」という2つの視点に立った質問を用意し、定期的にアンケートを実施する方法があります。
心理的安全性が高く、社員が定着しやすい組織かどうかを測る7つの質問についてみていきましょう。
心理的安全性の高さを測る7つの質問
チームのメンバー同士で、課題や難しい問題を指摘し合える。
チームのメンバーは、自分と考えが異なることを理由に他者を拒絶しない。
チームに対してリスクのある行動をしても罰せられない。
チームの他のメンバーに助けを求めることは容易である。
チームのメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動はしない。
チームのメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
この7つの質問に対してポジティブな回答が多い場合は、「心理的安全性の高いチーム」と判断できます。
ポジティブな回答をしたメンバーは、他のチームメンバーを信頼し、安心して仕事をしている状態にあると考えられるでしょう。
一方、ネガティブな回答が多い場合は「心理的安全性の低いチーム」と判断できます。
その回答者はチームのメンバーとの信頼関係を築けず、不安を抱えながら仕事をしている可能性があります。
心理的安全性を測る方法として、メンバーの日々の心と体のコンディションを相互理解することも大切です。
カケハシ スカイソリューションズの離職防止ツール「HR Ring」には、「こころ」と「からだ」の調子を毎日スタンプで簡単に回答できる「パルス」機能や、四半期に一度など任意の期間で簡単なアンケートを実施できる機能があります。
回答をもとに、気になる社員にピンポイントで対応できるのもメリットです。
オンライン時代の企業組織の心理的安全性創出アプリ「HRRing」
心理的安全性が高い組織・チームをつくるために必要なこととは?
心理的安全性が高い組織・チームをつくるためには、どのようなことを意識して取り組めばよいのでしょうか。離職防止アドバイザーにマネージャーなど管理職層が心がけたいポイントを聞きました。
教育研修事業部 ゼネラルマネジャー
離職防止アドバイザー
心理的安全性を組織やチームに浸透させるには?
心理的安全性を組織やチームに浸透させるためには、企業側の意識が重要ですね。
心理的安全性は、組織やチームに新メンバーが加入したときに低くなりやすく、チームに馴染めないことが原因の一つに挙げられます。
新メンバーに対して、既存社員や上長が積極的に声がけすることが大切ですね。
新人研修では、「〇〇さんは私のことを何もわかってくれない」という不安の声をよく耳にしますが、新メンバーも上司や同僚について仕事以外のことは知らないのがほとんどです。
知ってもらいたいと思うだけではなく、自分のことを知ってもらうための働きかけも必要でしょう。
ただ、新メンバーからアクションを起こすのは難しい場合もあるため、上長や先輩社員から発信していくのが望ましいですね。
また、心理的安全性の高い組織にするために「何をすべきか」を浸透させることも重要です。
例えば、上長がどのような思いで仕事に取り組んでいるかなどを話せると、関係性を深められるでしょう。
心理的安全性はどのようなシーンで必要?
特に打ち合わせや会議などのミーティングにおいて、心理的安全性が必要とされるでしょう。
言いたいことがあるけど何も言えない状態や、否定されるかもしれないと恐れて発言できない状態は、チームの在り方としてもったいないですよね。また、起案者の意見に寄り添うだけでは議論は発展しません。
心理的安全性の高いチームの方が活発な意見がでます。立場に関係なく自由に発言できるようにするためには、まずは突拍子のない意見も受け止めることが大切です。
例えば、ミーティング内で意見を出し合うブレストの時間と意見をまとめる時間をあらかじめ設定するなど、グランドルールを決めるのも一つの方法ですね。
心理的安全性の高い組織を作る上で重要なポイントとは?
上長など上の立場の人が、自由に発言できるように声がけすることが大切です。
ただし、心理的安全性を考えるうえで注意したいのが、「心理的安全性が高い状態=自分が守られている状態」とは違います。
心理的安全性とは、自分の意見を通したり、自分のために働きやすい環境をつくるという意味ではありません。
企業の目標やクライアントのよりよい発展のために、みんなで意見を出し合い、本来の目的に向かっていける状態が心理的安全性が高い状態と言えます。
つまり、自分本位ではなく、目的のために自分ができる役割を担うことが求められます。
そのためにも、上長がしっかりと目指す道を示さなければいけないと考えます。
まとめ
組織やチームにおいて、個々人が恐れや不安を感じることなく発言・行動できる状態を「心理的安全性」と言います。
単に同僚同士の仲が良いということではなく、「会議で自由に発言してもいい」というようにルールで決めることでもありません。
心理的安全性の高い組織・チームでは、メンバー同士のコミュニケーションが円滑になり、切磋琢磨しながら働ける環境があるため、生産性の向上が期待できます。
自社では正しく心理的安全性が確保されているか、見直ししてみてはいかがでしょうか。
「自社は心理的安全性が低い」と感じれば、以下の記事も参考に改善に着手してみるとよいでしょう。
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