「社員の離職を食い止めたい」と考える企業では、離職防止に効果的な対策をとるために、離職理由を分析する必要があります。
しかし、退職理由は世代や職場環境によって違うため、最善の対策を見つけることが難しいのが実状です。
今回の記事では、離職理由のランキングを紹介するとともに、男女で差がある離職理由やその背景を徹底的に分析します。
離職・退職理由ランキングTOP10
離職の理由は、個人が置かれている状況や職場環境によって様々ですが、調査やアンケートなどから離職の傾向を知ることは、離職防止の対策を考える上で重要です。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成(若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)」では、「『初めての正社員勤務先』を離職した理由」を男女別で紹介しています。この調査をもとに、離職理由として最も多かったものからランキング形式でご紹介します。
(引用:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成(若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)」)
1位:肉体的、精神的に健康を損ねたため
女性、男性共に多く挙げられたのは「肉体的、精神的に健康を損ねたため」という理由でした。
「長時間労働を強いられる」「休暇の取りにくい」などの過酷な労働環境により、体調を崩してしまう人が多いことが伺えます。
休養を取り復帰した場合でも、働く環境が変わらなければ症状は再発し、結果退職につながってしまいます。
2位:労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため
労働条件への不満も離職理由として多く挙げられます。
労働条件について入社前に確認済みであっても、実際の業務を行う中でギャップが生じる可能性があります。
友人や転職した同僚から、より良い環境や条件で働いているという話を聞いたことがきっかけで、自社の条件に対して不満を抱くこともあるようです。
3位:人間関係がよくなかったため
調査結果から、人間関係の不満を理由に退職する人が多いことも伺えます。
「同僚や部下と相性が合わない」「上司からのプレッシャーを強く感じる」などの人間関係によるストレスが、仕事へのモチベーションを低下させていきます。
コミュニケーションが少ない職場では、気軽に相談できないため、人間関係の不和が起こりやすいと考えられます。
4位:結婚・出産のため
女性に多い離職理由として「結婚・出産のため」も多く挙げられています。
結婚や出産をしても働きやすい環境や整備は徐々に整いつつありますが、ライフイベントによって退職を余儀なくされ、仕事を続けたくても続けられない状況にいる女性が、依然として多いことが分かります。
5位:自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため
一方で男性に多く見られたのは、仕事内容への不満です。
厳しい就職活動を乗り越え入社したにも関わらず「思い描いていたものと違う」「希望していた部署や仕事と違う業務についている」など、やりたいことができない状態にあると、仕事への意欲も保ちにくくなります。
仕事を続けることでどのように成長できるのかというキャリアが見えにくいと、将来に希望が持てず、離職を決意することにつながるのです。
6位:仕事が上手くできず自信を失ったため
仕事に自信が持てずに離職してしまうケースも見受けられました。
満足な教育や研修が受けられないまま実務に就いたり、コミュニケーション不足により自己評価が低下したりしてしまうことも離職につながります。
特に、採用直後の若年層の社員に対しては、明確な指示と丁寧なコミュニケーションを心がけ、不安の払拭に努める必要があります。
いきなり難しい業務に就かせるのではなく、簡単な業務から段階的に仕事を任せてあげましょう。自信をつけさせるためには、研修体制の強化も効果的です。
7位:ノルマや責任が重すぎたため
過剰なノルマや責任も離職理由の一つです。
就職して間もない社員は、職場環境に慣れるだけでも一苦労です。その上、無理なノルマを課したり、社員の力量に見合わない責任ある業務を任せたりすると、不満や不安が募り離職の理由になります。
上司の想定よりも、社員がノルマや責任を重く捉えて負担に感じていることもあるため、注意が必要です。
コミュニケーション不足によるお互いの認識のズレを放置してしまうと、最悪の場合離職につながってしまいます。
8位:賃金の条件がよくなかったため
「賃金の条件」も離職理由になります。
賃金をモチベーションに働く人も少なからずいるため、業務に対する賃金に納得感が得られなければ離職につながってしまいます。
働き方の多様化が進み、転職が当たり前の現代において、成果主義を導入する企業も増えています。
そのため、賃金に不満がある人は待遇のよい企業に転職して収入アップを目指すという考え方も一般的になりつつあります。
賃金や福利厚生が市場相場と比較して劣る場合は、待遇を改善しなければ離職を防ぐことはできません。
9位:会社に将来性がないため
会社の将来性に不安を抱いて離職する人も少なくありません。
「経営状況が芳しくない」「リストラが相次ぐ」「ボーナスカット」など、ネガティブな要素が多いと社員の不安につながります。
また、経営方針の変化も離職の要因となるため気をつけなければなりません。特に方針を大きく変える場合などは、社員に納得してもらうために説明会を開くなど対策が必要です。
10位:キャリアアップするため
キャリアアップのために離職する人もいます。
成果主義やジョブ型雇用などが主流となりつつある中、転職してキャリアアップする流れが多く見受けられます。
一つの企業では成長に限界を感じたり、今の企業で自分のスキルが発揮できなかったりすると、離職のきっかけとなります。
企業は、社員が思い描くキャリア自律のため、活躍できるポジションへの配置換えや研修制度の充実など、社員に対するキャリアアップ支援が求められています。
離職につながった職場でのトラブルとは?
職場でのトラブルがきっかけで退職を決意する人もいます。
「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成(若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)」内の「『初めての正社員勤務先』で経験した職場トラブル」を参考に、離職につながった職場のトラブルを男女別で分析してみましょう。
男性の職場トラブルで最も多いのは「残業代の未払い」
男性で一番多いとされる職場トラブルは「残業代が支払われなかったことがあった」で、離職者では38.1%、勤続者でも25.2%の人が経験していることが分かりました。
いわゆる「サービス残業」として残業代が支払われないことが当然のことのように行われていれば、会社への愛着心はおろか、仕事に対してのやりがいも感じられなくなります。
離職者と勤続者の数値に大きく差が開いていることからも、残業代の未払いが離職のきっかけになていると考えられます。
女性の職場トラブルで最も多いのは「人手不足による業務過多」
一方、女性で一番多く回答された職場トラブルは「人手不足で一人でも仕事を休むと業務が立ちゆかなる状況があった」で、離職者では40.0%、勤続者でも33.1%の人が経験しています。
人手不足によるしわ寄せが女性に寄りやすいということが、この結果から読み取れます。
また、男性との差が見られたのは「結婚、出産、育児、介護を理由に、会社側から辞めるようにいわれた」というトラブルで、仕事と育児・介護を両立したいと考えていても、会社の理解を得ることが難しい現状にあることが分かります。
離職理由ランキングを参考に、自社で取り組むべき対策とは?
人事担当者やリーダー層は離職理由ランキングをどのように参考にすればよいのでしょうか。
離職防止アドバイザーに、離職理由ランキングを読み解くポイントや、離職に繋がるトラブルを未然に防ぐ対策について聞いてみました。
教育研修事業部 ゼネラルマネジャー
離職防止アドバイザー
離職理由ランキングはどのように参考にするとよいですか?
ランキングの上位に上がっている離職理由を、自社に置き換えて考え、正確な離職の原因を捉えることが重要です。
例えば「肉体的、精神的健康を損ねる」状況は、自社においてどういう状況で発生しそうなのかを推測します。
身近な社員の立場に置き換えて考えてみるのもよいでしょう。
ランキングだけでは見えてこなかった、本当の離職理由や原因が見えてくるはずです。
離職理由ランキング対して、人事担当者やリーダー層はどのように向き合うとよいでしょうか?
ランキングに挙げられるのは最終的な離職理由であり、離職に行きつくまでには他にもたくさんの理由や不満が蓄積されています。
社員と定期的にコミュニケーションをとる
社員が日頃から抱えている本音を聞き出すためには対話によるコミュニケーションが重要となります。
月に一度、週に一度など、定期的に面談などを設定し、ざっくばらんに話を聞く時間を設けることを心がけましょう。
待遇面を改善する
待遇面を見直し、改善することで離職を防ぎます。待遇面とは給与だけでなく、福利厚生なども含みます。
近年、仕事とプライベートの両立に重きを置く人が多い傾向にあるため、ワークライフバランスが取れるよう労働時間や休日など勤務体制の改善も有効です。
休暇が取れないと、プライベートに割ける時間が減ってストレスの原因にもなります。
また、福利厚生制度が使いやすい職場環境の整備も大切です。
せっかく制度が充実していても、使えないのでは意味がありません。利用しやすさにも目を向け、制度の改善を図りましょう。
労働環境を整理する
社員の労働環境を整理します。
「業務量に偏りがないか」「残業が多すぎないか」など、社員の基本的な労働環境の他、社員が現状に不満を抱いていないかにも目を向けます。
社員一人ひとりが、生き生きと活躍できる環境づくりが大切です。定期的な面談をおこない、社員の悩みや不満をいち早くキャッチして改善へとつなげましょう。
研修機会や振り返りの時間を設けるのも効果的です。
また、社員の本音を聞きたい場合、匿名のアンケートを実施するのもおすすめです。
管理者側から見えない現場の状況把握に役立ちます。
公正に評価する
公正な評価も、人材定着に効果的です。
どれほど社内で成果を上げても、評価されなければ不満を抱いてしまい、離職のきっかけとなります。
若手でも優秀であれば成果に見合った報酬額を設定したり、インセンティブを与えたりと公正な評価が求められています。
社員が自身の評価に納得感が持てるよう透明性ある評価基準であることも重要です。公正かつ透明性ある評価ができているかどうか、自社の評価制度を今一度見直しましょう。
まとめ
離職理由や職場で経験するトラブルは、男女の属性や個人の置かれた状況によって異なるため、実情をしっかり把握することがとても重要です。
離職理由ランキングを参考にする際には、自社の状況に置き換えた場合に、具体的にはどのような理由となり得るのか推測しましょう。
今回ご紹介したランキングを参考に、自社の傾向にあう最善の改善策を見つけてみてください。
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