従業員の離職が後を絶たない。
離職防止対策を打ちたいが、何に取り組めばいいのかさっぱりわからない。
当記事では、上記のように悩んでいる人事担当・リーダー層の方の疑問にお答えします。
人材不足が叫ばれる中、既存社員に対する離職防止対策について頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
離職防止対策を考えるためには、社員から挙がる離職理由を分析することが重要です。
離職理由を正確に把握することで、適切な対策を立てることができます。
今回の記事では、離職率の高い企業が取り組むべき離職防止対策を12個ご紹介します。
目次
離職防止とは?
離職防止とは、社員の離職を防ぐために取り組む施策のこと。
「リテンション」「リテンションマネジメント」とも言います。
離職防止の具体策として、主に以下のようなものが挙げられます。
- 働きやすい環境を作る
- 福利厚生を充実させる
- 柔軟な働き方を導入する
- 定期的に面談を実施する
- コミュニケーションを活性化する
- 研修制度を整える など
近年、人手不足が深刻化する中、多くの企業が離職防止に注力しています。
離職防止が重要視される理由
離職防止が重要視される背景には、主に以下のような理由があります。
- 人材確保が難しくなっている
- 人材の流動性が高まった
- 新規採用者の離職率が高い
少子高齢化により労働人口が減少している日本において、人材の確保は年々難しくなっています。
たとえ人材を獲得できたとしても、終身雇用制度の崩壊などにより転職が当たり前の現代社会では流動性が高まり、流出を防げないのが現状です。
また、厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」によると、2020年の新規大学卒就職者の3年以内離職率は32.3%と、約3割が就職後3年以内に離職している状況にあります。
社員の離職防止をおこなわないことで起きるリスク
企業が離職防止の策を講じないとどうなるのでしょうか。
ここでは、想定されるリスクをいくつかご紹介します。
優秀な人材が離れる
離職防止策を講じなければ、優秀な人材流出の可能性が高まります。
優秀な人材の流出は、企業成長の鈍化を招くだけでなく、経験やノウハウを持った人材の流出により競合他社の企業力向上に寄与してしまう恐れもあります。
また、その人材にかけた採用・育成コストの損失に加え、人員補充のための新たなコストが発生する点も企業にとって大きな負担となります。
社員の負担が増える
離職者が出ると、それまで離職者が担当していた業務を同じチームや部署の社員が引き継がなくてはならないため、負担が増えてしまいます。
新たな人手を確保できない場合、一人当たりの業務量が増え、生産性や品質の低下を招きかねません。
慢性的な人手不足の場合、既存社員の不満が募り、最悪の場合新たな離職者を出すリスクも考えられます。
企業のイメージが低下する
離職率の高さは、企業イメージに大きく影響します。
求職者にとって企業の離職率は重要度の高い要素であり、イメージ低下を招きやすい傾向にあります。
「離職率が高い企業=何らかの問題がある」と判断されてしまい、業績や採用活動にも悪影響を及ぼしかねません。
離職防止対策には離職理由の分析が重要
社員の離職に悩む企業様では、離職を少しでも食い止めるために、離職防止対策を検討しているのではないでしょうか。
何かしら施策を講じたけれども、目に見えるような成果が出ずに悩むこともあるでしょう。
離職理由は多岐にわたるため、自社の離職率を低下させる対策として何が一番適しているのかを判断することは決して容易ではありません。
離職を防ぐためには、まず社員の離職理由を吸い上げ、何が離職を考えるきっかけになっているのか分析することが重要です。
離職理由に、企業の成長を妨げる課題が潜んでいる可能性もあります。コストと時間をかけて採用した従業員が離職しないようにするためにも、離職理由に基づいた対策を選択しましょう。
よくある離職理由については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
離職する可能性がある社員の特徴
離職する可能性がある社員には、いくつか共通の特徴が見られる場合があります。
モチベーションの低下
離職を考えている社員は、仕事に対するモチベーションが下がる傾向にあります。
業務への関心や注意力が低下するため「ミスが増える」「生産性が下がる」「新規の仕事をやりたがらない」などの特徴が見受けられます。
早めに兆候に気付いた場合、適切に対処すれば引き止められる可能性もあります。
コミュニケーションが希薄になる
職場への関心が薄れ、コミュニケーションが希薄になる場合も注意が必要です。
具体的には「挨拶をしない」「発言が減る」「雑談が減る」など、他者とのコミュニケーションが減ります。
ただし、明らかに元気がなくなり笑わないなど異変を感じた場合は、心身の健康を害している可能性もあるため、適切なフォローをおこないましょう。
退社時間が早いなど仕事に対する行動の変化
離職を考えている人は、並行して転職活動をおこなっているケースがほとんどです。
そのため、「退社時間が早い」「単独行動が増える」など、行動に特徴が現れる場合があります。
また、転職活動をおこなっていなくても、モチベーションが保てないことから仕事を早く切り上げたり、新規の業務を避けたりするケースもあります。
離職防止対策12選!すぐに導入できる具体的な施策とは
離職防止にはどのような対策が効果的なのでしょうか。
すぐにでも取り入れたい具体的な対策を、12個ご紹介します。
- 労働条件・職場環境の見直し
- 人間関係やコミュニケーションの改善
- 仕事へのやりがいを感じるようにする
- キャリアデザインを描きやすくする
- 退職理由をヒアリングする
- 働き方の選択肢を増やす
- 公正な評価制度を確立する
- 研修制度を整える
- 定期的な面談をおこなう
- 上司のマネジメントスキルを向上させる
- 人事ツールの導入
- ミスマッチを防止する
対策(1) 労働条件・職場環境の見直し
離職防止対策としてまずあげられるのは、労働条件・職場環境の見直しです。
給与や福利厚生、勤務時間など、労働条件がネックになり離職を考える社員が多い場合、自社の就労規則の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
賃金や処遇などに影響する社内評価制度も定期的に振り返り、整えていきましょう。
長時間勤務や非効率な業務の進め方、休日が少ない、残業の多いという労働環境の悪さに不満を感じ、離職を考える社員もいます。
これらに対しては、業務時間の削減、業務に対する負荷を均衡化、適切な人材配置などの対策である程度改善できます。
新入社員や若手社員は、業務内容や組織の風土に対して「思っていたものと違う」とギャップや不安を抱えてしまうことがあります。
悩みを溜め込んでしまう前に気付けるよう、社員の心理状態を把握するためのストレスチェックや、ブラザー・シスター制度の導入も効果的な対策と言えます。
対策(2) 人間関係やコミュニケーションの改善
離職理由として無視できないのが人間関係の悪化です。
業務内容や職場環境に不安がない場合でも、苦手な上司や部下がいるだけでストレスに感じることもあります。
適切な人材配置やコミュニケーションツールなどの活用で、社内の風通しを良くすることが重要です。
コミュニケーションによる社員の悩みを早期発見できるよう、従業員アンケートや面談などを定期的におこなうことをおすすめします。
また、上司と部下、社員同士が積極的に関わりあえる、社内イベントやランチミーティングなどを取り入れることも有効な対策となります。
安心して仕事に取り組める環境作りを目指しましょう。
対策(3) 仕事へのやりがいを感じるようにする
仕事へのやりがいや満足度が低いほど、早期離職に結びつく可能性も高くなります。
やりたい仕事であるか、仕事の量や責任の重さが適切であるか、成果が見込めるか、見合う賃金が支給されているかなどは、仕事へのモチベーションに大きく影響します。
また、チャレンジしやすい風土や環境にあるかどうかも、やりがいに直結する問題と言えます。
社内表彰制度や、数字では表れにくい活躍を評価する「ピアボーナス」などを、離職防止の対策として活用してみてはいかがでしょうか。
また、社員の仕事への満足度を知るためのエンゲージメントサーベイなどを定期的に取り入れ、社員のモチベーションを正確に把握することも大切です。
対策(4) キャリアデザインを描きやすくする
「この会社で働いていてもキャリアを築けない」というキャリアに対する不安が、離職に結びつくこともあります。
自社で働くことでどのようなキャリアを作っていけるのか、「キャリアデザイン」を描きやすくすることは、離職防止対策になります。
まずは面談やアンケート調査などで、社員が抱えている将来に関する不安を明らかにしてみましょう。
キャリア形成に対する不安が多ければ、上司や人事部に直接相談できる機会を設けるのも効果的だと言えます。
また会社側は、従業員に対して経営方針や会社の将来性を常に提示しておくことを意識しましょう。
将来のキャリアがイメージしやすいよう、社内ロールモデルとなる社員を発掘し育成すれば、離職を悩む社員に対しても良い影響を与えられます。
対策(5) 退職理由をヒアリングする
退職する社員に、退職理由をヒアリングするのも離職防止に効果的です。
適切な離職防止対策を講じるためには、自社が抱える課題や問題点を把握する必要があります。
ヒアリングする際は、慰留目的と思われないように退職手続きを終えた後におこないましょう。
退職後なら引き留められると身構えることなく、本音に近い意見が聞き出せる可能性が高まります。
対策(6) 働き方の選択肢を増やす
近年、仕事とプライベートの両立にあたってライフワークバランスを重視する社員が増えており、多様な働き方に対応した職場環境の構築が求められています。
育児や介護など、社員のライフスタイルはさまざまな理由によって変化していきます。
従来の働き方を継続できなくなった際に、働き方の選択肢がほかにないと離職する可能性が高まってしまいます。
そうならないために、短時間勤務やリモートワークなど、社員が自分で働き方を選べる環境整備が不可欠と言えます。
対策(7) 公正な評価制度を確立する
公正な評価制度の確立は、離職防止につながります。
上司の主観や偏った価値観が評価に反映されてしまうと、不満が生じてモチベーションやエンゲージメントの低下を招く恐れがあります。
客観性と透明性を兼ね備えた適切な評価は、社員の愛着心や貢献意欲の醸成の一助となります。
社員の能力や成果が正当に評価される人事評価システムを構築し、給与に反映させましょう。
対策(8) 研修制度を整える
社員が成長できるよう、研修制度を充実させることも離職防止に効果的です。
研修やワークショップなど社員のスキルアップの機会を設けることは、社員のキャリア形成の手助けをするとともに、会社から求められている「自身の役割」を理解するよい機会にもなります。
研修のほか、ジョブローテーションや新規プロジェクトへのアサインなど、チャレンジできる機会創出もおすすめです。
一人ひとりの社員のスキルアップは、ひいては全社のパフォーマンス力の向上につながります。
「効果的な研修をおこないたいが、適した人材がいない」など社内のリソースが不足している場合、外部の研修サービス会社に依頼するのもおすすめです。
対策(9) 定期的な面談をおこなう
定期的な面談をおこない、社員の抱える課題や不満などにいち早く気付くための体制づくりも離職防止対策として有効です。
特に会社に対する不満や不安は離職理由につながりやすいため、把握できる体制づくりが求められます。
1on1ミーティングのほかに、メンター制度の導入も効果的です。
自社に合った相談しやすい仕組みを検討しましょう。
対策(10) 上司のマネジメントスキルを向上させる
離職を防ぐためには、上司や管理職のマネジメントスキル向上が不可欠と言えます。
関わりの多い上司のマネジメントスキルが不足していると、不適切な言動や無自覚なハラスメント行為につながりやすく、ストレスや不満が生じやすくなってしまいます。
上司がリーダーシップを発揮し、社員の持つ能力を最大化させるためにも定期的なマネジメント研修を実施しましょう。
対策(11) 人事ツールの導入
社員の状況を把握できる人事ツールの導入も、離職防止に有効です。
人事ツールの活用により、社員とのコミュニケーション履歴の管理がしやすくなるほか、社員のモチベーションやエンゲージメントなどが可視化できます。
社員満足度チェックやアンケートなどもツールでおこなえるため、手軽に社員のコンディションが把握できるのもメリットです。
ツールは、サービスによって機能が異なるため、自社に合ったツールを選びましょう。
対策(12) ミスマッチを防止する
入社後のミスマッチを防ぐ取り組みも、離職防止には欠かせません。
待遇や業務内容などが「入社前の説明と異なる」場合、早期離職につながってしまいます。
ミスマッチによる早期離職を防ぐためには、選考時に自社の実情を隠したり、脚色したりすることなくありのままを伝えなくてはなりません。
また、新たな環境の中で不安を抱える社員に、少しでも早く自社に慣れてもらうためにオンボーディングやメンター制度などの導入も効果的です。
離職防止アドバイザーに聞く、離職防止に有効な対策
離職を希望する社員に対し、人事担当者やリーダー層はどのような対策を取ることができるのでしょうか。
離職防止アドバイザーに、離職防止のための有効な対策について聞いてみました。
教育研修事業部 事業部長
離職を希望する社員にどのように向き合えばよいでしょうか?
離職理由は、世代別や階層別で違うということを理解する必要があります。
例えば、若年層ですと理想と現実にギャップを感じて現状に満足していない場合がありますし、5~10年目になると家庭の事情で離職する場合もあるでしょう。
そのような背景を知ることで、対策につなげることができます。
「離職したい」と切り出されてからでは、説得はとても難しくなります。
上司が普段からどれだけ関わりを持てているかが大切です。
業務に関してだけではなく、プライベートの様子も図れるようなコミュニケーションをとれているか、上司自身の面談スキルを上げることも意識していただきたいですね。
企業としては、離職率を下げることだけに捉われるのではなく、その先にある社員のキャリアについてもしっかり考えてあげましょう。
キャリアを積みながら活躍していける組織像を提示できれば、社員たちの意識も変わるはずです。
離職防止対策を取り入れ、実際に離職率が低下した事例を教えてください
店舗運営をされているある企業を例にお話しすると、OJT制度や管理職研修に力を入れたことで離職率低下を実現したケースがあります。
研修をきっかけに様々な対策を取り入れたのですが、特に入社から一年未満の社員に対しては、人事担当者が実店舗に出向いてフォローし、相談しやすい環境を整備したそうです。
すると、以前は「離職したい」と決意した後に報告する社員が多かったところ、「離職を考えている」と前段階で相談を受けることが増えたそうです。
そのような相談に適切に対応した結果、離職率を大幅に下げることができました。
事前に相談があれば管理側も対処ができますよね。
コミュニケーションの量が増え、相談しやすい風土に変わったことが、離職防止につながった事例と言えるでしょう。
以下にある「離職率改善のポイントと定着率向上の取り組み例」の資料も参考にしてみてください。
離職防止対策は日々の模索・改善の繰り返しが重要
離職の理由は社員によって違うため、離職防止の対策も多岐に渡ります。
会社として、管理者として、社員といかに関わり合うかが重要となるでしょう。
アンケートや面談など、社内コミュニケーションを活性化するとともに、管理職のマネジメントスキルも向上させる必要があります。
社員にとって働きがいのある会社であり続けるために、離職防止対策を模索し、改善していくようにしましょう。
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