若手社員はいつ離職を考えているでしょうか。結論からお伝えすると、多くの方は採用時から離職を意識しているといえます。
離職対策は、採用時から実施するなどのこれまでにない工夫が必要です。詳しく見ていきましょう。
離職防止対策は採用時から
優秀な若手社員の突然の離職。
「彼/彼女ならもっと自社で活躍できたのに・・・」
今後を期待していた人材の離職はあらゆる会社で起きている人材課題と言えるでしょう。
しかしそもそも「この会社で一生働き続ける」という考えの若年労働者は限りなく少なくなっています。
高度成長期を中心に終身雇用が主流であった日本ですが、近年は労働人口の不足に伴う人材の売り手市場化、働き方の多様化の波に乗って、「1社に属し続ける」という考え方は縮小傾向にあります。
“自分で自分の道を切り開く個人主義”が主流のアメリカほどではありませんが、企業が人を選ぶのではなく、人が企業を選ぶという雇用関係の変化があることは間違いないでしょう。
そのため、たとえ優秀な社員が入社を決意したとしても、
「この会社の制度で資格をとって、もっと条件の良い会社に転職しよう」
「キャリアを積めるだけ積んで、稼いだら起業しよう」
といった自己欲求に入社動機があり、決してその企業を成長させたいという利他的な動機があるとは限らないのです。
“離職防止”という考え方をリセットする
「そのような考え方を持った若手社員の離職を止めるにはどうすれば良いのか?」と思われるはずです。
しかし、この考え方自体が誤りであり、「離職は起きるもの」という意識を前提として持つ必要があります。
シリコンバレーの代表的起業家であるリード・ホフマンの書籍『ALLIANCE(アライアンス)‐人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』には、以下のように記されています。
「“いかにして辞めないか”ではなく、“辞めることを前提とし、一度入社した労働者とどのようにして良い関係を築いていくか”という意識を持つ必要がある」
「なぜ辞めてしまうのか」「どうすれば離職は防げるのか」と、出口を塞ぐことに躍起になってしまいがちですが、「一定期間の中で、企業と労働者が互いに成長できる関係性を築く」という、期間を設けての取り組みを、労働者が納得できるかたちで提示していくことが有効であるということを提唱しています。
ここで難しいのは、「企業と労働者が互いに成長できる関係性」を、双方が納得して築いていかなければならないという点です。
よくあるケースとして、企業側が労働者の考えを汲み取らず、一方的にあるべき関係性を押しつけてしまうことです。
企業側が良かれと思ってしたことが、労働者にとっては不要なことだった、またはモチベーションが著しく下がることだったとなっては、離職を決意してしまう日はそう遠くないでしょう。
大切なのは、「双方が納得する」ということ。
人が企業を選ぶ時代においては、労働者の意向や求めるキャリアを正しく把握し、その上で企業にとってもメリットがある関係性を導き出していくことが求められます。
採用前に求職者の労働観を知る方法
労働者の意向は、入社後のコミュニケーションを通じてもちろん知ることができます。
しかし先述したように、若年労働者は終身雇用の考え方が一般的ではないため、企業側としてはできるだけ採用する前に、相手の意向や労働観について把握しておきたいと思うでしょう。
意向や労働観は、採用面接時に下記2種類の質問を投げかけることで、ある程度把握することができます。
1.過去情報(これまでの経験・成し遂げたこと・見本にしてきた人物 等)
2.未来情報(会社選びの基準・なりたい将来像・理想の働き方 等)
過去情報からはその人が何を考え、結果どのような行動をとったかという“価値観”を知ることができ、未来情報からはその人が何を大切に、どのくらい本気で取り組んでいきたいのかという“志向”や“意欲”を知ることができます。
もちろん、質問を深堀りするような面接テクニックも必要にはなってきますが、各設問に対する回答によって、企業の持つ価値観や労働観とのギャップを埋めることは可能です。
ギャップが少ない人材を採用することで、「一定期間の中で、企業と労働者が互いに成長できる関係性を築く」ことは格段に容易になるでしょう。
最大の離職防止施策は採用時から価値観を把握すること
ここまで、「離職に対する意識の変化」と「採用時にできる人材の労働観把握方法」についてご紹介してきました。
「一定期間の中で、企業と労働者が互いに成長できる関係性を築く」というお話をしましたが、これは離職防止を諦めているということでは決してありません。
互いにコミットできる関係性や目標をセットすることで、労働者の安心感・納得感・労働意欲を醸成し、最終的には労働者がその会社に居続ける意味・意義につながるのです。
出口を塞ぐのではなく、採用時からその人材の人となりや価値観を把握し、最良の関係性を模索し続けることが、最大の離職防止施策と言えるでしょう。
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