新入社員が早期に戦力化できるようサポートする「オンボーディング」。
オンボーディングの効果を高めるポイントについて、より専門的な意見を聞きたいという方に向けて、本記事では、新入社員の定着・戦力化支援を得意とするカケハシ スカイソリューションズの教育研修事業部事業部長に、オンボーディング活用のポイントについてお話を伺いました。
教育研修事業部 事業部長
専門家の意見を聞く前に、オンボーディングに関する基礎的な知識から知りたい方は、以下の記事からお読みください。
目次
オンボーディングと他の育成方法の違いとは?
これまで企業では、新入社員に対して入社後の研修を行ってきたと思いますが、オンボーディングはそこにさらに追加するというイメージです。
新入社員に教えることは文化やルールなどさまざまありますが、オンボーディングは対話や価値観といったものを重要視して伝えていくものだと思っています。
企業が大切にしているものや、お客様に対してどのような思いがあるのかなど、価値観を合わせていくことが重要です。
新卒採用者だけでなく、特に中途採用者は今までの文化がある中で新たな組織に入ってくるため、「なぜここにやってきたのか」「ここで何をしたいのか」など、対話することや自社の目指している価値観をすり合わせることに厚みを持たせることが、これまでの育成方法との違いだと思います。
オンボーディングはどのような課題のある企業に効果的?
オンボーディングが効果的な企業は、例えば以下のような課題を抱えている企業でしょう。
- 社員が早期離職してしまう
- 社内コミュニケーションがあまりない
- 社員のパフォーマンスを発揮させることができない
- 文化の継承がしにくい
オンボーディングがうまく機能するとエンゲージメントが強くなります。
社員の定着やエンゲージメントに課題を感じている企業は、オンボーディングを取り入れるとより良い効果が期待できると思います。
特に、中小企業ではチームプレーが大切となるため、連携やスキルに加え、意向や会社が目指すものをオンボーディングを用いて対話することが大切と感じますね。
今までは会社内でも隣りに相談できる人がいましたが、働き方の変化によってリモートワークが普及したことで、これまで以上に相談しづらい、わかりにくい環境になったのではないかと思います。
そのため、オンボーディングの効果を発揮するには、業務内容の指示や説明だけでなく、お互い大事にしていることのすり合わせや目的を持った対話が意識的に必要になると思います。
新卒社員と中途社員での違いや注意点はある?
両者とも価値観が共有されているのが前提かと思いますが、新卒社員と中途社員での違いはあります。
新卒社員の場合
新卒の場合は「スキル面」として自己肯定感を持たせることが必要だと思います。
自己肯定感を持たせるには、「何ができていなければならないのか」「何を求めているのか」をきちんと言語化することが大切です。
それに対する評価を1on1ミーティングなどで共有、または確認をしていきましょう。
中途社員の場合
中途採用者の場合、できることが前提でつい仕事を任せがちですが、その人の強みや前職での経験など、スキルの見極めを早めに行う必要があると思います。
スキルを把握することで持っているキャリアを最大限に活かせるようになりますよね。
前職の経験を活かした配属ができるため、マネジメントをする際の武器となるでしょう。中途採用者の「自己肯定感」を高めるためには、前職でやってきたことと現職の会社が求めていることを早めにチューニングしてあげることが大切です。
合わせて、価値観の共有をすることは新卒社員以上に必要だと思いますね。前職と現職の比較がある中で、「ポジティブな変化」は何があるかを捉え、早く組織の一員だと思えるような関係性を築くことが重要でしょう。
関係性を作るにはやるべきことを伝えるのではなく、新入社員が目指すものや大切にしているもの、なぜここにいるのかというものを知っておくとよいと思います。
中途社員の場合は特に、馴染むまでの期間に対話を繰り返すことで、自社のこだわりなどをあらかじめ刷り込んでいくことが必要でしょう。
実際に株式会社リクルートキャリアの調査から、パフォーマンス発揮者の8割が入社前に人事とコミュニケーションをとっていたことや、7割が入社後も5ヶ月の間に面談を行っていたことなどが統計で出ています。
参考:株式会社リクルートキャリア:「中途⼊社後活躍調査」 第2弾
組織全体を巻き込むために運営側が意識すべきことは?
受け入れる側の既存社員に、「オンボーディングを実施する」という意識が大切だと思います。
組織の中にも受け入れが得意な部署と難しい部署があり、受け入れを得意とする部署では既にオンボーディングのようなものを行っているのではないでしょうか。
それらを他の部署にも伝えていくという意味で、オンボーディングは「全社で目的の統一をすること」につながるのだと思います。
今までの受け入れ体制に、オンボーディングの観点を加えて目的設定を行うよう意識するとよいでしょう。
対話型や価値観の共有に重点をおくことで、新入社員の離職防止やエンゲージメントの向上、能力の発揮しやすさにつながると思います。
現在、OJTトレーナー研修や管理職の定着率向上研修は増えています。しかし、新型コロナの影響によりリモートワークの普及が進んだことで、これまで隣りにいてできていた何気ない会話が物理的距離により難しくなりました。
一人での仕事が多くなるにつれ、帰属意識の低下や同僚への気遣いの減少につながる可能性もあります。
それをなんとかしなければという企業は多いため、目的や価値観を定義して統一するためにも、オンボーディングを取り入れることが大切でしょう。
今後の採用や働き方に「オンボーディング」は影響する?
アメリカなどHRが進んでいる国では、オンボーディングが評価制度やリクルーティングシステムに含まれていることが多いです。
日本では新入社員研修に近しく、業務を教えることよりも「馴染ませて戦力化させる」こととして使われています。
最近では「戦力化プラス定着の方法」としてさらにフォーカスされており、「オンボーディング」は今後ますます必要となってくる概念だと思っています。
また、今後の日本における採用は、ジョブ型になってくるともいわれています。
コロナ禍の現状で仕事ができる人は、「これができる人だからこの仕事を任せる」というのがとても明確になってきていて、ジョブに合った人たちを採用することは効率的だといえます。
育成にかける余力はないために新卒採用を辞めて、ジョブに合ったキャリア採用(中途採用)を積極的に続けていくという企業もあるでしょう。
一方、ジョブ型で採用された人も帰属意識がないと、そのプロジェクトが終わったら転職してしまうという可能性があるため、ジョブ型の人に対して「会社のここが好き」というものを構築しないと定着は難しいかもしれません。
何か判断を求められたときに「この会社として」という軸で判断ができることが、自立的な行動や自己裁量、自身の働きやすさとなる上で重要といえます。
社員の定着と活躍に不可欠なオンボーディングに取り組みましょう
ここまでオンボーディング活用のポイントや注意点について、組織支援のプロにお話を伺ってきました。
労働人口の減少が避けられない中、入社した社員の早期戦力化と定着は企業の成長に大きな影響を与えることとなるでしょう。
本記事の内容を参考に、効果的なオンボーディング施策をどのように実践していくかについて考えてみてはいかがでしょうか。
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