離職率が高い企業は、採用や人材育成コストの増加、企業イメージの悪化など多くのデメリットがあります。採用難が続く中、人材の流出を防ぎ、離職率を改善するための対策を講じる企業も増えています。
この記事では、離職率が高い企業の特徴やその原因、定着率を上げる対策についてわかりやすく紹介します。
目次
離職率とは?
離職率とは、一定の期間においてどれだけの社員が離職したかを表す指標のことで、企業の働きやすさや魅力を示す指針にもなります。
期間は、企業の期初から期末までの1年間で算出するのが一般的ですが、入社後1年間や3年間など、離職率を算出する目的に合わせて設定される他、新卒者や正社員など対象を限定して計算することもできます。
離職率の計算方法は?
離職率の計算方法は、法律で定義されておらず企業によって異なります。厚生労働省が雇用動向調査で使用している計算方法は以下の通りです。
離職率=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100(%)
期間や母数となる対象者は、算出する目的に合わせて「年度ごと」「5年ごと」「新卒」「全社員」など企業によって異なります。そのため、以下のように計算できます。
離職率=企業が定めた期間の離職者数÷起算日の在籍人数×100(%)
離職率が高いと言える基準は?
自社の離職率の高さを判断するには、厚生労働省が発表している平均離職率を参考にするとよいでしょう。
2021年におこなわれた「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、日本の企業全体の離職率は13.9%でした。また、産業別にみると、最も離職率の高い業界は「宿泊業、飲食サービス業」の25.6%となっています。
自社と比較することで、一般的にどのくらいの水準にあるのかを判断できます。
(参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況 」)
離職率が高くなる原因は?
離職率が高くなる原因として考えられる5つの要因を、従業員の視点からご紹介します。
働き方に不満がある
離職率が高くなる原因の一つに、働き方への不満が考えられます。
労働者の多くは家族の子育てや介護など、さまざまな事情を抱えて働いているケースもあります。
このため、時間や場所が限られるような画一的な労働環境や条件では、働きにくさを感じることもあります。
また、生産年齢人口の減少による人材不足や、働き方改革の推進などで就業形態の多様化が進む中、労働者側のライフスタイルも変化してきています。
仕事とプライベートの両立を重視し、心身ともに豊かに生活したいと考える人が増加傾向にあるため、国や企業も労働力の確保に向け、フレックスタイムやコアタイム制、リモートワークなど柔軟な働き方を促進する動きを加速させています。
企業は、自社の生産性の向上・維持を図るために、従業員に向けた働きやすい環境への配慮が不可欠です。
自社の特性を活かし、働き方の改善を検討しましょう。
人間関係のストレスを感じる
職場の上司や同僚、顧客との人間関係に対するストレスも離職率を高める原因に挙げられます。
特に上司との関係は、仕事を遂行する上で重要なため、関係性の悪化は問題になりやすい傾向にあります。
また、上司との関係性は、自身の評価や待遇に直結しやすいことから、「言いたいことが言えない」「相談がしにくい」といった悩みを抱えることもあります。
上司と良好な関係性を築けない場合、結果的に離職を選択せざるを得ないことも考えられます。
さらに、信頼関係が構築できていない閉ざされた環境の中では、セクハラやパワハラ、モラハラなどの嫌がらせが生じることがあり、被害を受けた従業員は心身に悪影響を受けることもあります。
企業は社内のコミュニケーションの活性化を意識し、風通しのよい職場環境を整えることが重要です。
社内に休憩スペースを設けたり、社内SNSを導入し社員の抱える不満や不安を拾い上げたりするなど、離職率の低下に向けた仕組みを構築することが大切です。
給与に不満がある
給与に対する不満も離職率が高くなる要因として考えられます。
特に「仕事内容に見合った給与が支払われていない」ことや「同業種と給与水準に差がある」ことなどは、従業員のモチベーションを大きく低下させます。
また、自身の能力が正しく評価されないことで給与の向上を見込めないケースも、不平不満が募る要因として考えられます。
従業員は、自身の頑張りを客観的かつ正当に評価されることで、業務に意欲をもって取り組むことができます。
優秀な人材の流失を防ぐためにも、仕事内容に見合った報酬の提示や評価体制の見直しが肝要となるでしょう。
業務内容に不満がある
採用後、企業の状況にあわせて一方的に配属先や担当業務を決めてしまうと、従業員は与えられた業務内容に不満を感じて離職に直結するケースもあります。
従業員の中には、入社時に取り組みたい業務や職種を明確にイメージしている場合があり、希望の業務とかけ離れた際には、モチベーションの低下や喪失感をもたらします。
企業が配属先を決定する際は、「本人の希望業務や将来のビジョン」と「潜在能力やパーソナリティー」の把握が不可欠です。
その上で、本人の希望と相違が生じた場合は、人材配置の理由や背景の説明を怠らないようにしましょう。
企業側が丁寧に説明することで、従業員との間に共通認識が生まれ、業務に対する意欲的な取り組みが期待できます。
労働時間が長い
離職率を高める要因は、労働時間の長さも関係します。
特に終業時刻を過ぎて残業時間が長くなることは、従業員のライフワークバランスに影響を及ぼします。
心身に負担がかかり、離職せざるを得ない状況をもたらすケースも考えられます。
近年では、過酷な所定外労働が社会問題になっていることから、残業時間に対する上限が法律で定められています。
年次有給休暇においても同様に、従業員が必ず取得する日数が法律で義務付けられています。
企業は、従業員が心身ともに健康に勤務ができるよう、事業規模にあわせた人材確保に加え、抜本的な改革が必要となっています。
たとえば、自社作業に応じたシステムの導入や単純作業の自動化、アウトソーシングを導入するなど、従業員の負担軽減につながる施策を取り入れることもおすすめです。
企業の成長と適正な労働時間の整備に向け、業務の効率改善を図りましょう。
(参考:厚生労働省「労働時間・休日」)
離職率が高くなる企業の特徴は?
離職率が高くなる企業にはどのような特徴があるのでしょうか?4つピックアップして解説します。
- 長時間労働や残業が多くなっている
- 人事評価制度が整っていない
- 社員のモチベーションが低下している
- 人材育成制度が整っていない
長時間労働や残業が多くなっている
退職理由の一つに、長時間労働や残業が多いことがあげられます。特に、残業が多い会社の場合、社員がストレスに感じて離職してしまうケースがあります。
業務量が増えると、ワーク・ライフ・バランスが取りづらくなり心身の不調やストレスの原因になってしまいます。
労働時間や残業状況などの労務管理を適切におこなうことが大切です。
人事評価制度が整っていない
離職率が高い企業の特徴として、人事評価制度に問題を抱えている場合があります。
評価基準が明確でなかったり、そもそも基準が公表されていなかったりすると、不公平感や不満が生じて離職につながりやすくなります。
このため、社員が納得できる公正な人事評価制度の構築が肝要です。
社員のモチベーションが低下している
社員のモチベーション低下も離職の原因の一つです。
転職が当たり前の時代になりつつある昨今において、社員が自分の仕事にやりがいと感じて「この会社で働きたい」と思わせることができなければ人材の流出は防げません。
そうならないためには、企業理念やビジョンの浸透を図り、定期的な面談を設けてコミュニケーションを取るなど、社員のモチベーションを高める取り組みが大切です。
人材育成制度が整っていない
人材の育成制度が整っていないことも、離職率が高くなる理由の一つです。
新入社員に対して研修や教育プログラムが十分でないと、不安を抱えたまま業務に取り組むことになり、ストレスにつながりやすくなります。
また、教育者の人選にも配慮が必要です。指導内容や方法が教える人によって異なると、教わる側の混乱を招く原因にもなります。
マニュアルを作ったり、教育者の研修を実施したりするなど、人材を育成する体制を整えることが離職防止において重要です。
離職率が高くなるとどうなる?
次に離職率が高いことによる影響についてみていきましょう。
採用・育成コストがかかる
離職率が高まると、採用や人材育成のコストが増えてしまいます。
離職した人材にかけた採用・育成コストが無駄になるだけでなく、欠けた分の人員補充や育成コストも余分にかかります。
企業によっても異なりますが、採用にかかる費用は1人あたり平均で約90万~100万円と言われています。
研修をおこなったあとの離職では、さらに多くの費用が無駄になってしまいます。コストを抑えるためにも、離職率を下げて人材の定着に取り組みましょう。
社内にノウハウがたまらない
離職率の高い企業は、社内にノウハウがたまりにくい傾向にあります。
せっかく業務を覚えた人が離職してしまえば、たとえ補充できたとしてもまた一から教える必要があるため、企業の生産性が低下してしまいます。
ノウハウが確立されなければ企業の業績も伸びず、思うように成長できないこともあるでしょう。
企業イメージが悪くなる
離職率の高さは、企業イメージにも悪影響を及ぼします。
求職者がハローワークなどで企業の離職率を確認する際、離職率が高いと「何か企業に問題があるのでは?」とマイナスなイメージを与えてしまいます。
企業への不信感は応募の妨げにもなるため、求職者を確保するには離職率を下げてよい印象を与えることが大切。人材定着のための対策に取り組みましょう。
離職率を改善して定着率を上げるには?
離職率を改善するにはどのような対策を実施するとよいのでしょうか?
定着率を上げるポイントを4つご紹介します。
- 職場環境を整える
- 社員のキャリア形成を支援する
- 透明性のある人事評価制度にする
- 採用のミスマッチを減らす
職場環境を整える
職場環境を整えることは、定着率の向上につながります。離職率を下げるためには、社員同士のコミュニケーションを活性化させることも大切です。
コミュニケーションの機会を創出するために休憩スペースの設置や交流イベントの実施など、部署を越えて交流できる風通しのよい職場環境を整えましょう。
社員が不満や悩みを一人で抱え込まないよう、定期的に面談を実施することも効果的です。
また、ワーク・ライフ・バランスを保つために必要であれば、在宅ワークや短時間勤務の導入を検討するとよいでしょう。
働き方に対する価値観が多様化する昨今において、企業には柔軟な対応が求められています。
社員のキャリア形成を支援する
定着率を高めるためには、社員のキャリア形成を支援することも重要です。
社員の希望するキャリアプランが達成できないと、働くモチベーションが保てずに離職につながりやすくなってしまいます。
そのため、企業は自社の目指す目標だけでなく、社員個人の目標にも目を向ける必要があります。
社員のキャリア形成には、定期的な面談の他、研修制度やワークショップの実施なども効果的です。
社員のスキルアップを支援する仕組みづくりを整えることで、キャリア自律の手助けをしましょう。
自社のリソースが不足している場合は、外部のサービスを利用するのもおすすめです。
透明性のある人事評価制度にする
適正かつ公平性のある人事評価制度を整えることも、定着率の向上につながります。
いくら献身的に業務に取り組んでいる社員でも、公平性に欠ける評価をされては不満に感じて離職してしまう可能性があります。
主観的な評価や曖昧な評価により社員のモチベーションを下げないためにも、透明性のある評価制度を整えることが重要です。
客観的な評価基準を取り入れることはもちろん、評価する側の教育も必要です。社員が納得できる評価となるよう、今一度自社の評価制度を見直すことをおすすめします。
採用のミスマッチを減らす
早期離職の予防には、採用のミスマッチを減らすことが不可欠です。
せっかく採用しても「仕事内容が思っていたのと違う」「こんな会社だとは思わなかった」と離職してしまうのは、双方にとって不利益となります。
採用のミスマッチを減らすためには、選考時から企業理念や業務内容、雇用条件などにおいて誇張せずありのままを伝えることが肝要。
事前に認識をすり合わせておくことで、ミスマッチによる採用後の早期離職防止に役立ちます。
まとめ
離職率の高い企業は、企業イメージが悪くなるだけでなく、最悪の場合業績悪化を招く原因にもなりえます。
そうならないためにも、企業は社員が抱える不安や不満、悩みなどをいち早くキャッチしてフォローすることが大切です。
この記事でお伝えした改善点などを参考に、社員一人ひとりが働きやすい環境を整備して離職率の低下に取り組みましょう。
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