内定辞退を防止する取り組みは、企業の採用活動において大きな課題の一つとなっています。内定辞退はなぜ発生するのかを理解した上で、効果的な施策を考えることが大切です。
今回の記事では、内定辞退が発生する理由や内定辞退率を下げるために有効な施策などについて、事例とともにご紹介します。
内定辞退はなぜ発生するのか?
なぜ、内定辞退が発生してしまうのでしょうか。その主な理由を新卒社員と中途社員別にそれぞれ紹介します。
新卒社員が内定辞退する理由
新卒社員が内定を辞退する理由の一つ目として、学生が選考時に企業に対して不信感を抱くパターンが挙げられます。
具体的には、「求人票の記載内容と実際の選考方法などが異なる」「面接官や採用担当者の態度や印象が悪い」など、選考の過程で企業に対するイメージが低下してしまうケースです。
ネガティブな印象は入社意欲の低下を招き、「この会社では働きたくない」と辞退される可能性があります。
二つ目の理由は、学生が就職に対して漠然とした不安を持っている「内定ブルー」と呼ばれる状態になることです。
内定から入社までの期間があるため、時間が経つにつれて「本当にこの会社でよいのか」という疑問や不安が生じることもあります。「もっと自分に合う企業があるのではないか」との思いから他社の選考を受けて、内定辞退に至るケースです。
三つ目に、雇用条件や待遇に不満がある場合も内定辞退の原因となります。
内定後に雇用条件や待遇面の詳細を確認した際に、希望条件と乖離していたり、他の内定企業と比較されたりして不満が生まれると内定辞退につながります。
学生の希望する条件と実際の雇用条件との間に認識のズレが生じないよう、企業説明会など選考前の段階で、正しく情報を開示しておきましょう。
中途社員が内定辞退する理由
中途採用における内定辞退の理由の一つに、条件の不一致が挙げられます。給与や勤務形態など雇用条件が候補者の希望に沿わない場合、内定辞退につながってしまいます。
そうならないためにも、候補者の希望をしっかりと確認し、企業が提示した条件に不満が生じないようにすることが重要です。
候補者の中には、「面接官の印象が悪かったから」という理由で内定を辞退するケースもあります。企業の顔である面接官の態度や言動は、そのまま企業のイメージにつながります。
印象を悪くしないためにも面接に携わるメンバーは、企業の顔にふさわしい人材を選びましょう。
また、同時に複数の企業の選考活動に参加している場合、内定を受けても他社と比較して辞退に至る可能性があります。内定後も、他社の応募状況をヒアリングするなど、継続したアプローチを心がけましょう。
内定辞退の具体的な事例
株式会社リクルートの研究機関・就職みらい研究所が発表した「就職プロセス調査(2023年卒)」によると、2022年3月1日時点の大学生の内々定を含む就職内定率は、3月広報解禁となった2016年卒以降、増加傾向にあります。
一方、就職内定辞退率は「18.6%(前年同月差+1.9ポイント)」と例年同水準という結果でした。2022年卒の就職内定辞退率の推移をみると、4月中の伸び幅が特に大きくなっていることがわかります。
内定出し開始のピークも前倒しとなっている様子がうかがえることから、今後内定辞退・選考辞退は前年と比べて3月中に、より多く発生することが予想されます。
(参考:株式会社リクルート 就職みらい研究所『就職プロセス調査 (2023年卒)「2022年3月1日時点 内定状況」』)
内定辞退率を下げるために有効な施策例
内定辞退率を下げるためには、企業側は定期的に内定者とコミュニケーションをとることが大切です。内定辞退率を下げるために有効な施策を3つご紹介します。
選考中(1):真摯な対応や迅速なレスポンスを心がけ、信頼関係を構築する
採用担当者に対する不信感は内定辞退に直結してしまいます。選考中の段階から真摯な対応や迅速なレスポンスを心がけ、候補者と信頼関係を築くことが重要です。
連絡手段も、メールや採用サイト経由にとどめるのではなく、SNSやショートメッセージなど候補者が使い慣れているコミュニケーションツールを選ぶとよいでしょう。
また、選考過程で徐々に惹きつけをおこない、企業理解度と志望度を高めるのも内定辞退につながります。
エース社員と交流する機会を設けて働くイメージを醸成したり、選考フローだけでは伝えきれない情報を提供したりするのも効果的です。
選考中(2):選考中により企業への理解や志望度が上がる設計構築
内定辞退を防ぐために、選考中に自社への志望度を上げてもらえる設計構築が必要です。
候補者が選考に前向きに取り組み達成感を得られるよう、内定に対して納得できるプロセスを組みましょう。
そのためには、選考の面接を通して自社への理解度を深めたり、志望動機やキャリアプランを深掘りしたりするなど、適度な難易度を設けることもポイントです。面接が形式的で簡単すぎると、候補者は反対に「自分をちゃんと見てくれたのだろうか」と不安になります。
内定を納得してもらうためにも、選考中に候補者の思考を掘り下げる設計構築をおこないましょう。
内定時:印象に残る内定出しをおこなう
候補者の中には、自社以外の企業から内定をもらっている学生もいます。
印象に残る内定出しをおこなうことも内定辞退率を下げる施策です。定型化された電話や書類送付のみの味気ない通知ではなく、内定出しにもユニークな演出が求められています。
例えば、「何気なくオフィスに来てもらいサプライズとして内定出しをおこなう」「社長自らが熱い想いとともに内定を出す」など、「自分は歓迎され、必要とされている」と感じてもらえるような工夫を心がけましょう。
印象に残る内定出しは、企業への惹きつけ効果も高いです。
内定承諾後:内定者同士、既存社員との交流機会を設定し、定期的に会う
内定承諾後は、懇親会や内定者研修の機会を設けて、内定者と定期的に会うことが大切です。内定者同士の交流は同期としての仲間意識を醸成し、悩みや不安があっても踏みとどまれるきっかけになります。
また、内定者はリアルを知りたいとの思いから、既存社員との交流も求めています。一般的に、社内施設の見学などをおこなう企業が多いですが、内定者のためだけの企画では接触頻度を高めるのは難しいです。
全社員向けに企画している社内イベントなど、内定者が参加しても差し支えないものを選択し、可能な限り接触頻度を増やしましょう。
内定者を呼び出すイメージではなく、「よかったら参加しませんか?」といったフランクな機会として捉えることがポイントです。
内定辞退防止のための具体イベント
内定辞退の防止に有効なイベントを3つご紹介します。
社員座談会
社員との座談会は、企業の雰囲気や業務内容を知り、働くイメージを持ってもらうよい機会となります。内定辞退防止の効果的な手段として、多くの企業が取り入れているイベントの一つです。
実際に働いている社員から話を聞くことで、内定者の入社に対する不安を払拭できるほか、生き生きと働く先輩社員の姿を見ることで入社に向けたモチベーションの向上につなげられます。
オフラインでもオンラインでも実施できるイベントなので、遠方からの参加が難しい内定者でも、気軽に参加できるのが特徴です。
座談会は、リラックスした雰囲気でおこなうことがポイント。内定者が緊張しないよう、ファシリテーターを決めたりちょっとしたゲームを用意したりと、打ち解けられる工夫をするとよいですね。
内定者懇親会
内定者同士の交流を深めることも、内定辞退の防止に役立ちます。
入社前に、同期となるほかの内定者とのつながりを作り関係性を築くことで、入社に対する不安を軽くしたり入社後の研修や業務がスムーズにおこなえたりするメリットがあります。
また、株式会社ディスコがおこなった調査において、対面での内定者懇親会に参加した学生の7割近くが「入社意欲が高まった」と回答していることからも、内定辞退防止に効果的なイベントであると言えます。
(参照:株式会社ディスコ キャリタスリサーチ「調査データで⾒る「内定者フォロー」-2021年卒調査-」)
経営陣との交流会・セミナー
経営陣との交流会やセミナーも、入社意欲を高めて内定辞退防止するためのイベントです。
企業のトップからビジョンや経営方針などの説明を受けることで、会社の将来性に対しての不安が軽減されるでしょう。
漠然とした入社イメージがより明確になり、入社の実感を持てるようになるほか、モチベーションアップにもつながります。質疑応答の時間を設けて内定者の不安を払拭するなど、コミュニケーションが取れる機会を作れるとよいですね。
内定辞退防止の取り組みに成功した事例
ここからは、カケハシ スカイソリューションズ(以下、カケハシ)が実際にクライアント企業へご提案し、内定辞退防止に成功した取り組みの一部をご紹介します。
総合機械メーカーT社:内定者による動画制作プロジェクトを実施
兵庫県に位置する総合機械メーカーのT社では、新卒採用初年度において、内定者がそろう5月から入社までの11ヶ月間にどのようなフォローをすべきかという課題を持っていました。
カケハシが同社にご提案したのは、内定者による動画制作プロジェクトです。
まずは会社についてより深く知ってもらうことを目的に、改めて会社見学や社員へのインタビューを実施。そのアウトプット先として、内定者に動画制作に取り組んでもらいました。
また、カケハシが提供している社内コミュニケーションアプリ「HR Ring」を導入することで、社内の連絡を円滑にする仕組みを構築。
「HR Ring」のトーク機能を活用して動画制作の進捗管理をおこなったり、週1回パルス機能で内定者のコンディションを確認したりすることで、相互理解を深められました。
動画制作には入社1年目の社員から部長層まで10名以上の既存社員が関わりました。
プロジェクトを通して会社への理解を深めるとともに、既存社員とのつながりや内定者同士の関係性を深めることに成功。その結果、内定辞退防止につながりました。
サービス・インフラ業界Y社:家族が読むことを想定した入社案内の制作
千葉県でガソリンスタンドを運営するY社では、内定者の家族からの理解を得られず、内定辞退されてしまうことが課題でした。
内定辞退の理由となっていたのは、「ガソリンスタンド・石油業界=衰退産業」という業界へのマイナスイメージです。
マイナスイメージを変えるために、内定者本人だけではなく、家族にも読んでもらうことを想定した入社案内の制作をご提案しました。
新たに制作した入社案内では、企業の将来性の根拠を丁寧に記載するとともに、社長が展望を語るページを掲載。
会社としての安心感を与え、将来に対する不安を払拭できたことで内定辞退の防止に効果を発揮しました。
人材サービス業界K社:内定者向けパンフレットの制作と内定式入社式でのサプライズ演出
東京に本社を置く人材サービス業界のK社が課題に感じていたのは、オンライン化が進み、既存社員や内定者同士の交流の機会が減っていることでした。
内定辞退防止の施策として取り組んだのは、内定者向けパンフレットの制作です。
内定式で渡す用と入社式で渡す用の2種類のパンフレットを制作し、内定者を紹介するとともに、全社員の紹介と内定者へのメッセージを掲載しました。
内定式用では社員のオン(仕事の姿)を表現し、入社式用では社員のオフ(プライベートの姿)を表現する内容です。内定者はもちろん、全社員にも配布し、相互理解を深めました。
また、内定式と入社式ではストーリーがつながっている謎解きゲームを実施。謎解きは既存社員と協力しながら進めることで交流を促し、最後は社員に仲間入りするという演出を施すことで帰属意識を深められました。
その結果、内定者と既存社員の関係性の構築に成功。アトラクションでは内定者の素を見ることができ、既存社員側には内定者への理解を促すことができたのも得られた効果の一つです。
内定辞退者へのヒアリングポイント
内定辞退の防止策を講じたとしても、内定辞退をどうしても防げないケースも出てきます。
内定辞退者が出てしまった場合、今後の採用活動に活かすために内定辞退の理由をヒアリングすることが大切です。
ただし、内定辞退の連絡を受けた際にいきなり辞退理由を聞くと相手が身構えてしまいます。まずは「今後の採用活動の参考にするため、ヒアリングに協力してもらいたい」と辞退理由を聞く目的を伝えましょう。目的を伝えることで相手も答えやすくなります。
相手から承諾を得たら、口外しないことを約束した上で、どこの企業に決めたのかストレートに質問することをおすすめします。
企業名が聞けなかった場合は、業種名や企業規模だけでも確認できるとよいですね。同業の場合、ある程度の情報が引き出せれば、企業名を聞けなくてもどの企業なのか見当がつけられるかもしれません。
他社に決めた理由も聞きましょう。当たり障りのない回答を避けるために、「他社のどこが魅力だったのか」「決め手はなんだったのか」など、より具体的な回答が望める質問にすることがポイントです。
相手が発言した後に「ほかにもあれば教えて欲しい」と続けると、本音が聞けることもあります。協力的にヒアリングに応じてもらうためにも、選考活動の段階から候補者に真摯に向き合うことを心がけてください。
内定辞退の理由がわからなければ、改善策を立てることができません。そのため、内定辞退の連絡がきた際には、感情的にならず落ち着いて辞退の原因を探り、つぎの採用活動に活かしましょう。
まとめ
内定辞退は、企業への不信感や内定ブルーと呼ばれる内定者心理によって発生します。
企業側から内定者と積極的にコミュニケーションを図り、可能な限り接触頻度を高めることが大切です。
今回の記事で紹介している成功事例を参考に、自社の内定辞退率を下げるための施策を検討してみてはいかがでしょうか。
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