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フリーランスと会社員の保障格差がない時代へ「フリーランス協会」
コロナ禍を機にテレワークやフルリモートが一般化したことで、フリーランス市場が急拡大している。2023年、総務省の就業構造基本調査では日本国内のフリーランス人口は257万人であることが明らかになった。
さらに、ランサーズ株式会社の調査によれば、2015年からの9年間でフリーランス人口が7割以上増加しているという。これらの調査結果から、正規雇用にこだわらず、自由な働き方を求める傾向が強まっていることがわかる。
フリーランスと会社員の保障の差を埋めていきたい
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の代表理事で二児の母でもある平田麻莉さんは、セーフティーネットの脆弱さは個人事業主にとって大きな課題だと指摘する。
「フリーランス人材は増えている一方、健康保険、年金、出産・介護の支援など、社会的なセーフティーネットが整備されていないのが現状です。会社員が仮に仕事を長期間休むことになった場合は、健康保険組合から傷病手当金が給付されます。しかし個人事業主が加入する国民健康保険では傷病手当金は給付されません (平田さん、以下同)
つまり、病気やケガで働けなくなった場合は収入が途絶えるリスクがあり、フリーランスにとって命取りとなる。
「労災保険や学び直しのための職業訓練給付金、出産手当金、育児休業給付金など、会社員は社会保険でカバーされる保障が多く、フリーランスとの間にはセーフティーネットに大きな溝があります」
コロナ禍で働き方の多様化が急速に進んだことで、風向きは変わりつつある。2024年1月から政府は、自営業やフリーランスの出産支援策として国民健康保険料を産前産後4ヶ月間免除する措置を設けた。
「国民健康保険に加入しているフリーランスの場合、2019年4月から先行して免除されていた年金保険料に加えて、国民健康保険料も免除されることになりました。これは、フリーランスのセーフティネット整備に向けた重要な一歩です。社会保険料免除制度により、フリーランスは安心して出産に専念できます」
フリーランスを選択した以上、社会保障が手薄なのはすべて自己責任という考えは時代遅れだと平田さんは指摘する。
「自由と引き換えに責任を追うのは当然」といわれることも多いが、社会的なセーフティーネットが不足している現状では、フリーランス個人の努力だけでは限界がある。
「フリーランスは、必ずしも実績や経験豊富な人ばかりではありません。ワークライフバランスや、人事異動に妨げられず専門分野でスキルアップしてプロフェッショナルになりたいなど、さまざまな理由で選択されます。近年は、政府が旗を振る女性活躍推進や、育児や介護、不妊治療などと仕事との両立へのニーズの高まりから、独立する女性も増えています。
しかし、フリーランスになったことで出産手当金や育児休業給付金などの制度を受けられないとなると、出生率の低下にもつながりますよね」
平田さんは、フリーランスのPRプランナーとして活動する傍ら、結婚・出産・保活を経験した。多様な働き方を実現するためには、フリーランスが安心して働ける環境が必要であることを自身やフリーランス仲間たちの経験談から身をもって知り、2017年1月にプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会を設立した。協会の立ち上げメンバーは、平田さんをはじめ全員がフリーランスやフリーランス経験者だったそうだ。
「無料で会員登録するだけで、6,000以上あるオンラインスキルアップ講座の無料受講や、税務・法務サービスや登記支援サービス、コワーキングスペースの優待、銀行振り込みの手数料割引などをご利用いただけます」
さらに一般会員(年会費1万円)に登録すると、報酬トラブル等の契約トラブルが起きた際にかかる弁護士費用を自己負担なしで依頼できるフリーガル(弁護士費用保険)、フリーランスの幅広いリスクをカバーする賠償責任保険、ケガや病気で働けなくなった際に適用される所得補償制度など、サポート制度が充実しています。
「確定申告の時期はセミナーを開催したり、フリーランス交流会を実施したり、イベント・セミナーも満載です。誰もがフリーランスになりうる時代ですから、フリーランス協会の活動を通じて、誰もが安心して働ける社会に貢献したいと思います」