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株式会社EBILABが店舗経営のDXノウハウを楽しく学べる『wyEBIYA THE BOARD GAME』を開発
平日の夜、三重大学ではリカレント教育プログラム「地域の製造業の生産性向上・経営革新を担えるDX推進人材の育成プログラム」の授業が行われていた。
受講者たちは、時折笑いを交えながら真剣な表情で考え事をしている様子だ。その熱い視線は、机の中央に設置されたボードゲーム「wyEBIYA THE BOARD GAME」に注がれている。
「店舗経営のDXノウハウを楽しみながら学ぶ教育ツールとして、三重大学のリカレント教育のカリキュラムに提供しています」
そう話すのは、ボードゲーム「wyEBIYA THE BOARD GAME」の開発元である株式会社EBILABの代表取締役社長、小田島春樹氏だ。同社は、有限会社ゑびやから分社化されたベンチャー企業で、データ分析サービス、開発、教育の3つの事業を展開している。
2022年から三重大学と共同でリカレント教育「DX等の成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業」を推進している。リカレント教育にボードゲームを取り入れたきっかけについて、小田島春樹氏に話を聞いた。
<株式会社EBILABの公式HP>
店舗DXをボードゲームから学ぶ!
2023年にボードゲーム「wyEBIYA THE BOARD GAME」の発売が開始された。店舗経営だけでなく、店舗DXに関するノウハウなどを楽しみながら学べるボードゲームだ。
2023年3月には、クラウドファンディングサービスMakuake(マクアケ)」を通じて応援購入を開始し、総額は1,358,870円を達成し大きな話題となった。
「店舗経営の主な要素となるのが、商品販売、採用、仕入れ、在庫管理などがあります。『wyEBIYA THE BOARD GAME」は、サイコロを振って盤上を進みながら、店舗経営に必要なノウハウを学んでいきます。現代の時代に即した学びができるよう、DX要素を取り入れました。商売や経営は、戦略や駆け引き、リスクマネジメントなど、ゲームにも通じる要素が多くあります。経営ノウハウを盛り込んだゲームを作ってみたいと思っていたんです」
このボードゲームには、創業150年の歴史を持つ企業「ゑびや」の経営ノウハウと、同社の代表取締役である小田島氏の想いが詰まっている。データ分析やICTを駆使してとある食堂の経営危機を救った原体験が、ボードゲーム開発の原点となった。
ICT導入で企業をV字回復へ
ゑびやは、参拝客で賑わう伊勢神宮内宮前で和食堂「ゑびや大食堂」や土産物屋などを営む創業150年の歴史を持つ企業だ。小田島氏は10年前、妻の実家の家業「ゑびや大食堂」を引き継ぐ形で東京から三重県伊勢市に移住した。
「当時、経営危機の状況で、そろばんによる売上管理、経験や勘に頼った仕入れ、食材のロスなどアナログ経営で、店舗存続のためにはすぐに立て直しが必要な状態でした」
小田島氏が、データを収集・分析して店舗改善を行うためのノウハウを形にしたのが、TOUCH POINT BIだ。このサービスにより、売上のサマリーや顧客の属性データなどの情報を一元管理し、多角的に分析することが可能となった。。
「例えば、収集したPOSレジの情報や天候情報などを照合することで、来客予測できるようになります。翌日、1週間、1ヶ月など期間を設定すれば、どの商品がどの時期に売れるかを予測することも可能です」
顧客のニーズと行動パターンを深く理解することで、顧客へ適切なアプローチができるようになった。ゑびや大食堂は、サービス導入後、10年で売上5倍以上の成長を実現し見事、V字回復を果たした。
ゑびやの経営ノウハウが詰まった「wyEBIYA THE BOARD GAME」は、小田島氏が講師として参画する三重大学のリカレント教育講座で教材として活用されている。受講者からは「楽しく学べて、実践に役立つ」と評価も上々だ。
「当社は5年ほど前から、データサイエンス人材を育成する三重大学のデータサイエンス育成事業に携わってきました。大量の情報があふれる昨今、データ活用は、新たなビジネスモデルやサービスの創出、業務の効率化や生産性の向上などあらゆる可能性につながります。ボードゲームを通じてDXを体験しながら店舗ビジネスを学び、地域活性化や社会課題の解決に貢献していきたいです」