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小樽商科大学の「介護ミドルマネジャー育成プログラム」では次世代の介護を担う数多くのDX人材を育成
北海道小樽市の小樽商科大学は、2022年9月から2023年3月までの約半年、介護職で働く社会人を対象とした「介護ミドルマネジャー育成プログラム」を開講した。
このプログラムでは、意思決定力や問題解決力、リスク管理能力といったマネジメント能力のほか、介護経営に必要なノウハウやケアマネジメント知識を習得する。授業は、好きな時間に講義を受けられるオンデマンド形式で、自分のペースで学習を進めることができる。
「介護ミドルマネジャー育成プログラム」運営責任者で、小樽商科大学ビジネススクール准教授の藤原 健祐氏に話を聞いた。
介護職員のマネジメント能力とIT・DXリテラシーを底上げ
厚生労働省の発表によると、急速に進む高齢化に伴い、高齢者数がピークを迎える2040年には、約60万人の介護人材が不足すると予測されている。日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳と統計開始以来延び続けており、現在、日本は世界一の長寿国となっているのだ。
介護職員数自体は増加を続けているとの報告はあるものの、高齢者・要介護者数の需要増には追いついていないのが現状であるという。
「政府は、介護人材の確保を目指して、『離職防止』『定着促進』『生産性の向上』という目標を掲げ、給与の増加や評価制度の見直し、有給休暇の取得率向上など、労働環境の改善に取り組んでいます。これらの対策を講じてもなお、介護職員の早期離職率は依然として高い水準です」
深刻な人材不足に加えて長引く新型コロナウイルスの影響により、2022年は介護事業者の倒産や休業・廃業が過去最多となった。人手不足は、業務過多による職員の離職や生産性低下を招く可能性がある。そのため、介護現場では、管理職や経営者のマネジメント能力を向上させることも大きな課題のひとつだ。
前職は診療放射線技師として働き、現在はビジネススクールの講師を務める藤原さん。介護事業の経営者との会話の中で、マネジメントを学び直す必要性を痛感したという。
「介護や医療現場には専門職が多いため、経営やマネジメントを体系的に学ぶ機会があまりなく、経験や感性で経営している方も多いと思います。持続可能な施設経営を実現するには、管理職や経営者のマネジメント能力を底上げし、DX等の施策を牽引する人材の育成が不可欠です」
こうした課題を解決するため、小樽商大ビジネススクールは、介護サービス事業を展開する株式会社さくらコミュニティサービスと連携し、介護マネジメントの実践的な知識・技能を身につけられる教育プログラムを開講。文部科学省の就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業として採択された。
DX人材の育成を強化
「介護ミドルマネジャー育成プログラム」は、問題解決力、人的ネットワークを築く力、介護マーケティングなど介護経営・マネジメントの基礎をベースに、ITリテラシーやデザイン思考なども学ぶ。ITリテラシーやデザイン思考に触れ、介護業界のデジタル化やイノベーションを推進できる人材育成を目指す。
介護経営のビジョンや介護DXにおける生産性向上などを学ぶ「基礎コース(計60時間)」と、課題解決型学習をプラスした「実践コース(計10.5時間)」の2種類で構成されている。経営学基礎や介護マーケティング、デザイン思考を身につける「基礎コース」を受講後、半数が実践コースへと進む。
「『介護ミドルマネジャー育成プログラム』の受講者は、介護職で働く20〜40代の方が大半を占めます。現場や組織体制に課題を抱えており、また、ICTを現場にどのように取り入れていくかという問題に積極的な姿勢を持った方々が多いですね」
「現場で業務に携わる人にとって、経営学は今の業務に直結しないイメージがあるかもしれません。しかし、経営学で学ぶ課題解決力やマネジメントスキルは、介護の現場で活かせる貴重な能力です」
介護業界では、高齢化の進展や人材不足などの課題を背景に、デジタル化やイノベーションが強く求められている。ITリテラシーやデザイン思考を身につけた管理職や経営者は、介護事業のデジタル化や新たなサービスの開発・導入に不可欠な役割を担う存在となるだろう。
「2040年に65歳以上の高齢者数がピークを迎えることに備え、介護現場では持続可能な施設経営が求められています。『介護ミドルマネジャー育成プログラム』はミドル層を対象にしていますが、今年度はトップマネジメント層向けのプログラムを開講します。変革のスピードの更なる上昇に期待しています」
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