更新日時:
「伝統文化と環境福祉の専門学校」では佐渡に残る歴史的建築物の修復・再建を学生が行う
新潟からジェットフォイルで1時間の場所にある、日本海側で最大の離島・佐渡島。手付かずの自然に囲まれ、能狂言や鬼太鼓、人形芝居といった伝統芸能が息づく芸能の島だ。
そして島には、国の重要文化財指定の金山金山神社をはじめ、島内には江戸時代以前に建てられたとされる神社267社、寺院281寺が存在する。歴史や文化が色濃く残る佐渡は、まさに文化の宝庫と呼ぶにふさわしい場所と言えるだろう。
“徹底的な現場第一主義”を貫く伝統文化と環境福祉の専門学校の魅力
佐渡島に存在する寺院の修繕・再建に関わっているのが、宮大工を育成する「伝統文化と環境福祉の専門学校」の学生だ。同校は、島に残る豊富な伝統建築物や自然環境を活かして、社寺の建築・修復・再建を行う実習授業を強みとする。
2022年11月には、同校の学生が新穂山車保存会から譲り受けた山車1台の修復を行った。この山車は、長年、佐渡市新穂地域の祭りや神事に使われてきたものだ。修復した山車は、2023年5月開催の祭りでお披露目された。
伝統文化と環境福祉の専門学校 事務局の藤原さんは、「『本物』を教材にした実習で貴重な実習経験を積めるのは、佐渡市にある当校ならではの魅力」と語る。
宮大工は、千年以上にわたり脈々と受け継がれてきた日本古来の木造建築技術を継承する職人だ。釘や金具を使わず、木材だけで建築物を組み上げる木組みと呼ばれる伝統的な工法を用いるため、熟練の技術が求められる。
そのため、宮大工として一人前になれるまでに最低10年かかるとされる。専門性の高さから、後継者が育たないままに引退する宮大工は多い。今、宮大工の後継者不足が問題となっているのだ。
「建築専門学校は全国にたくさんありますが、宮大工に必要な高度な技術を提供できる学校は少ないのが現状です。当校では、宮大工の後継者を育成するため、社寺建築の修復・再建を実際に行う実習に力を入れています」
同校では、歴史的価値の高い「剛安寺若一皇子尊社」の新築工事や、地域文化財である「香傳寺地蔵堂」の屋根修復工事など、これまで数々の実績を積み重ねてきた。佐渡にある社寺建築の修復・再建工事は、毎年行っているという。
これらの実績は、同校の“徹底的な現場第一主義”に基づく技術力の高さと、地域社会に貢献する姿勢を示すものである。
こうした実践的な実習で宮大工の技術を学べる環境に惹かれ、多くの学生が全国各地から集まる。在校生の90%以上が新潟県外からの入学者だ。
「高校を卒業したばかりの学生が多いですが、社会人も毎年数名います。社会人は、建築未経験の方がほどんです。鑿(のみ)や鉋(かんな)など、基本的な工具の使い方から、建築の歴史や理論、設計・施工の基本まで、一から丁寧にレクチャーします。安心してご入学ください」
伝統建築学科がダントツ人気
伝統文化と環境福祉の専門学校では、二級建築士受験資格の取得者を対象とした「建築士技能士養成学科」、観光まちづくりを学ぶ「まちづくり・観光ビジネス学科」をふくめた6つの学科がある。
その中でも社会人が多く在籍しているのが「伝統建築学科」だ。さらに、伝統建築学科は、さらに、宮大工コース・技能五輪コース・伝統建築コースの3つにわかれている。
「一番人気のコースが宮大工コースです。宮大工コースのカリキュラムは70%が実習・演習授業、残り30%が座学で構成されています。宮大工は、釘を使わず木材を組み合わせて固定する日本の伝統技術『木組み』で、神社・仏閣の建築や修繕を行う仕事です。
原寸図を基に木材をカットしたり、加工したりする技術も求められることから、物理学の知識や建築構造の理解が必須となります。そのため、1年目は建築法規や建築環境工学といったインプットの時間を多く取るようにしています」
伝統建築学科の指定科目を履修すれば、卒業と同時に二級建築士受験資格を取得できる。在学中、建築大工技能士二級・三級(国家資格)を取得できるのも、実習時間が多い同学科ならではの強み。
学んだ知識を実地で試す、建築実技・建築製図・建築実習を通じてアウトプットを強化していく。1年目はインプットとアウトプットを繰り返し、基本的な知識・技術を体に叩き込む。
「鑿(ノミ)や鉋(カンナ)の研ぎ方、用途に合わせた使い方もしっかりと学びます。
工具は、宮大工にとって命の次に大事といっても過言ではありません」
演習・実習授業は、学年が上がるに従って徐々に増えていく。未経験でも宮大工に必要な高い技術力を身につけられるのは、唯一無二の教育環境と丁寧な指導の賜物だといえる。
3年間の学びを経た学生の多くが、社寺建築系工務店(宮大工)へ就職する。
「一般住宅を手がける大工、家具職人、古民家のリノベーションなど、木材の加工技術を活かした専門分野で活躍する卒業生も多くいます。入学から卒業、就職後もお手伝いさせていただきますので、建築業界への夢を一緒に叶えましょう」
<伝統文化と環境福祉の専門学校の公式HPこちら>