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コロナ禍を機に注目が高まるエンバーミング。葬儀に特化した学科を持つ「日本ヒューマンセレモニー専門学校」でキャリアチェンジを目指す
遺体に防腐剤を注入し、生前に近い姿に修復するエンバーミング。その処置を専門的に行うのがエンバーマー(遺体衛生保全士)だ。2019年7月に放送されたフジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』で、エンバーマーの役割が広く知られるようになった。
火葬が義務付けられている日本では、エンバーマーという職業を知らない人は未だに多い。
一方で、エンバーミングの利用者は右肩上がりに増えている。処置件数は年々伸びているが、人材が追いついていないのが現状だ。
需要は4年間で15.3倍に伸びているエンバーミング
全国の火葬率が99.9%と、世界一の火葬大国と呼ばれる日本。従来は、通夜・告別式・火葬という流れが一般的だったが、葬儀の形態は変わりつつある。
日本ヒューマンセレモニー専門学校 校務主任の米山誠一さんは、「すぐに火葬できない『火葬待ち』のケースが増えている」と話す。
「2022年の死者数は1年間で156万8961人※と過去最多を更新しました。感染症の流行や高齢化などで亡くなる人の数が増えており、火葬場が不足しているのが現状です」(米山さん、以下同)
※令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況-厚生労働省-
都心部を中心に全国で火葬場が不足し、遺体を1週間以上、火葬できないケースも目立つ。都内にある火葬場では、遺体安置にかかる費用が1日あたり2万円。10日間、遺体安置した場合、葬儀代とは別で20万円が追加でかかる計算となる。
住民からの反対意見や自治体の財政状況の悪化など、火葬場の新設は簡単ではない。この先もしばらく火葬場不足の傾向が続くことが予想される。
「ご遺体は、葬儀・火葬までの間、斎場や葬儀社で安置します。火葬の日まで、ドライアイスや室内を冷やすなどして腐敗・劣化を防ぎますが、4〜5日が限界です。そのため、火葬待ちを解消するため、縁起が悪いとされる友引の日に火葬を行わざるを得ないケースも増えています」
生前の姿で故人とお別れができるエンバーミング
火葬待ちの期間が長引くケースが増える中、遺体を長期間保存できるエンバーミングが注目を浴びている。エンバーミングを施せば、最大で50日間、遺体の保全ができる。
「新型コロナウイルス感染症で亡くなる人が増え、ご遺体を衛生的に保つエンバーミングへの関心がさらに高まっています。エンバーミングとは、ご遺体に特殊な防腐剤を注入して腐敗を防ぐ処置のこと。そして、この特殊な処置を行う技術者をエンバーマーと言います。
事故でお顔や体に損傷がある場合、闘病生活でお顔がやつれている方など、元気だった頃の状態に近づけることもエンバーマーの重要な役割です」
エンバーマーは、遺族が故人を最善の状態で見送ることができるようにサポートする立場でもあります」
エンバーミングを行うためには、一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)が認定する遺体衛生保全士資格を取らなければならない。
葬儀場を貸し切って模擬葬儀を行い、実践的なスキルを身につける
神奈川県平塚市にある日本ヒューマンセレモニー専門学校は、日本で唯一エンバーミング学科を設置する専門学校だ。2年間で遺体衛生保全師の受験資格を取得できる。
「エンバーミングは特殊な仕事なので、葬祭業に携わる方でも知らない場合があります。そのため、エンバーミング学科に入学する社会人の多くが、葬祭業や医療業界の経験者です。葬儀会社や納棺業者に勤めていた方が、ステップアップのためにエンバーマーを目指すケースが多いですね。
また、大切な人を亡くしたご遺族の力になりたいと、エンバーミング学科へ入学した看護師もいます」
防腐・防疫・修復といった科学的な技術を用いて、故人の遺体を美しく保存するエンバーマー。解剖学・微生物学・病理学などの医学的な知識だけでなく、高い技術力が求められる。
「技術力を向上させるためには、エンバーミングに関する実践経験を積むことが何よりも重要です。医学部では、人体の構造や機能を学ぶために、献体を用いた解剖実習が行われますが、エンバーミングを学ぶための献体は日本にはまだありません」
エンバーミングの訓練を受けるためには、エンバーミングセンターを所有する企業の協力を仰ぐしかない。しかし、エンバーミングセンターを所有する企業は少なく、法的要件や許可が必要となる。そもそも訓練を受けること自体、ハードルが高い。
「当校の運営母体である学校法人鶴嶺学園の理事長が、冠婚葬祭の会社を経営しています。その縁もあって、実際の現場に出て、エンバーマーの助手として実務にあたることができるんです。在学中にエンバーミングの経験を積めるのは、グループ内に葬儀会社を持つ当校ならではの強みだと思います」
エンバーミング学科の授業は朝から夕方まであるため、仕事と勉強の両立は難しい。同学科に在学する社会人のほとんどは、多くが仕事を辞めて通っている。
「夏休み中にリゾートバイトで学費を稼いだり、奨学金や教育ローンを使って学費を負担したりしながら通っています。金銭的な面も含め、『授業についていけるか』『クラスに馴染めるか』など心配事が多いなか、仕事を辞めて再進学するのは勇気のいる決断です。大変なこともありますが、多様なバックグラウンドを持つ方と関われるのは、学び直しの魅力だと感じますね。同じ夢や目標に向かって頑張る仲間の存在が、辛いときや挫けそうになったときの支えにもなります」
葬儀全般の知識を学び葬祭ディレクター資格を取れる「フューネラル学科」、生前の元気なお姿に戻す技術者・エンバーマーを目指す「エンバーミング学科」。日本ヒューマンセレモニー専門学校は、全国でも珍しく葬儀に特化した学科を持つ。
「葬儀の専門性を高めたい」
「よりよい別れのお手伝いがしたい」
同校は、葬儀業界でのキャリアを追求する人々にとって、知識やスキルを高めるために必要な環境が整っている。
<日本ヒューマンセレモニー専門学校の公式HPはこちら>