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効率性を重視した仕事の進め方とサファイアの美しさに惹かれて「静楽庵」に入社した若き男性社員の挑戦
岡山県美作市にある品種改良メダカの老舗、めだかの古里「静楽庵」。「サファイア」や「令和オーロララメ幹之サファイア系」など、これまで数多くの品種改良めだかを作出してきた先駆者ともいえる存在です。
2021年に発表した新作「令和黒ラメ幹之サファイア系」は、1ペア数万円と高価でありながら販売開始1分で完売し大きな反響を呼びました。今回は、静楽庵でめだか飼育に奮闘する新入社員の兵頭さんに密着しました。
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めだかを早く成長させるには、仕事の効率性が大切
敷地内に建つ5棟それぞれのビニールハウスに入ると、繁殖用のタライや巨大なプールがずらりと並んでいます。じめじめと汗ばむハウス内で、真剣な眼差しで黙々とめだかを掬う(すくう)青年の姿がありました。
「今は、めだかの稚魚・幼魚のサイズごとに分ける選別作業を行っています。最近、サイズ分けを任せてもらえるようになりました」
汗をぬぐいながら笑顔で話すのは、この春から静楽庵のメンバーに加わった新入社員の兵頭さんです。
「針子の成長速度はバラツキがあるので、そのまま育てていると大きな個体が小さい稚魚をいじめたり、餌を奪われて上手に食べられなくなったりして、成長に大きく影響します」
成長段階に合わせためだかのサイズ分けは、1年間で6世代と超ハイスピードで累代※を進める静楽庵にとって品種改良のスピードを左右する重要な業務です。
※世代間での繁殖・交配を繰り返すこと
「めだかは品種によって、ラメが背中に乗っていたり、ヒレが長く伸びたりなどさまざまな特徴があります。個体によって表現の出方が違うので、何センチになったらサイズ分けするという明確な基準がありません。最初は先輩方のやり方を見よう見まねでしたが、最近はどのくらいの大きさになったら分けるか自分で判断できるようになりました」
幼い頃から魚が好きだった兵頭さんは魚に関わる仕事に就きたいと、高校卒業後はアクアリウムの専門学校に入学。そして在学時に、静楽庵でインターンシップに参加しました。
静楽庵が2020年に発表したサファイア。背中にびっしりと乗った青いラメは宝石のように美しく、大きな話題を呼んだ。
「私が静楽庵を知ったのは、2020年に発表されたサファイアがきっかけです。体全体にびっしりと広がる青ラメの美しさに衝撃を受け、『ここでで働きたい!』と思い静楽庵のインターンシップに応募しました」
静楽庵で働くために地元・愛知県から岡山県へ引っ越し、念願のインターンとしての生活がスタートしました。
「静楽庵では毎朝9:00に朝礼を行います。当庵で飼育しているめだかの産卵状況やその日に行うタスク、ほかのブリーダーさんから発表された新品種などを共有してから作業に取り掛かります」
朝礼後、一番最初に行うのが飼育容器の水温チェックです。5棟すべてのビニールハウスをまわり、飼育容器全ての水温をチェックしていきます。
「めだかは水温変化に強く、18〜30℃の範囲であれば問題ないといわれています。ただ、急激な水温変化は体調不要や病気の原因になるので、なるべく一定の温度を保つように1日4回の水温チェックは欠かせません」
静楽庵では、「何時に」「誰が」「水温が何度か」がひと目でわかるよう温度管理表を使い水温管理を徹底しています。
朝一の水温チェックが終わると、タライやプールなど飼育容器の水替えを行います。
「めだか飼育において一番重要なのが、水質管理。食べ残したエサや排泄したフンで水が汚れるので、定期的に水替えをしてめだかが育ちやすい環境を作ってあげることが大切です」
水替えひとつとっても、めだかを網で掬って別の容器に移す、排水する、容器を洗うといった作業は、想像以上に重労働で体力を消耗します。
「水替えは一番大変ですが、一番大切な作業でもあるんです。そのため、静楽庵では作業効率化のために自動給水・排水を導入しています」
今まで手作業で行っていた業務を自動化することで、新品種の開発や光合成細菌の品質アップなど、より価値の高いことに時間・労力を避けるようになります。
「私自身、趣味でアクアリウムをやっていたとき、いかに効率良く作業を進められるかを常に考えていました。インターンを通じて、効率化を重視する静楽庵の考え方や仕事へのこだわりなど理解がより深まり、『ここで働きたい!』という思いがさらに強くなりましたね」
2021年4月から正社員となった兵頭さんに、今後の意気込みを聞いてみました。
「いつか、めだか業界をあっと驚かせるような新品種を自分で作ってみたいです。そのためにもまずは、先輩方が何年もかけて試行錯誤してきた技術やスキルを吸収して1日でも早く即戦力となれるよう頑張りたいと思います」