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ざおうハーブが続ける新しい挑戦。「ハーブって、意外と和食料理とも合うんです」
宮城県と山形県を跨ぐ雄大な蔵王連峰がそびえ立つ、豊かな自然に囲まれた宮城県蔵王町。この町に、カモミールの摘み取りやバジル詰め放題など、旬のハーブの収穫体験ができるハーブ農園があります。
「日常に気軽に取り入れることができて、且つざおうハーブでしか味わえないような製品を今後も提供していけたらと思います」
ハーブ農園「ざおうハーブ」の代表取締役である平間拓也さんは、ハーブで日常をちょっと幸せに”をテーマにハーブ栽培だけでなくオリジナル製品の開発に力を注いでいます。
今回は、平間さんがハーブ農園をはじめたきっかけや仕事のやりがい、今後の展望について話を聞きました。
<ざおうハーブの公式HPはこちら>
「久しぶりに実家へ戻ったら、畑やビニールハウスにはさまざまな種類のハーブ苗が植えられていました。実家は継ぐつもりではいましたが、まさかハーブ農園になるとは思っていなかったので、人生は何が起こるかわからないですね」(平間さん、以下同)
ガーデニング用の野菜や花の苗の生産卸を行う専業農家で、4人兄弟の長男として生まれ育った平間さん。
「1990年代のイタリア料理ブーム、続く2000年代に起きたエスニック料理ブームの影響により、スイートバジルやコリアンダーといったフレッシュハーブが日本でも広く知られるようになりました。ハーブの需要が増えたことを受け、我々もハーブメインの栽培に切り替えていくことになったんです」
ハーブの勉強を続けるうちに、その奥深さと汎用性の高さに惹かれてどんどんハマっていきました。
「ハーブが料理の主役になることはありませんが、素材本来の味を引き立ててくれる名脇役的な存在だと思っています。風味付けや食後のお口直し、料理の彩りアップなど、ハーブにはさまざまな役割があるんです。生産者として、ハーブの魅力や楽しみ方を1人でも多くの方に届けたいと思うようになりました」
観光スポットにもなっているカモミール畑。6月上旬に収穫時期には、この光景をひと目見ようと多くの観光客が訪れる。
そして、家業を継ぐために千葉大学園芸学を卒業後は蔵王町にUターンした平間さん。
「家業の会社に就職して何年かしてからは会社の中で父とは別の分野の人達とつながりを作って動くようになってきたので、そういう分野を自分で責任を持って執行する為に、別会社を設立して今に至ります。現場仕事は他のスタッフが中心となって品質管理や出荷作業を行い、弟が日々の事務処理を行っています」
ざおうハーブの敷地内に一歩足を踏み入れると、ふんわり爽やかなハーブの香りが漂います。
「現在、バジルやチャービルなど150種類のハーブ苗をはじめ、フレッシュハーブ10種、ドライハーブ10種を生産・販売しています。農場で獲れたハーブや育てた苗は、敷地内に設置されている直売所『わいわいハウス』やオンラインショップでの購入も可能です」
ハーブの収穫のタイミングに合わせて、手摘み体験ができる「ざおうハーブまつり」を開催しています。
「5月下旬~6月中旬までがカモミール、6月中旬~9月下旬がバジル、6~10月はミントという具合に、一般的にハーブの収穫時期は春から秋にかけて。ハーブを身近に感じるきっかけになればと思い企画しました。収穫体験を通じて、1人でも多くの方にハーブに興味を持っていただけたら嬉しいですね」
ハーブの王様と呼ばれるバジルや、お肉料理の風味付けに最適なセージなど、定番から変わり種までさまざまな種類のハーブを生産しているざおうハーブ。ハーブの販売だけでなく、オリジナル商品の開発にも力を入れています。
ハーブドレッシングは、販売開始後すぐに売り切れてしまう人気商品。ざおうハーブ内で1本1本手作りしている。
「ハーブは好きだけど、どんな料理にどうやって使えばいいかわからないという方がたくさんいると思います。手軽にハーブを楽しめるものは何か考えていたとき、思いついたのがハーブドレッシングでした」
ハーブドレッシングの種類は、ディルをたっぷり使った「ディルドレッシング」、ナンプラーとレモンを効かせた「パクチードレッシング」、黒こしょうがアクセントの「バジルドレッシング」の3つ。
「ディルドレッシングは、私がディルが大好きだったので商品化しました。ディルは、風味がとてもやわらかくふわっとした香りが特徴のハーブです。素材の邪魔をしないので、サラダやお刺身、唐揚げなど、どんな料理にも合うんですよ」
平間さん手作りのディルを使ったパエリア。ディルを散らすことでさっぱりとした味わいに仕上がる。
Instagramには、「お雑煮にセルバチコとディル」や「ローズマリーポテト」など、ざおうハーブのフレッシュハーブを使った料理の数々が投稿されています。
「農場をはじめてから、ハーブを使った料理を作る機会が増えました。『肉料理の風味づけにはタイムが合う』『ナポリタンにディルをトッピングすると味わいがまろやかになる』など、ハーブの特性を生かした料理や調理法を日々研究しています」
ハーブは和食との相性が良いと、平間さんは続けます。
「そうめんのつけだれにバジルペーストを足したり、肉じゃがにディルを散らしたり、色んな楽しみ方があります。特におすすめなのが、納豆とバジルの組み合わせ。刻んだバジルはシソのような爽やかな風味なので、納豆との相性が抜群に良いんです。騙されたと思ってぜひ試してみてください。本当においしいですから」
現在、平間さんは商品開発や人事といったバックオフィス業務を中心に行っています。経理は、平間さんの実の弟が担当。
「畑の管理は現場のスタッフに任せています。うちで働いてくれているスタッフは、ほぼ全員が農業未経験者です。仕事自体は、数ヶ月もすれば段々とわかってくると思います。いきなりから種まきや収穫をお願いするわけではなく、最初は商品の梱包やラベル貼りなどからはじめてステップアップしていくので、仕事の流れも把握できるようになるんです」
今後は、仲間を増やして新しいことにも積極的にチャレンジしていきたいと、意気込みを語ります。
「具体的には決まっていませんが、ハーブを使ったハンバーガーやホットドッグなどのテイクアウト販売もやってみたいですね。ハーブの使い方のヒントになるようなものを提案できたらなと思います」