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とっとり賀露かにっこ館でカニに魅了されて入社を決意した女性社員のこれから
ほかでは滅多に見られない珍しいカニをひと目見ようと、県外から足を運ぶリピーターが多い「とっとり賀露かにっこ館」。鳥取県を代表する冬の味覚・松葉ガニや丸いフォルムが可愛らしいメガネカラッパなどを展示する、カニが主役の水族館です。
飼育員として働く西野有希さんもカニに魅了されたファンのひとり。「海に関わる仕事につくのが夢だった」と話す西野さんに、とっとり賀露かにっこ館に入社したきっかけや仕事のやりがい、今後の目標について聞きました。
<とっとり賀露かにっこ館の公式HPはこちら>
専門学校での実習がきっかけでカニの虜に
「普段は全然動かないんですよ。普段は、暗い水槽の中でじっとしていることが多く、全然動かないんです。でも、餌を与えたときだけ、早くよこせと言わんばかりに動きが活発になるんですよ。そのギャップが本当に可愛くて、そこからカニの魅力にどっぷりハマっていきました」(西野さん、以下同じ)
西野さんが海に関わる仕事を目指すようになったのは、海好きだった両親の影響が大きいと言います。
「休みになると、夏休みになると海水浴やヨットによく連れて行ってくれました。特に印象的だったのが、水族館で行われていた給餌イベントです。飼育係が大水槽でダイビングしながら生き物たちに餌をあげる姿が、めちゃくちゃかっこよく見えたんです。子どもながらに、自分もあんな風になりたいと思うようになりました」
高校卒業後は、アクアリウム専門学校に入学。水生動物の生態や繁殖、飼育管理の知識などを幅広く学びました。
「2年次の授業で、水槽管理の実習がありました。学生が一人一台以上の水槽を担当して水槽メンテナンスや水作り、温度管理などを学ぶという実の授業です。ほかの学生が熱帯魚や海水魚を飼育するなか、私はカニの飼育を任されました」
はじめはカニに興味がなかったそうですが、お世話を続けるうちに愛着が湧くようになっていったと言います。
「与えたご飯を器用にハサミでつかんで口に運んで食べたり、触覚をピクピク動かしながら周りの様子を伺ったり、一つ一つの仕草や表情がとにかく可愛くて……。授業以外でも水槽の前でずっと観察していましたね」
眼のまわりにある紫褐色の斑紋がメガネのように見えることから、「メガネカラッパ」と呼ばれている。
カニの魅力に惹かれ、専門学校卒業後はとっとり賀露かにっこ館に新卒で入社。
「就職先を探していたときにたまたまとっとり賀露かにっこ館の求人募集を見つけて、すぐ応募しました。就職は巡り合わせが大事だと言われていますが、まさにその通りだと思います」
とっとり賀露かにっこ館では、約25種類・400匹以上のカニを飼育・展示しています。
「ギネス世界記録に認定された松葉ガニをはじめ、丸みのあるシルエットが特徴のスベスベマンジュウガニ」や 、貝や海綿などを背中に背負う姿が愛らしいカイカムリなど。代表格からユニークなものまで、普段はなかなか見られないカニを見られるのは、カニに特化している当館ならではの魅力だと思います」
現在、カニの飼育管理を中心に、接客応対や施設管理など多岐にわたる業務に携わっている西野さん。
「開館時間が9:00なので、朝は8:00前に出勤して担当水槽の掃除や水替えなどを行います。水槽メンテナンスは、生き物を飼育するうえで一番重要ともいえる業務ですね。餌の食べ残しやフンを掃除せずそのままにしておくと、水質が悪くなり生き物たちが体調を崩しやすくなるんです。生き物たちの健康を守るため、水槽掃除は毎日欠かさず行っています」
水替えを行う際は、水温にも気をつけているそうです。
「カニは水温変化に強い生き物ではありますが、急激な変化には弱く体に負担がかかります。当館では汲み上げた海水を飼育水に使用しているのですが、水温を調整してから注水するようにしていますね」
また、水槽内にコケが生えていると見栄えが悪くなるため、常にきれいな状態を保つよう心がけていると言います。
「お客様から“掃除が行き届いていて、いつ来ても水槽がきれい”と言っていただけるので、嬉しいですね」
水槽メンテナンスが終わると今後は、生き物たちのエサを作る調餌(ちょうじ)と、エサを与える給餌の時間。
「カニの種類によっても違いますが、水草や海藻、リンゴ、ニンジンなどを食べる子たちもいますね。給餌の時間で大切なのが、健康状態の把握です。カニは、脱皮前になるとエサをあまり食べなくなるので、体調不良かどうかを見分けるのが難しいんですよ。エサの食いつき具合や動きをこまめに観察して、ちょっとした変化も見逃さないようにしています」
カニの病気や治療法については解明されていないため、自然に回復するのをじっくり待つしかないことが多いと言います。
「今まで好んで食べていたエサを急に食べなくなったり、ほかのカニとの相性が悪かったり、私たち人間に性格の違いや個性があるように生き物にもさまざまな特性があります。 生き物の飼育は絶対的な正解がなく毎回手探りではありますが、それがやりがいを感じる部分でもありますね」
2023年4月に入社3年目を迎えた西野さんに、今後の目標やチャレンジしてみたいことを聞くと、こんな答えが返ってきました。
「最近は、新しい水槽の立ち上げを任せていただけるようになりました。今後は、お客様に楽しんでもらえるような展示をさらに増やしていきたいです」