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京都伝統工芸大学校で魅力あふれる伝統工芸の世界へ!輝く道を見つけられる場所
何百年も前から脈々と受け継がれてきた伝統工芸。若き職人たちの手によって、スマホケースや炊飯ジャーなど伝統と現代文化が融合させた新しい作品が誕生しています。
京都にある京都伝統工芸大学校では、ミドルからシニア世代の社会人経験者が数多く在籍。伝統工芸を守り後世に伝えるべく、伝統技術の習得に励んでいます。
今回は、京都伝統工芸大学校 陶芸専攻の教授と教務部長を兼任する工藤良健先生に話を聞きました。
技術を覚えるには反復練習あるのみ
京都伝統工芸大学校は、伝統工芸の担い手を育成し文化・技術を継承することを目的に開校した、伝統工芸技術を学べる日本唯一の学校です。1995年の開校以来、これまで多くの伝統工芸職人を輩出してきました。
「当校には、木工芸専攻や京手描友禅専攻など伝統工芸技術を学べる10種類の専攻があります。私が担当する陶芸専攻は、社会人経験者が比較的多い専攻です。社会人入学者の割合は1クラス50名のうち6名ほど。決して多くはありませんが、例年一定数の社会人が入学しています」(工藤先生、以下同)
かつてはクラス全体の半数以上を社会人が占めていましたが、ここ数年は高校を卒業したばかりの学生が増えているそうです。この現状について、工藤先生はこう分析します。
「近年、若い世代の中で日本の文化・歴史に対する関心が高まっています。文化や歴史と密接に関係した伝統工芸や伝統産業に触れることで、アイデンティティを確立しようとする動きがあるのではないでしょうか。
また、環境や社会の持続可能性への意識が高まっていることも、伝統工芸士を目指す若い世代が増えている理由だと思います。伝統工芸や伝統産業は、地球に優しく持続可能な生産方法や資源の利用が特徴的です。若い世代がサステナビリティを重視する価値観から、伝統工芸や伝統産業に関心を持つようになっています」
入学者の年齢は18〜60代と幅広く、定年退職後に同校へ入学し伝統工芸職人としてセカンドキャリアをスタートする方もいます。
「伝統工芸の道へ進むきっかけは、『社会に貢献できる仕事がしたい』『自分の努力が形に残る仕事がしたい』などさまざまです。大学卒業後は一般企業に就職したものの、伝統工芸に関わる仕事がしたいと入学される方もいらっしゃいます」
伝統工芸職人になろうと思ったら、今までは工房に弟子入りして技術を学びやがて独立……という流れが一般的でした。
「学生の大半が未経験からのスタートですが、在学中に確かな技術が身につく教育システムが整っているので安心です。卒業時には一人前の伝統工芸職人として働けるだけのスキルが備わっていますから」
陶芸専攻1年目は、陶芸の基礎、基本を大切にし、反復練習による技術習得を目指しています。陶芸歴40年のキャリアがある工藤先生から技術を学べる充実した環境です。
「陶芸とは、器など土で形を作り、高温の窯で焼きあげて作る工芸です。土を揉み込む段階で空気が入っていたり形が不均一だったりすると、亀裂やゆがみの原因となります。土台の良し悪しは作品の仕上がりに大きく影響するため、はじめに陶芸の基礎となる土もみを繰り返し練習します」
「技術を覚えるには反復練習あるのみです。それも毎回違ったものを作るのではなくて、必ず同じ物を同じ寸法でひたすら作り続ける。練習を繰り返すうちに技術が身につくので、自然に作れるようになるんです。そのため、学生には、1つの課題につき100個の作品を提出してもらいます」
また、技術や感性を養う授業が多いのも同校ならではの特徴です。
「授業内容は、専門実習50%、デッサンやデザイン30%、座学20%と、実践的な技術習得に注力しています。専門実習に関しては、5日のうちの半分以上が技術を習得できるカリキュラムが特徴です」
同校では、工芸コースと並んで、工芸クリエイターコースも社会人から高い人気があります。
「一歩先の技術を学びたい方には、工芸クリエイターコースがおすすめですね。工芸技術をティーカップや卓上ライトなど現代風にアレンジした作品を生み出す、クリエイター育成コースです。産官学連携事業に力を入れており、企業や自治体との共同プロジェクトや展示会の参加など実践力が身に付くチャンスが充実しています。工芸クリエイターコースへの入学希望者もお待ちしています」