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釜浅商店の庖丁売場スタッフとして働く伊藤さんのキャリアとこれから
調理道具の問屋がひしめく浅草・合羽橋で110年以上続く老舗料理道具屋「釜浅商店」。路地を挟んで、鍋やフライパンといった料理道具を取り扱う料理道具売場と、庖丁のみを販売する庖丁売場の2店舗に分かれています。
今回話を聞いたのは、庖丁売場スタッフとして働く伊藤さん。入社のきっかけや仕事のやりがいについて話を聞きました。
コロナ禍をきっかけに庖丁を買い求める人が増加!
コロナ禍で外食の機会が減ったのを機に、自宅で料理する人々が増加。釜浅商店でも、料理に目覚め“せっかくなら使う道具にもこだわりたい”と、出刃庖丁を求める方が増えています。
「一口に和庖丁といっても、野菜の皮を剥いたり、切ったり、刻んだりするときに使う薄刃庖丁や、お刺身を引く柳刃庖丁など、さまざまな種類があります。出刃庖丁。出刃庖丁は、和庖丁の中でも刃が分厚く頑丈で、魚を捌いたり、硬い骨を切ったりするのに最適です」(伊藤さん、以下同)
相出刃“庖丁や身卸し出刃庖丁、あじ切り庖丁など出刃庖丁だけでも数種類以上ある。
広く一般に流通していて、多くの家庭で使われているのが三徳“庖丁。1本で肉・魚・野菜といったさまざまな食材に対応しています。
「三徳庖丁はさまざまな食材を切れるので、万能庖丁とも呼ばれています。三徳庖丁1本で済ませるという方も多いと思いますが、食材や用途によって庖丁の種類を使い分けることで、見た目の良し悪しだけでなく料理の味や食感も格段に変わるんですよ。騙されたと思って、一度試してみていただきたいです」
果物や野菜の皮剥きに便利なパーリングナイフや肉の筋を切ったり、塊肉を切りわける筋
引など、店内には60種類、1000点もの庖丁がずらりと並びます。
「当店は、さまざまな産地からセレクトしたこだわりの庖丁を販売しています。そのなかでも、三大刃物産地である大阪府堺市、新潟県三条市、岐阜県関市の庖丁は根強い人気がありますね」
定期的に、スタッフが日本各地の庖丁産地を訪れる社員研修を行っています。
「商品への理解を深めるだけでなく、職人のお話や工場見学を通じて、庖丁に込められた想いや商品の魅力など新たな気づきを得るきっかけになります」
訪問がきっかけで岐阜県関市の洋庖丁にハマり、自宅でも愛用しているという伊藤さん。
「“日本一の刃物のまち”と呼ばれる岐阜県関市は、家庭用刃物のシェア全国1位を誇る地域です。関市の庖丁は切れ味がよく刃こぼれがしにくいのが特徴。切れ味の良い状態が長く続くので、庖丁を研ぐ時間がない方やお手入れが面倒という方にこそぜひおすすめしたいです」
釜浅商店では、店舗で扱う一部の商品をスタッフがレンタルして自宅などで使うこともできます。
「鍋やフライパン、庖丁といった料理道具をレンタルできる、釜浅商店ならではの社員制度のひとつです。自分で使うことで、“どれくらい使うと切れ味が落ちる”とか“錆びやすい”といった商品のメリット・デメリットを把握できます。
そのため、お客様に商品の説明をするときも、説得力が生まれ接客の深みが増すんです。接客を担当したお客様が友人を連れて再来店してくださったり、別の庖丁を買いに来てくださったり、良いと思うものをお客様と共有できた瞬間は嬉しいですね」
料理好きという伊藤さんが釜浅商店に入社したのは、1年ほど前。
「釜浅商店へは何度かお客さんとして来たことがありました。古風な問屋が多いなか、釜浅商店には洗練された商品がディスプレイされていて、純粋に“かっこいいな”と。ちょうど転職を考えていたタイミングで、伝統工芸に関わる仕事に携わりたいと考えていたこともあり、今しかない! と求人に応募しました」
4ヶ月ほど料理道具売場で働いた後に庖丁売場へ配属。現在は、庖丁売場スタッフとして接客や在庫管理などの業務をこなす傍ら、庖丁研ぎを特訓中だと言います。
「当店で購入いただいた庖丁の研ぎサービスを行っています。高価な庖丁でも、使っているうちに切れ味は落ちていくものです。定期的なメンテナンスで切れ味が復活するので、良い状態で長く使い続けられます」
庖丁研ぎサービスのほかに、お客様自身が自宅で庖丁研ぎをできるよう庖丁研ぎのワークショップも毎月開催しています。
「自分で庖丁を研ぐのが怖いという方もいらっしゃいます。正しい研ぎ方をお伝えして、大切な庖丁をより長く使うお手伝いができればと思います。そのために、1日でも早く研ぎ方をマスターして“釜浅商店で庖丁を買って良かった”と思っていただけるサービスを提供していきたいです」