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コーヒーもケーキもおいしい店を作りたい。パティシエ・バリスタ・焙煎士の3役をこなす「CAFFÉ VITA®」店主・門脇裕二さん
個人経営の喫茶店やカフェが多い地域で知られる島根県。喫茶店やカフェがひしめく松江市の一角にある「CAFFÉ VITA®(カフェヴィータ)」は、連日足を運ぶ人が絶えない人気コーヒー店です。
店主を務めるのは、門脇裕二さん。幼い頃はセーリングが趣味で、中学校3年生で全国優勝、高校では国体にも出場した経験を持ちます。大学の推薦入学を推薦を蹴ってまで、コーヒーの道に進んだ理由について話を聞きました。
父親の影響でコーヒーの道へ
「実はパティシエとしてのキャリアの方が長いんですよ」
笑いながら話す門脇さんは、ブレンズラテアート関西大会2連覇、UCCマスターズ全国大会エスプレッソ部門では優勝を飾るなど、数々の実績を誇る有名バリスタです。
「美味しいコーヒーの基準は人それぞれ違います。フルーティーな風味が好きだったり、ガツンとした苦味のある味わいが好みだったり。自分が淹れたコーヒーを飲んで喜んでもらえた瞬間が一番嬉しいですね」(門脇さん、以下同)
物心ついた頃から将来は喫茶店をやりたいと考えていたそうです。
「私の父は、島根県安来市で1967年創業の老舗喫茶店 『サルビア珈琲』を経営しています。毎日コーヒーを淹れる父の姿を見て育ったので、コーヒーの道に進んだのは自然だったのかもしれません」
喫茶店を営む父親の影響で、高校卒業後は大阪にある洋菓子の専門店へ就職した門脇さん。
就職先として洋菓子店を選んだのには、理由がありました。
「喫茶店のケーキは、脇役的な存在です。コーヒーはおいしいけど、ケーキはイマイチという喫茶店も少なくありません。どうにかこの状況を変えたいと思い、まずはパティシエとしての腕を磨くべく洋菓子店で修行することにしました」
製菓店で働きながら夜は製菓学校に通い、6年間パティシエとしてのキャリアを積んだ門脇さん。
「ひと通りのパティシエの経験を積んだ後、コーヒーを学ぶため大手コーヒーチェーン店に転職しました。その後、イタリアやシアトルへと渡りコーヒーの基礎を勉強。イタリア滞在中は、バール(コーヒーショップ)で働きながらエスプレッソの淹れ方を一から学びました」
イタリアから帰国後、父が経営する喫茶店でコーヒー豆の焙煎技術を学び、そして数々のバリスタ大会で優勝している兄・門脇洋介さんがオーナーを務めるコーヒー店で修行。
「兄の店を手伝いながら開業準備を進め、2002年にCAFFÉ VITA®をオープン。VITAは、イタリア語で“生活”を意味します。日々の生活においしいコーヒーを取り入れてもらいたいとの想いから名付けました」
「CAFFÉ VITA®」では、生豆の選定・焙煎から抽出まで全て店舗で行っています。さらに、自分たちが本当においしいと思えるモノだけを提供したいとの想いから、ブラジルにコーヒー農園を購入。
「生成方法にもこだわった当店オリジナルの豆は、チョコレートのような芳醇な香りと後味が特徴。フルーティーな酸味とほのかな甘味が口の中に広がる、贅沢な一杯です。コーヒーが苦手な方にも満足いただけると思います」
門脇さんのおすすめは、本場イタリア仕込みのエスプレッソ。
「“エスプレッソ=苦い”というイメージが強く、苦手意識を持つ方が多いと思います。本当においしいエスプレッソは、不快な苦味が一切ありません。イタリアのエスプレッソは、苦み・甘さ・酸味のバランスが絶妙で飲んだ後の余韻も楽しめる。これまでの常識を覆す衝撃的なおいしさでした」
「CAFFÉ VITA®」で使っているのは、日本に1台しかないというLaMarzocco LEVA X 90anniversary modelというエスプレッソマシン。
イタリアで飲んだエスプレッソのおいしさを多くの方に知ってもらいたいと、日本に1台しかないエスプレッソマシンを導入。
「当店のエスプレッソマシンは、0.1度単位で抽出温度や抽出圧力をコントロールできます。そのため、豆本来の旨みや香りを最大限に引き出したエスプレッソを提供できるようになりました。ぜひ、当店のエスプレッソを飲んでいただきたいです」
木いちごのケーキやチョコバナナ、モンブランなど旬の素材を贅沢に使用した、門脇さん自慢の手作りケーキ。
エスプレッソだけでなく、ドリップコーヒーも提供している「CAFFÉ VITA®」。コーヒーもケーキも素晴らしいと口コミが広がり、全国各地からコーヒー好きが訪れています。
「当店は大通りから離れていて、決して立地が良いとは言えません。オープン当初、周囲からは“3年で潰れる”と厳しい意見もありました。それでも、20年以上お店を続けてこれたのは、お客様やスタッフのおかげです。豆の選び方やドリップのコツなどお客様の悩みを解決できる、駆け込み寺的な存在でありたいと思います」