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帯広畜産大学の「農畜産プロフェッショナル経営人材育成プログラム」で農畜産業のトップランナーを育てる
北海道帯広市にある帯広畜産大学では、2023年9月に社会人人材育成事業として「農畜産プロフェッショナル経営人材育成プログラム」を開講した。2023年9月1日〜2024年3月15日までの約半年間で、十勝地域の基幹産業である農畜産業を牽引する人材育成を強化することが狙いだ。
初年度は、農家や農業団体職員、金融機関職員等計29名が受講した。同プログラムでは、どういったことを学べるのだろうか。帯広畜産大学 高度人材共創センター センター長の岩本 博幸教授に話を聞いた。
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十勝地域の産業を担う人材を育成
農産、畜産、酪農が盛んで、日本の食料供給の要となっている十勝地域。十勝地域中央に位置する帯広市に1949年、帯広畜産大学が誕生した。豊かな土壌と気候条件に恵まれた環境を活かして、農学、畜産科学、獣医学に関する教育研究を推進する日本唯一の国立大学だ。
同校は、これまでも帯広市との共同事業である「フードバレーとかち人材育成事業」や「野生生物保全管理技術養成事業」等の社会人向け講座の実施に積極的に取り組んできた。
「近年、十勝地域では、大規模化、法人化にともなって従業員の確保やその人材育成、企業的な経営に転換していく上での課題解決が求められています。
具体的には財務会計や組織マネジメント、事業承継などの知識と実践力が求められています。地域産業の持続的な発展のためには、次世代を担う社会人教育の取り組みが欠かせません」(岩本教授、以下同)
帯広畜産大学は、大学が実施する社会人を対象としたリカレント教育を統括的に運営する組織として、2023年7月に高度人材共創センターを設置。そして、2023年9月、農業・畜産業界を担う人材育成を目的とした履修証明プログラム、『農畜産プロフェッショナル経営人材育成プログラム』を立ち上げた。
「地元の農業・畜産関係者だけでなく、商工会議所など広く地域経済を担う関係者の方々から、専門分野を実践的に学べる機会が欲しいという要望が寄せられていたんです。プログラムでは、既存の社会人向け講座よりも専門分野を深く学べるよう、税理士や会計士といった専門職種の方々を講師として招きました」
知識やスキルに応じて選べる2つのコースを用意
「農畜産プロフェッショナル経営人材育成プログラム」は、受講者の知識やスキル、実務経験の程度に応じて、「実践力基礎コース」と「実践力強化コース」の2コースに分けて実施される。
「実践力基礎コースは、農畜産業の若手経営者や新規就農者、金融機関・農業団体の若手職員が対象となっています。農家の後継者や、近い将来、経営を引き継ぐ予定の方々が受講しており、農業経営の基礎をしっかりと学べる内容です」
実践力基礎コースのカリキュラムでは、日本政策金融公庫が実施する「農業経営アドバイザー」の資格取得に対応した実務基礎科目6科目に加え、農業会計や農業経営財務に関してより実践的な知識・技術の習得を目指す実務実践科目12科目を設置。
必修科目29時間と選択必修科目31時間以上の合計60時間を受講することが、履修の要件となっている。
「財務、チームビルディング、マーケティングなど、実務に直結する幅広い知識とスキルを体系的に学べるカリキュラムです。受講者からは、現場の課題解決に役立つという声が寄せられています」
より実践的な経営スキルを習得したい方向けに設計されたのが、「実践力強化コース」だ。このコースでは、経験豊富な講師陣が中心になって行うPBL(課題解決型学習)やグループワーク・グループティスカッションを通じて、現場で役立つ知識と技術を身につける。
「ケーススタディを繰り返すことで、思考力や課題解決能力が自然と鍛えられていき、学んだことを農業経営や農業経営指導に活かすことができます。修了には、必修科目47時間、選択必修科目13時間以上、合計60時間の受講が必要です」
ベテラン経営者やJA職員・資材メーカーの幹部クラスなど、農業経営や農業経営指導の現場で活躍する人が集まる。年齢層は40〜50代のミドル世代が中心で、農業経営のスキルアップに向けて意欲的だ。
「十勝地域は大規模農業経営を展開しているところが多く、その分、従業員も多くなります。後継者不足の問題だけでなく、親子間や第三者も視野に入れて事業承継をいかにスムーズに行うかという点も現場が抱える課題のひとつです。
本プログラムでは、現場の課題に直結するスキルを習得し、農業経営の持続的な発展に貢献できる人材の育成を目指しています」