更新日時:
渋谷カケル法律事務所代表の高木啓成先生の弁護士と作曲家、2つのキャリアへの挑戦
働き方の多様化に伴い、近年は医師や薬剤師などパラレルキャリアで活躍する弁護士が増えています。
渋谷カケル法律事務所の代表である高木啓成先生も、異色のキャリアを歩むひとりです。彼は、著作権法を中心としたエンターテイメント法務を得意とする弁護士としてのキャリアに加えて作曲家という肩書きを持ちます。
<渋谷カケル法律事務所の公式HPはこちら>
平日は弁護士として働き週末は作曲活動を行う
単に趣味としての作曲活動ではなく、HKT48をはじめとする人気歌手やアイドルグループへの楽曲提供を行なっている高木啓成さん。
「基本的に平日は弁護士の仕事に集中し、週末を作曲活動に時間を充てています。弁護士としては、エンターテイメント関連の法律知識や音楽ビジネスに関する知見だけでなく、制作の現場がわかることが自分の強みだと思います」(高木さん、以下同)
音楽が好きで、学生時代から友人らとバンドを組んで音楽活動に没頭していたという高木さん。
「僕は、ステージに立ちたいというよりも、作編曲やレコーディングなどの音楽制作に興味をもつタイプで、自分が作曲した楽曲を公表するためにバンド活動をしていたような感じでした。大学に入ってからも音楽は変わらず続けていましたが、司法試験の勉強が忙しくなり音楽から遠ざかっていたんです」
音楽活動再開のきっかけは『けいおん!』との出会い
高木さんが音楽活動を再開したきっかけは、軽音楽部を舞台にした高校生活を描いたアニメ『けいおん!』との出会いでした。
「弁護士になって数年、ちょうど仕事にも慣れてきて、自分のやりたいことを見つめ直していた頃でした。5人の女子高校生たちがバンド活動に熱中する姿を見て、『もう一度、音楽をやりたい』と想うようになりました」
一時はバンド活動を再開していた時期もあるといいます。
「職場の仲間を中心にバンドを組みましたが、それぞれ仕事が忙しくてスケジュールを合わせるだけでも一苦労です。また、各メンバーの熱量にもばらつきがあり、結果的に結成から1年足らずで解散することとなりました」
「バンド解散後は、一人でDTMでの音楽制作に専念しました。バンドのメンバーとの音楽活動はとても楽しいし刺激を受けますが、自分のやる気や努力だけではどうにもならないこともありました。一方、DTMなら、良くも悪くもすべて自分一人で完結します。サボるも集中するも自由、すべて自分の責任というか、自分の努力が如実に楽曲に表れるんですよ」
DTM(デスクトップミュージック)とは、パソコンで作曲や編曲といった音楽制作を行うことです。近年、DTMの周辺機材やソフトの機能・音質の精度が上がり、ジャンルによってはCD音源と変わらない品質の音源を制作できるといいます。
70曲目にしてついにレコード会社のコンペで採用される
2018年、地道に音楽制作を続けていた高木さんに、転機が訪れます。
「仕事の合間を縫って日々作曲に取り組み、70曲目にしてついに自分の曲がレコード会社のコンペで採用されることになりました」
その曲は、偶然にも、高木さんの故郷である福岡を拠点に活躍するHKT48の楽曲に選ばれました。
また、図らずも、音楽制作を続けていたことは、弁護士のキャリアにも影響をもたらしました。
「コンペ活動をしながら、地下アイドルへの楽曲提供をしていたため、地下アイドルのプロダクションなどから法律相談を受けるようになり、エンターテイメント関係の法務に詳しくなっていきました。次第に、音楽関係のスタートアップ企業、著名アーティスト、タレント事務所などにクライアントが広がっていきました」
2020年には著書を出版
そして、2020年10月には著書『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』を出版。
「以前はクリエイターからの法律相談もよく受けていたのですが、法人のクライアントが増えるにつれ、多忙になったり、利益相反の問題もあったりして、なかなか個人からの相談を受けることが難しくなってきました。でも、僕自身も音楽クリエイターなんだから、クリエイターに役立つ情報を発信したい。そこで、個人クリエイター向けに、プロとして最低限知っておいてほしい法律や契約の知識をわかりやすく解説しようと思い、書籍を出すことにしました。当時は弁護士業務も忙しく、執筆は思った以上に大変だったので、完成した本が手元に届いたときは感慨深いものがありましたね」
現在、弁護士×作曲家として活躍している高木さんに、今後の目標やチャレンジしてみたいことは何か聞いてみました。
「もともと僕は「こういう弁護士になりたい」「こんな事務所にしたい」という目標があるわけではなく、弁護士業務と創作活動をうまくリンクさせることができるよう、日々試行錯誤しています。一見、弁護士×作曲家としてうまくいっているように思われるかもしれませんが、実際は失敗の連続ですよ。具体的内容はまだ内緒ですが、いまも、音楽制作や書籍とはまた別のアプローチで、ものづくりにチャレンジしているところなので楽しみにしていてください」