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竹島水族館の舞台裏へ!入社2年目の女性飼育員が語る生き物と共に成長する喜びと挑戦
愛知県蒲郡市で1956年に開業した「竹島水族館」は、地元民から“タケスイ"の愛称で親しまれています。
ここに、水族館飼育員になるという夢を掴んだ1人の女性がいます。2022年4月、竹島水族館に仲間入りした入社2年目の南優花さんです。
今回は、南さんが竹島水族館に入社したきっかけや仕事のやりがいについて話を聞きました。
<竹島水族館の公式HPはこちら>
竹島水族館は、やりたいことに挑戦できる場所
竹島水族館の代名詞といえるのが、オオグソクムシに触れるタッチングプール。オオグソクムシは、水深250〜550mの新海底に生息しており、生物の死骸を食べることから“海のお掃除屋”とも呼ばれている。
幼い頃から生き物に関わる仕事がしたいと海洋学を学べる大学に進学。竹島水族館に新卒入社し、2023年4月に2年目を迎えます。
「当館では、三河湾や沖合に生息する550種類、約5,000匹の生き物たちを飼育・展示しています。三河湾や遠州灘は深海魚の水揚げ量が多いため、地元の漁師さんが持ってきてくれた魚を展示することも多いです」
竹島水族館では、スタッフがそれぞれの生き物たちの飼育管理を行っており、南さんは海水魚を担当。南さんの1日は、水槽のメンテナンスからスタートします。
「水槽の底に溜まった糞や内側に付着したコケの掃除など、営業開始の9:00までに実施する水槽掃除は、日々のルーティンワークです。生き物の健康を保つだけでなく、お客様に美しい状態で鑑賞していただくためにも、水槽メンテナンスは欠かせません」
熱帯魚が泳いでいる水槽のメンテナンス中の様子。周りをよく見ながら刺激しないよう慎重に掃除を行う。
サンゴの大水槽や大型魚のザメやエイなどがいる水槽は、潜水しながら掃除を行います。
「最初の頃は掃除完了までに2時間以上かかっていたんですが、今はスムーズにできるようになりました。回数を重ねるうちに、汚れやすい箇所や糞が溜まりやすい場所がわかるってくるんですよ」
開館後は、館内を巡回しながら担当水槽の水温をチェック。
「海水魚が快適に過ごせる水温は23〜27度。温度変化が激しいと魚が弱ってしまうので、水温はこまめに確認し安定した環境作りを徹底しています。そして、海水魚飼育において命ともいえるのが、塩分濃度です」
竹島水族館では、水族館の裏にある海からくみ上げた海水を飼育水に使用しています。
「ポンプで汲み上げた海水を貯水してから濾過し、館内の水槽に注水します。塩分濃度の急激な変化は魚にとってストレスになるんです。そのため、水換え時は飼育水とほぼ同じ塩分濃度の水を使っています」
館内には、特定外来生物に指定され、輸入・販売規制がかかったアリゲーターガー(淡水魚)も展示。
海水の塩分濃度は季節によって変わるため、飼育水に塩を溶かして微調整しています。
「魚に負担がかからないよう、塩分濃度を一定に保つように気をつけています。塩分濃度が基準値よりも高い、あるいは低すぎたり、変動が大きかったりすると、魚の免疫力が下がり寄生虫が出やすくなるんです」
海水魚の病気でもっとも多いのが、白点病だと言います。白点病とは、白い点々がが体に現れる寄生虫病のひとつ。メダカや金魚などの観賞魚に多い病気です。
「ここでは飼育水に薬(硫酸銅)を溶かし、換水を多くするなど、全体で治療を行っています。寄生虫は水槽内に蔓延するため、早期発見が大事です。症状が進むと魚が衰弱し最悪の場合は、水槽崩壊のリスクも考えられます」
魚をよく観察することが早期発見のカギだと南さんは続けます。
2022年10月開催の企画展『ミナミ展』では、企画やポップ作成、水槽立ち上げまでの全てを南さんが担当。
「水槽の底でじっとして動かなかったり、ヒレが閉じていたりする場合、体力が落ちている可能性が高いです。エサの食いつき具合や泳ぎ方など、ちょっとした変化を見逃さないようにしています」
2023年4月に入社2年目を迎える南さんは、「いつか、アシカショーにもチャレンジしてみたい」と意気込みを語ります。
「昨年10月、入社後初の企画展 『ミナミ展』を開催しました。私の苗字であるミナミにちなんだ生き物を展示するという、ユニークな企画です(笑)。テーマや水槽レイアウト、パンフレット作成など戸惑うことも多く大変でしたが、先輩方に助けていただき形にすることができました。当館ではさまざまな企画展を開催していて、やりたいことにチャレンジできる環境です。飼育員としての経験を積んで、いつかアシカショーにもチャレンジしてみたいと思います」