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田村七宝工芸ゴダイメ田村有紀さんの挑戦!「後継ぎとして伝統技術を守って攻める」
愛知県あま市七宝町にある※尾張七宝・七宝焼の窯元「田村七宝工芸」で、“ゴダイメ”を務める七宝焼職人の田村有紀さん。
「父の田村丈雅が四代目当主なので、私は“ゴダイメ”と名乗っています」
田村さんは数年前、1883年から続く家業の後継として、七宝焼の世界へ飛び込みました。七宝焼職人の傍ら、ライブシンガーとして音楽活動も行っています。今回は、田村さんが七宝焼職人の道へ進んだきっかけについて話を聞きました。
<田村七宝工芸の公式HPはこちら>
誰にも知られず七宝焼の技術が消えてしまうのは悲しい
田村さんが指輪入れとして愛用している「金銀舞い 金平糖入れ」は、天の川をイメージしたデザイン。イヤリングやピアスなどのアクセサリー入れにおすすめ。
宝石のような美しさと色鮮やかで繊細なデザインを楽しめる七宝焼。国内外問わず多くの人々を魅了している日本の伝統工芸品です。しかし、後継者不足により存続の危機に追い込まれています。
「地元・愛知県あま市七宝町は、七宝焼原産地です。しかし、七宝焼が栄えた当時、町内に200軒近くあった窯元も、現在残っているのはわずか8軒。技術を受け継ぐ担い手の減少によって職人の高齢化が進んでいて、規模の縮小や工房を畳むという選択を余儀なくされています」(田村さん、以下同)
明治16年から続く窯元の娘として生まれ育った田村さん。日本が世界に誇る技術を後世に残していきたいと、七宝焼の道へ進むことを決意します。
「七宝焼は“焼”という字がつきますが陶芸ではなく、七宝工芸というジャンルになります。素材も歴史も全然違います。七宝焼は、土台となる金属にクリスタルガラスを焼き付けて装飾していきます。透明感と鮮やかな色彩を表現できるのは、金属とガラスの合体工芸である七宝焼ならではの魅力です。こんなにも美しい七宝焼の技術や魅力を知ってもらいたいし、未来へ繋げていきたいと思いました」
一人でも多くの人に知ってもらうためにブランディング・広報活動に取り組む
田村さんが最初に取り組んだのは、ホームページやオンラインショップの開設、SNS運用といったブランディング・広報活動でした。
「1人でも多くの人に七宝焼の魅力を知ってもらうためには、七宝焼の良さを発信する場が必要でした。欲しい人だけに買ってもらうという受け身の体制ではなく、SNSやホームページで発信すれば認知度アップにつながります。オンラインショップの開設で、幅広い世代にアプローチできるようになったのは大きな一歩です」
2015年には、七宝ジュエリーブランド「SHIPPO JEWELRY -TAMURA WHITE-」を立ち上げます。
自分へのご褒美としてはもちろん、誕生日や記念日の贈り物にもぴったり。
「若い世代にも七宝焼の魅力を知ってもらえたらと思ったんです。七宝焼の小物は古くからありますが、『伝統工芸品=花瓶・額』というイメージが強くなかなか目に触れる機会がなかったのだと思います」
“自分が使いたい人生がわくわくする七宝焼”をテーマに、桜をモチーフにしたピアスや黒猫のデザインをあしらったペンダントなど、ひとつ一つ手作りしています。
「ジュエリーは販売スペースを取らないので、セレクトショップやアクセサリーショップでも置いていただけるようになりました。気軽に身につけられるジュエリーをきっかけに、七宝焼に興味を持っていただけたら嬉しいですね」
2022年10月にはクラウドファンディングを実施
2022年12月、解体途中の田村七宝工芸の工房をバックに記念撮影。
これまでの常識を覆すような企画を打ち出している田村さん。2022年10月には、老朽化した職場を建て直すためにクラウドファンディングにも挑戦し話題を呼びました。
「現在の工房は築年数が古く、コンセントからの発火や床の傾きなど老朽化が激しいため、いつ倒壊してもおかしくない危険なレベルです。伝統工芸を守るには、まずは働く環境を整えることが先決だと思いました」
クラウドファンディングでは、2,803,000円の支援を達成。プロジェクトの詳しい経緯や取り組みについては、田村さんのYoutubeで公開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=mSN8ALfsJpg
「技術を十分に学べる環境がないことも、後継者不足に拍車をかけている原因だと思います。七宝町で最後の後継ぎとして、七宝焼の技術を守っていかなければなりません。今後は、七宝制作体験も行いながら文化・伝統の継承に貢献していきたいと思います」