ことばやきこえ、コミュニケーション等にハンディーキャップのある子どもたちが我慢しなくて済む社会に変えていきたい。言語聴覚士の資格取得を目指す島村彩愛さんの挑戦

嚥下障害の授業風景

言語聴覚士は、1997年に国家資格として制定された新しい専門職です。近年は高齢化の影響により言語聴覚士のニーズは増加傾向にあります。

しかし、作業療法士や理学療法士と比べて認知度はまだまだ低く、有資格者も少ないのが現状です。

今回は、関西学研医療福祉学院に通う言語聴覚学科1年生の島村彩愛さんに言語聴覚士を目指したきっかけについて話を聞きました。

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祖母の影響で言語聴覚士の道へ

失語症のリハビリテーションの様子

言語聴覚士が担当する病気のひとつ「失語症」。失語症のリハビリテーションでは、写真やイラストを使用しながらことばを引き出す方法もある。

「言語聴覚学科は 、大学を卒業したばかりの学生や社会人経験者、子育てされている方などさまざまなバックグラウンドを持った方が在籍しています。同じ目標に向かって頑張る同志のような存在です。勉強からプライベートまで気軽に話せるので、年齢差は感じません」(島村さん、以下同)

大学卒業後、保育士資格を活かして放課後等デイサービスで働いていた島村さん。放課後等デイサービスは、障害がある小・中・高校生が放課後や土日、長期休暇中に利用できる施設です。

「放課後等デイサービスは、創作活動や地域交流の機会を通じて子どもの成長をサポートする場です。職場には言語発達障害や社会保障制度などの専門知識が豊富な職員が多く、働くうちに専門性を身につけたいと思うようになりました」

嚥下障害の授業風景

嚥下障害の授業風景。聴診器を首に当て、呼吸の音・飲み込む音を聞いて嚥下障害の状態を評価する。

島村さんが言語聴覚士を志したのは、祖母の影響が大きいと言います。

「祖母が入院した際、摂食嚥下(せっしょくえんげ)で言語聴覚士にお世話になったことがきっかけです。摂食嚥下とは、食べ物を咀嚼して飲み込むことを指します。加齢や病気で摂食嚥下機能が低下すると、自分で食べ物や飲み物を飲み込むのが難しくなります。放っておくと食事の量が減っていき栄養不足になるため、免疫が低下しさらなる病気につながる危険性が高くなります。そこで重要なのが、食べ物をうまく飲み込めるようにする※嚥下訓練です」

※嚥下訓練は、咀嚼(そしゃく)や飲み込むときに使う筋肉を動かしたり刺激を加えたり、言語聴覚士が行うリハビリテーションのひとつ。

言語聴覚士に興味を持った島村さんは、関西学研医療福祉学院へ入学しました。

「関西学研医療福祉学院は、小児分野に力を入れている数少ない学校です。さらに、附属施設に児童発達支援放課後等デイサービスを有しており、発達障害児とかかわれる実習が多い点も入学を決めた大きな理由です。ここなら小児分野で働くという夢を実現できるかもしれない! とワクワクしましたね」

我慢や頑張ることを強いられる状況を変えていきたい

関西学研医療福祉学院のクリスマスイベント

クラスで行ったクリスマスイベントの様子。体育館を貸し切ってレクリエーションやスポーツを楽しむ「スポーツ大会ー青丹杯」なども行っています。

関西学研医療福祉学院の言語聴覚学科では、基礎から専門まで幅広い知識・技術言を徹底的に身につけていきます。

「1年目の前期では、言葉の理解発話や読み書きなどが困難になる「失語症」をはじめ、生理学や言語聴覚障害概論といった座学をしっかり学びます。覚えることが想像以上に多くテスト直前は提出課題に追われて大変ですが、クラスメイトの存在が心の支えてになっていますね」

放課後等デイサービスでの経験が現在の学びに活きていると話す島村さん。

「補聴器をしている子や人工内耳をしている子など、聴覚のレベルはさまざまです。聴覚障害がある子どもたちが我慢や頑張ることを強いられ、辛い思いを抱えています。そういった現状を知れたことで、専門用語や検討事例をスムーズに理解できたと思いますね。“ごめん!話聞こえないねん!」と気軽に言える社会に変えていきたいです」

2023年4月に2年生へ上がる島村さんに最後、入学前と後で成長したと感じるところを聞いてみるとこんな答えが返ってきました。

「入学前と比べて時間の使い方がうまくなったと思います。以前は移動時間は音楽を聴いていましたが、授業の復習をしたり気になった病名を調べたりスキマ時間を有効活用できるようになりました。わからないことがあっても、「新しい知識を得られた!」と肯定的に考えられるようになりましたね。

一生のうち、勉強だけに集中できる時間は限られています。年齢が上がれば当然、生活のために働かなければなりません。今は勉強に専念できる環境に身を置くことができ、とても幸せです。関西学研医療福祉学院に入学して本当に良かったと思っています」

今後、言語聴覚士の活躍の場は医療領域に留まらず、福祉サービスや幼稚園、保育所、小・中学校など教育分野でのニーズが高まっています。金融業や製造業から言語聴覚学科に入学する方もいるため、経験の有無は関係ありません。現在、転職を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

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