働き方改革の一環として導入が進められている「テレワーク」。ワーク・ライフ・バランスの向上や生産性を高める勤務形態として期待されています。
一方で、実際に導入した企業では、上司が部下を同じオフィス内で直接管理できないため、マネジメントの工夫が必要だと感じているようです。
今回の記事では、テレワークでの適切なマネジメント方法や注意点、成功事例をご紹介します。
目次
テレワークの普及状況
働き方改革の推進と現在のコロナ禍によって、テレワークの導入を検討せざるを得ない企業も増えているのではないでしょうか。
2020年3月、4月に東京都が実施した「テレワークの導入に関する緊急調査」によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は、3月は「24.0%」だったのに対し、4月は「62.7%」と2.6倍に増加しました。
新型コロナウイルス感染症拡大防止策として、テレワークを実施する従業員の割合についても、2019年12月は「平均約2割」だったのが、2020年4月には「平均約5割」と約2.5倍に増えています。
今後も先行きが不透明な状況が続くため、テレワークを継続し、制度化する企業は増えていくでしょう。
制度設計などの準備もままならないまま、急遽テレワーク制度を導入した企業では、安定的に推進するための対策を考える必要があります。
(参考:東京都「テレワーク『導入率』緊急調査結果」)
テレワークでのマネジメントの課題
テレワークは通常のオフィス勤務とは勤務形態が異なるため、これまでと同様の方法でマネジメントを行うのは難しいと考えられています。
テレワークで発生しやすいマネジメントの課題について見ていきましょう。
- 部下のスケジュール管理が難しい
- 部下とのコミュニケーション不足
- テレワークでの評価基準が定まっていない
課題(1)部下のスケジュール管理が難しい
導入時の課題として挙げられるのが、テレワークを行う従業員の「スケジュール管理の難しさ」です。
姿が見えないため、いつ、どのように業務を行っているのかがわかりにくく、これまでの管理方法では対応が難しいと言えます。
また、テレワークで働く従業員は仕事と仕事以外の切り分けが難しく、長時間勤務になりやすいという課題もあります。長時間労働になることで、従業員のモチベーションや生産性の低下も懸念されるでしょう。
課題(2)部下とのコミュニケーション不足
テレワーク導入での最大の課題と言われるのが、部下とのコミュニケーション不足です。
テレワークでは、オフィス勤務のように顔を合わせられないため、会話するタイミングが減少してしまいます。そのため、業務上の疑問や不安をうまく伝えられない部下が増える傾向にあります。
普段は気付けるような部下の不安やちょっとした変化を、見逃してしまうこともあるでしょう。
また、テレワークでは、パソコンの画面越しや文字でのコミュニケーションが増えるため、相手の様子や表情が見えにくいという特徴があります。
十分なコミュニケーションが取れない状況では指示が明確に伝わらず、業務に支障がでてしまう可能性もあるでしょう。
課題(3)テレワークでの評価基準が定まっていない
コミュニケーション不足と同様に大きな課題として捉えられているのは、テレワークでの評価基準が定まっていないことです。
働いている様子を目で見て確認できないため、これまでの評価基準では判断しにくくなります。
また、評価基準が定まっていないことで、マネジメントする人によって評価ポイントがズレてしまう恐れもあります。
一方、テレワークを行う従業員も「テレワークでは正当な評価が受けられないのでは」という不安を感じるケースが少なくないようです。部下の業務状況を直接確認できないからこそ、適切に評価するための基準が必要となるでしょう。
テレワークマネジメントを成功させるために必要な環境整備
テレワークにおけるマネジメントを成功させるためには、テレワークに合わせた環境整備が必要です。テレワークマネジメントを成功に導く環境整備を3つご紹介します。
- コミュニケーション環境を整備する
- テレワークに対応したセキュリティ対策を行う
- 労務管理を適切に行う
(1)コミュニケーション環境を整備する
テレワークでのコミュニケーション不足を解消するために、オンラインでのコミュニケーション環境を整備することが大切です。
オンラインでのコミュニケーションツールとして、ビデオ通話ができるZoomやSkypeなどのオンライン会議システムを導入している企業が多いようです。
定期的なオンラインミーティングで使用するだけでなく、常時接続状態にすることで、リアルタイムで相談できる環境を作れます。
また、社内SNSやビジネスチャットを使った文字ベースのコミュニケーションツールの導入も有効です。
(2)テレワークに対応したセキュリティ対策を行う
自宅やサテライトオフィスなどで勤務するテレワークは、通常のオフィス勤務と比べて情報漏洩のリスクが高まります。悪意のあるソフトウェアや不正侵入に対するセキュリティ対策に取り組みましょう。
例えば、社外から社内の情報にアクセスできるようにVPNを導入するなど、テレワークで用いる端末に重要なデータを保持させない仕組みを構築するのも一つの方法です。
また、このようなハード面での対策に加えて、日頃から従業員に対して情報セキュリティに関連する教育・啓発活動を実施するとよいでしょう。
(3)労務管理を適切に行う
テレワークで勤務する従業員に対しても、「労働基準法」「最低賃金法」「労働安全衛生法」が適用されます。そのため、テレワークでの労務管理も適切に実施しましょう。
チャットツールやカレンダー機能を活用することで、テレワーク中の従業員とその上司が適切に勤務時間および進捗状況を共有できます。
「始業・終業時刻の報告」「部下の在席・離席の確認」「進捗状況の報告」など、ルールを設定するとよいでしょう。
適正な勤怠管理と併せて、労働時間に関するルールをづくりも徹底します。テレワークでも安心して働ける仕組みが、従業員のワーク・ライフ・バランス向上に繋がります。
テレワークを成功させるためのマネジメント方法
ここでは、テレワークを成功させるためのマネジメント方法を3つに分けてご紹介します。
- チームメンバーのタスクを「見える化」する
- 部下からの「報連相」の見直し
- マネジメント側からの積極的なコミュニケーション
方法(1)チームメンバーのタスクを「見える化」する
テレワークでは、部下が何をしているのか、どれだけ働いているのかが見えにくいため、メンバーのタスクを可視化して管理することが大切です。
タスク管理ツールやプロジェクト管理ツール、社内SNSなどを用いると、テレワーク環境でもメンバーの状況が見えやすく、進捗の共有が容易になります。
タスクの「見える化」は、チームメンバーの協力が必要となるため、報告するタイミングや内容が細かすぎて負担にならないように気を付けます。
タスクを「見える化」することで業務を評価する際の参考になったり、困りごとのサポートにも繋げられたりすることを理解してもらい、協力を促しましょう。
方法(2)部下からの「報連相」の見直し
テレワーク環境では、コミュニケーションの「量」や「情報量」が減ることを意識して、部下からの「報連相」の見直しを行いましょう。
コミュニケーションの量を増やすための工夫として、コミュニケーションのハードルを下げることも有効です。
チャットツールは話題によってスレッドを分けられるため、業務外の話をするためのスレッドをつくってカジュアルなコミュニケーションを取れる機会を設けましょう。
また、チームで定期的に顔を合わせる機会を設定します。毎日のオンライン朝礼やオンラインでの1on1の頻度を増やすなど、部下やチームメンバーから「報連相」がしっかり上がってくる体制の構築を心がけましょう。
方法(3)マネジメント側からの積極的なコミュニケーション
テレワーク環境においては、マネジメントする側の意識改革も必要となります。
「部下やメンバーからの報告を待つ」から「自分から情報を取りにいく」へと基本スタンスの変更も必要となるでしょう。
部下の業務の進捗状況が気になる場合は「何か困ったことはない?」と連絡するなど、マネジメント側からコンタクトします。
また、「少しでも迷ったときは報告や相談をする」と予めルールを決めておくと、部下は気兼ねなく相談できるようになるでしょう。
テレワークマネジメントに成功している事例3選
テレワークを効果的に活用している企業にはどのような特徴があるのでしょうか。テレワークマネジメントに成功している企業を3つピックアップしてご紹介します。
- テレワークの開始と終了についてルール化
- 自社が開発したICTツールを活用し、満足度が向上
- テレワーク利用者へアンケートを実施し、業務報告を簡素化
事例(1)テレワークの開始と終了についてルール化
屋内外の電気設備の設計・施工を行うK社では、工事部門を含む全従業員のテレワーク勤務を実施しています。
同社では、テレワークの開始と終了についてルール化しており、メールや電話を通じて、テレワークを行う従業員から「開始時」「休憩時」「終了時」の連絡を行います。
また、テレワーク実施日に行う仕事を事前申請で確認し、業務の遂行状況を業務日報の提出や成果の報告で確認することで、円滑にマネジメント(勤務管理)を行っているそうです。
事例(2)自社が開発したICTツールを活用し、満足度が向上
アプリケーションの企画・開発・販売などを行うP社では、同社で開発した在宅勤務のためのICTツールを使用したテレワークを実施しています。
当初は、自身で体験することで顧客への提案に生かすことを目的としていましたが、結果的に社内での業務の効率化・満足度の向上に繋がったそうです。
同社のテレワーク申請書の裏面には、テレワーク遵守事項が詳細に記載され、テレワークの目的を明確に記述することで、企業と従業員の意識の統一が図られています。
テレワークを行う従業員は、天候や交通機関、健康状態に応じて無駄な時間や移動を排除するなど自発的なスケジュール管理を任されているため、自律的な働き方に繋がっているようです。
事例(3)テレワーク利用者へアンケートを実施し、業務報告を簡素化
小売り業を営むL社では、従業員の子育てを支援する目的でテレワークを導入しました。
テレワークを普及させる工夫として、年に1回程度、テレワーク利用者に対してアンケートを実施し、利用状況の把握や意見の収集に努めています。
そして、アンケートを踏まえた改善も行っています。
例えば、当初はテレワーク利用後にフォーマットに沿った業務報告を義務付けていましたが、現在は直属の上司に報告するルールを設け、利用者が成果を出せているのであればフォーマットに沿った業務報告は不要とするなど、手続きの簡素化を図りました。
マネジメントする側、される側の負荷が軽減されたことが普及拡大に繋がっていると考えられます。
まとめ
テレワークでのマネジメントが難しいとされる理由として、「部下の勤務実態が把握しづらい」「コミュニケーション不足」などが挙げられます。
オフィス勤務と同様のマネジメントではなく、テレワークで発生しがちな課題を考慮した上で適正なマネジメントを行う必要があるでしょう。
今回の記事を参考に、自社に合ったマネジメント方法を検討してみてはいかがでしょうか。
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