ティーチングとコーチングは混同されがちな指導方法の一種ですが、その定義や目的、使用場面はそれぞれ異なります。
そのため、指導内容やシーンなど状況に合わせた使い分けが求められます。
この記事では、それぞれの概要やメリット・デメリット、効果を高めるコツについて詳しくお伝えします。
目次
ティーチングとは?意味・定義
ティーチングとは、経験豊富な人が経験の浅い人に知識やノウハウを教える手法のことを指します。
実施形式は、1対1または1対多数の講義形式でおこなわれます。
また、この指導方法は、社内だけではなく対クライアントにおいても用いられます。
たとえば、自社のノウハウや製品・サービスを通じてクライアントが課題を解決し、よりよい結果を得るよう導くこともティーチングと呼ばれます。
コーチングとは?意味・定義
コーチングとは、対話や問いかけを通じて、受け手が答えを自ら導き出せるように支援し、成長をサポートする指導法の一つです。
コーチングは基本的に1対1でおこなわれます。
適切な質問や対話により、相手に気付きを与えたり自主的な行動を促したりして、受け手の目標達成をサポートします。
一方的に答えを教えるのではなく、本人の力で「理想的な未来」を形にできるよう導く手法です。
ティーチングとコーチングの違いを解説
ビジネスにおけるティーチングとコーチングはそれぞれ特徴が異なるため、状況に合わせた使い分けが必要です。
ティーチング | コーチング | |
意味・定義 | 知識やスキルを教える技術 | 対話や問いかけによって学びを得てもらう技術 |
目的 | 問題解決 | 成長促進 |
指導方法 | 命令・指示 | 支持・支援 |
コミュニケーション方法 | 上司が部下に「教える」 | 上司が働きかけて部下の中にある答えを「引き出す」 |
使用場面 | 新入社員の育成、若手の指導など | 管理職の育成、部下のマネジメントなど |
「意味」「目的」「活用シーン」について、ティーチングとコーチングで異なる点を以下で詳しくご紹介します。
意味・定義の違い
ティーチングが、知識やノウハウを相手に伝えて問題解決するのに対し、コーチングは相手に質問を投げかけることにより学びや気付きを得てもらう指導方法です。
ティーチングは、指導者から指導を受ける側へ一方向的に教えるスタイルですが、コーチングでは対話や問いかけなど双方向でのやり取りがメインになる点も異なります。
目的の違い
ティーチングの目的は、受け手の教育や問題解決、目標達成です。
指導を受ける側の効率的な知識習得を目指します。
一方、コーチングの目的は、受け手の成長促進です。
指導者との対話や問いかけを通じて、自身の中から答えを導き出すことにあります。
新たな発想や視点に気付き、自身の成長につなげられるよう導く支援型の指導法です。
使用場面の違い
ティーチングは、明確な答えや課題解決の具体的手法がわかっている事柄において、相手の知識やスキルが乏しい場合におこなわれます。
そのため、新入社員の育成や若手の指導などに効果的とされています。
対してコーチングは、相手の成長を促したい場面でおこなわれるため、部下のマネジメントや一定の知識を有している管理職の育成にも有益と言えます。
ティーチング・コーチングに類似している用語
ティーチング・コーチングに類似している用語とその違いについてご紹介します。
- カウンセリング
- メンタリング
- コンサルティング
- トレーニング
- エンパワーメント
(1)カウンセリング
カウンセリングとは、不安や悩みを抱えている人の相談に乗り、助言や援助、指導を通じて悩みの解決を支援する対話の手法です。
「不安や悩みを抱えている人」「自分に自信がない人」「人間関係に悩んでいる人」など、克服または解決のための心理的支援がほしい人におこないます。
現状を分析し、気付きがある点ではコーチングと似ていますが、本人の悩みや不安が解消されるまで続ける点が大きく異なります。
また、ティーチングでは解決できないような問題を抱える社員に対して、カウンセラーによるカウンセリングが用いられることもあります。
(2)メンタリング
メンタリングとは、指導者(メンター)が受け手(メンティー)と対話をしながら、メンティーの成長やメンタルケアなど総合的にサポートする人材育成の一種です。
ティーチングのように一方的に解決策を教えるのではなく、対話の中からメンティーが気付きを得ることを目的としている点ではコーチングと似ていますが、メンタリングはアドバイスを与える点でコーチングとは異なります。
また、コーチングは上司と部下など、あくまで「仕事上の関係」であるのに対し、メンタリングは、メンターが人生の先輩としてメンティーの人生にまで影響を与える存在となります。
(3)コンサルティング
コンサルティングとは、専門家が事実やデータに基づいて問題や課題を洗い出し、クライアントとともに課題解決のための施策を提示・実行することです。
解決策をコンサルタントが提示して主導するため、相手に気付きを与えて答えを引き出すコーチングとはアプローチ方法が異なります。
また、提示する答えがデータに基づいた仮説や専門的な意見である点において、情報をありのまま伝えるティーチングとも考え方が違います。
(4)トレーニング
トレーニングとは、日本語では「訓練」を意味します。
できないことをできるようにするために取り入れられる指導法の一種です。
上司や先輩、先生が実際にやってみせてやり方を教えるのが主な手法です。
トレーニングは、指導者が指導される側を引っ張り上げるという意味合いが強く、コーチングやティーチングとは異なります。
(5)エンパワーメント
エンパワーメントとは、「力を与えること」を意味しており、ビジネス上では上司が部下に仕事の権限を移譲することを指します。
人材に権限を与えることで、能力開花や自律を促すきっかけとなるため人材育成に用いられる手法の一つです。
一般的に、ティーチングやコーチングをおこなって部下のスキルアップを促進した後に実践します。
ティーチング・コーチングの実施メリット・デメリット
ティーチングやコーチングを実施するメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれご紹介します。
ティーチングのメリット・デメリット
ティーチングには、短期間で知識やスキルを習得できる、一度に大勢を指導できるといったメリットがあります。
業務に必要な情報やスキルを端的に教えるため短期間での人材育成が期待できます。
また、ティーチングは1対多の講義形式にも対応しており、複数人を対象とした指導が一度に効率的におこなえる点もメリットです。
ティーチングでは、相手に答えを伝えるのが目的の指導法のため、スピーディーかつ的確な人材育成につながります。
メリットがある一方で、ティーチングには、受ける側の主体性が育ちにくい、指導者のスキル以上のものは与えられないといったデメリットがあります。
相手に情報を伝えるという一方向的なコミュニケーションがメインの指導法のため、受ける側はどうしても受動的になってしまいがちです。
主体的かつ自発的に自身の頭で考える習慣が身に付きにくいことから、受ける側のモチベーションを下げてしまう可能性もあるため注意が必要です。
コーチングのメリット・デメリット
コーチングの実施により、部下の自律を促せるメリットがあります。
コーチングは、部下に気付きを与えてポテンシャルを引き出すため、自身の頭で物事を考え判断する力が身に付きます。
自身の現状と向き合い、課題解決や目標達成に向けて自発的に取り組むことで、モチベーションの向上にもつながります。
また、コーチングを経験することで、セルフ・コーチングが身に付くのもメリットと言えます。
セルフ・コーチングは現状把握から目標設定及び行動までを自身でおこなう手法です。
PDCAサイクルを速く回せるようになり、成長を促せます。
一方、コーチングは、効果が出るまでに時間がかかる点がデメリットとして挙げられます。
受ける側のスキルや状況に合わせた丁寧なコミュニケーションが求められるため、中長期的な視点で育成に取り組む必要があります。
ティーチング・コーチングの効果を高めるには?
ここでは、ティーチング・コーチングをより効果的なものにするためのコツをご紹介します。
ティーチングのコツ
ティーチングのコツは以下の3つです。
情報はできるだけ言語化する
ティーチングでは、伝えたい情報はできるだけ言語化するのがポイントです。
限られた期間で的確に効率よく指導するためには、抽象的な表現は避けるのが肝要。
相手がイメージしやすくわかりやすい表現で伝えることを心掛けましょう。
指導の際は、相手が理解できているかどうか、都度確認を取ることも忘れないでください。
具体例を挙げる
指導する際に、具体例を挙げて手本を示すこともティーチングの効果を高めてくれます。
座学形式で情報を伝えるだけでなく、オリエンテーションやロールプレイングなどのトレーニングを活用して、現場に即した知識やスキルの取得を目指しましょう。
即戦力の育成につながります。
定期的にテストをおこなう
ティーチングでは、教えたことがしっかり理解できているかどうか定期的にテストをおこなって確認しましょう。
振り返る機会を設けることで、理解できていない部分を繰り返し復習できます。
また、理解度の把握によって、指導者側も今後の指導計画に見通しが持ちやすくなるため、効率よくかつ計画的に進められます。
コーチングのコツ
コーチングのコツを3つ紹介します。
傾聴し自主性を尊重する
傾聴し、相手の自主性を尊重することもコーチングの効果を高めるポイントです。
コーチングは、自発的に考えさせて答えを引き出すことを支援する指導法です。
相手の意見に耳を傾けて理解した上で、正解を教えるのではなく方向性を示す必要があります。
相手の話を最後まで聴くことを心掛けましょう。
目標は期間ごとに区切って設定する
コーチングの効果を高めるためには、目標達成に向けて取り組むべき行動の目標を期間ごとに区切って設定しましょう。
「短期間」「中期間」「長期間」に分け、それぞれ内容を決定します。
段階的に成長できると共に、期限を意識することでメリハリのある取り組みができます。
指導は時間をかけて丁寧におこなう
コーチングは、効果が出るまでに時間がかかる指導法のため、時間をかけて丁寧におこないます。
コーチング中に相手が行き詰まり、なかなか答えが引き出せないこともあるでしょう。
そのような場合でも、安易にアドバイスするのではなく、根気強く質問し問いかけるのが肝要です。
ティーチング・コーチングの具体的なやり方【シーン別】
ティーチングとコーチングについて、具体的なやり方をそれぞれシーン別にご紹介します。
ティーチングのやり方と具体例
ティーチングは、主に短期間で成果を出したいシーンに適しています。
ティーチングは、新入社員や中途入社社員への研修など対象者のスキルや経験が乏しい場合に有効です。
具体的には、ビジネスマナーやパソコンスキルの習得など、伝える情報や答えが明確に定まっているシーンでの活用に適しています。
短時間で必要な情報を相手に伝達できるティーチングは、緊急性が高い業務の対応にも有効です。
具体的には、イレギュラーなエラーやトラブル、クレーム対応などのシーンでは緊急的な対応が求められるため、ティーチングが適しています。
コーチングのやり方と具体例
コーチングは、時間をかけて社員の成長を促したいシーンに効果的です。
コーチングは、ある程度の経験やスキルを有する中堅層や管理職の育成に有効です。
具体的には、管理職者のマネジメントスキル、チームビルディング能力の向上や中堅層の生産性向上、顧客獲得といった、人によってやり方がさまざまで明確な答えのない課題に取り組む際に適しています。
コーチングは、1対1で時間をかけて取り組むため、重要な内容を教える場合に効果を発揮します。
具体的には、将来を見据えたキャリア形成や管理するチームのマネジメント方法の改善など、社員の置かれている状況によってアプローチ方法や答えが異なる内容を指導する際に有効です。
コーチングのスキルアップにおすすめの資格
指導者としてコーチングスキルを身に付けたい場合、資格取得もおすすめです。
国家資格はありませんが、国内外に資格が取れる機関が存在しています。
国際コーチング連盟(ICF)は、1995年にアメリカで設立されたコーチング業界最大級のコーチング機関です。
ICFでは、プログラムを3つのレベルに分けて認定・承認しており、3つの資格が取得できます。
一般財団法人生涯学習開発財団の認定コーチ資格は、日本で初めてのコーチ認定制度です。
コーチングプログラムを履修し、実践経験を積んだ後に試験を受けて取得できます。
「認定コーチ」「認定プロフェッショナルコーチ」「認定マスターコーチ」の3種類の資格があります。
コーチング研修ならカケハシ スカイソリューションズ
採用・育成・定着を支援するさまざまなソリューションをワンストップで提供する、カケハシ スカイソリューションズでは、管理職を対象としたコーチング研修を提供しています。
組織と部下の自立を育むためにコーチングの原理原則を習得した上で、日常の業務やマネジメントに活かせるようロールプレイングなど、実践的なトレーニングを取り入れた研修内容となっています。
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まとめ
ティーチングは、明確な答えを与えて問題解決を図るのが目的の指導方法。
コーチングは、対話によって「気付き」を与え、相手が自身で答えを導き出すことで成長を促すのが目的のコミュニケーションスキルです。
ティーチングとコーチングでは有効な場面がそれぞれ異なるため、使い分けることがポイント。
この記事でお伝えした、特徴の違いやメリット・デメリットを参考に、状況に応じて両者を使い分けてより効果的な人材育成を目指しましょう。
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