コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、従来は集合型研修で実施していた新人研修を、オンライン研修に移行する企業が増えています。
一社会人としての常識やマナーがともなわない状態でのオンライン研修に、不安を感じている人事担当者も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、新入社員を対象としたオンライン研修での効果的な実施方法や注意点などについて解説していきます。
目次
新入社員におけるオンライン研修の現状とは?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、新人育成にも影響を与えているようです。
立教大学経営学部・中原淳研究室が実施した調査によると、今春の新入社員教育はどのように変わっていくのかという問いに対して、「新入社員教育の変更している・変更を計画している」との回答が61.7%で、半数以上を占めています。
いわゆる「3つの密」を避けるために試みられているのが「場所の分散」であり、そのための手段としてテレビ会議システムを用いた「オンライン研修」の実施・充実を検討している企業が多いようです。
また、自社の新入社員教育の計画において「オンデマンド教育」や「テレビカンファレンス」など、デジタルメディアの活用を計画しているとの回答が46.3%という調査結果もあり、今後はよりオンライン研修が普及すると考えられるでしょう。
(参考:立教大学経営学部 中原淳研究室『コロナウィルス感染拡大によって「今春の新入社員教育」はどのように変わっていくのか?』)
オンラインで新人研修を実施するメリット・デメリット
オンラインでの新人研修を導入する際は、メリット・デメリットを考慮した上で実施するとよいでしょう。新人研修の場合に考えられるメリット・デメリットをご紹介します。
メリット:参加者の姿勢が主体的になる
集合型研修は、受講者が大勢いるため受け身になりがちですが、オンライン研修は、受講者が主体的に参加するようになるというメリットがあります。
オンライン研修では、モニター越しとはいえ、受講者全員の顔が画面に映り、講師との距離感も思いのほか近く感じられます。自分の顔もモニターに表示されるため、受講者は程よい緊張感を保てるでしょう。
「チャットでの質疑応答」や「挙手ボタンでのリアクション」などインタラクティブな運用を意識できれば、集中力をキープでき、学びの量と質を高めることに繋がります。
デメリット:「同期」の意識が希薄になる
オンラインで新人研修を実施するデメリットとして、集合型研修に比べて同期の仲間意識の醸成がしづらいと考えられます。
一部屋に集まって研修を受けると、お互いの人となりがわかったり、チームワークが自然と形成されたりと同期感の創出に繋がりますが、オンラインとなると相互理解を深めるための時間や方法を得にくいという課題があります。
研修以外で、同期が集まる機会を積極的に設けるなどの工夫が必要となるでしょう。
オンライン新人研修で集中力をキープさせるための工夫
新人研修をオンラインで実施する場合、いかに集中力を維持させるかがポイントになります。集中力をキープさせるための工夫を3つご紹介します。
研修の流れを事前に共有する
受講者の集中力をキープするために大切なのは、研修の流れを事前に共有することです。
当日はどのような流れで進み、どのような内容を学ぶのかなど、大体のスケジュール感がわかっているだけでも受講者は気持ちの準備ができるでしょう。
また、事前に研修内容を把握することで、「研修で何を学び、どのように実務に落とし込むのか」という到達目標を設定した上で受講できるという効果も期待できます。
ブレイクする時間を設ける
受講者が集中して研修を受けられるように、講義時間は50~60分とし、10分程度のブレイクタイムを適宜設けましょう。
オンライン研修では、長時間モニターを見続けたり、ヘッドホンをし続けたりするため、目や耳に負担がかかります。休憩後、再開する時に挨拶するなど、全員で一斉に声を出すだけでもリフレッシュになります。
集中する時とリラックスする時と緩急をつけることで、長時間の研修でも集中を切らさずに講義を進められるでしょう。
グループセッションする時間を設ける
「オンライン研修はワークに向いていない」と懸念する声も聞かれますが、むしろオンラインだからこその強みを活かすことで、インタラクティブな研修を実施できます。
集中力を保つために有効なのが、グループセッションの時間と言われています。
Web会議ツールによっては少人数のグループをつくれる機能が備わっているものもあり、この機能を利用するとペアワークやグループワークが設定しやすく、受講者同士がコミュニケーションを取りながら課題に取り組めるでしょう。
名刺交換や電話応対など動きをともなうロールプレイングにも活用できます。
新入社員にオンライン研修を実施する際の5つの注意点
新入社員にオンライン研修を実施する際は、事前準備から実施後のフォローまで、押さえておきたい注意点が5つあります。それぞれのポイントを詳しく解説します。
- オンライン研修に必要な環境を整備する
- 前日までに事前準備をおこなう
- 新人研修は原則「顔出し受講」、表示名は本名で
- 受講者に事前に注意点を共有する
- 研修後にフォローを実施する
(1)オンライン研修に必要な環境を整備する
オンライン研修を実施するにあたって懸念されるのが、「実施するためには何を準備すればよいか」ということです。必要なツールは主に4つあります。
- Web会議システム
- USBカメラ
- マイク付きヘッドホン
- 印刷テキスト
まず1つ目は、Web会議システムがインストールされ、かつ推奨環境に適しているパソコンです。ネットワーク環境やパソコンのOS環境によっては、途中で回線が切れたり、一部の機能が制限されたりして、研修を中断せざるを得ない状況も考えられるため注意が必要です。
2つ目は、パソコンにカメラが付いていない場合はUSBカメラを用意しましょう。オンライン研修では、受講者同士の顔が見えることで臨場感が出ます。
3つ目は、マイク付きヘッドホンです。パソコンのスピーカーを通すと音が割れたり、スピーカーから出た音を拾ってハウリングの原因になります。マイク付きヘッドホンを利用すると講師の音声を聞きやすく、マイクがあれば受講者の積極的な発言にも繋がります。
4つ目は、印刷テキストです。手元にテキストがあるとメモを取りやすく、講師の話に集中できると考えられます。
(2)前日までに事前準備をおこなう
当日はスムーズに研修に入れるよう、「機材の動作確認」や「ネットワークへの接続テスト」など、事前準備は前日までに済ませておきましょう。
また、紙の資料やテキストを使用する場合は、各拠点に確実に届くように手配します。受講者本人がプリントする必要がある場合は、事前に用意するよう伝えておきましょう。
新人研修ということもあり、オンライン受講に慣れない社員もいることを想定し、オンライン研修のためのマニュアルを作成するのもよいかもしれません。
(3)新人研修は原則「顔出し受講」、表示名は本名で
新入社員を対象としたオンライン研修では、原則「顔出し受講」とするのが望ましいです。
音声とチャットのみの受講も可能ですが、顔出しを原則とすることで受講者側の緊張感を保ち、聞き流しを防止する効果があります。
また、受講者同士の顔が見えることでグループディスカッションに臨場感が生まれ、会話も弾むようです。また、お互い顔なじみでないことを考慮し、Web会議ツールで表示される名前を本名に設定するよう事前に伝えましょう。
(4)受講者に事前に注意点を共有する
ビジネスマナーが身に付いていない新入社員を対象としている場合は、事前に研修に参加する上での注意点を共有しましょう。
基本事項として、「当日の服装」「用意するもの」「何分前にアクセスするか」「マイクのミュート、カメラをオンにする」などが挙げられます。
研修が始まってから焦らないように、背景に余計なものが映り込んでいないかなど、セッティングにも注意を促しましょう。また、受講者にはあらかじめ「研修の目的」を伝え、実務を想定した学びとなるよう意識させることが大切です。
(5)研修後にフォローを実施する
オンライン研修後は、受講者へのフォローも欠かさずに実施しましょう。
受講後はレポートを提出させたり、後日に改めてフィードバックの機会を設けたり、研修内容を実務に落とし込めるようにフォローすることが重要です。
新人を対象としたオンライン研修を成功させるための方法とは?
新人を対象としたオンライン研修を成功させるために、人事担当者はどのようなことを意識すればよいのでしょうか。
教育研修コンサルタントに、新人研修だからこその注意点や効果的な研修内容、到達目標の設定方法について聞いてみました。
教育研修事業部 ゼネラルマネジャー
新人を対象としたオンライン研修を実施する際に人事担当者が気をつけることとは?
オンライン研修は、臨む姿勢によって得られる学びの量と質に差が出ます。
オンライン研修を実施する前に、一社会人としての常識や自覚、研修を受けるにあたっての姿勢や態度をまずはしっかりと教えてあげることから始めましょう。
若い世代ではオンラインに慣れている人が多いので、慣れによる気の緩みが生じる場合があります。
研修に集中できる環境を整えることや、余裕を持ってパソコンの前に座り準備することなど、学生気分のままで参加させない工夫が必要ですね。
オンラインでの新人研修を取り入れている企業の特徴は?
新入社員に対して、いち早く戦力となるように育てたいと考えている企業ではないかと思います。
出社がしづらい状況の中で、これまで通りの研修が受けられないことを「ハンデ」と思わせないために、最善の方法を模索し、実践しているのだと感じています。
コロナウイルス感染症の影響で社員教育をどうすればよいか迷っている企業より、今までと同様の教育を受けさせたいと考えている企業の方が多い印象ですね。
ですから、新入社員の方も今の状況で実施されているオンライン研修をポジティブに受け止めて、受講してほしいと思います。
オンラインで新人研修を実施する場合、効果的な研修内容とは?
新人研修では、企業について理解を深めること、基本的なビジネスマナーを身に付けることに加えて、実務を見据えた研修内容を取り入れるのが望ましいです。
実務に活かせる研修内容は、社会人の基礎である「PDCAサイクル」の理解や、上司とのコミュニケーションの質を高めるための「報連相」ロールプレイング、業務における「時間の使い方」ワークなどが効果的でしょう。
報連相に関して具体的に言うと、仕事を振られたときに「仕事の目的」や「やるべきこと」を自分から聞けるスキルを持っていることが大切です。
そのため、ロールプレイングで先輩社員役と新入社員役に分かれて、「質問の仕方」や「目的・目標の見極め方」を身に付けられるように指導するとよいでしょう。
また、業務における時間の使い方として「質問するタイミング」や「質問する時間」など、相手の状況も判断して動けるスキルを身に付けることを目標に掲げると伝わりやすいですね。
このようなことも、すべてオンライン研修で取り入れられます。
オンラインでの新人研修の到達目標設定の方法とは?
新人研修を受けたからといっていきなり仕事ができるわけではないので、実務に向かう姿勢を意識させたり、実務に活かすために先導したり、研修前後にフォローが必要となります。
オンライン研修だと、一人ひとりの研修に向かう姿勢や態度をずっと観察するのは難しいです。ですから、現場に入ってからの先輩社員や上司からのフォローが欠かせません。
新入社員自身もオンラインで学んだことを実践し、成長している姿を見せられるように努力しなければならないでしょう。
特にオフィスで接する機会が減っている現在においては、新入社員が頑張りを見せられるチャンスが減っていると言えます。
人事担当者は、新人研修で、企業が新入社員に求めていることや到達目標を整理し、しっかりと歩みだせるようサポートしましょう。
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まとめ
新入社員を対象としたオンライン研修を実施する際は、事前に「研修の目的」を伝え、「実務で活かす」ことを意識させるのが重要です。
また、事前に研修の流れを共有したり、ブレイクタイムを適宜設けてリフレッシュしたりと、集中して講義を受けられる環境に配慮しましょう。
オンラインにおいても効果的な新人研修となるように、今回の記事を参考にしてみてください。
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