内定辞退防止策の一つとして、多くの企業で導入されている内定者研修。
どのような時期に、どのような内容を実施すればよいのか、設計段階で課題を感じている担当者もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、内定者研修の目的や研修のタイプ、設計フローのポイントなどについてご紹介します。
目次
内定者研修の目的とは?
内定者研修の主な目的は、「内定者の不安や悩みを解消する」「内定辞退を防止する」「スキルを身に付け、即戦力化を図る」の3つです。
近年の新卒採用は売り手市場といわれており、2〜3社から内定をもらっている学生も多いです。
企業から内定をもらっても、「さらに自分に合う企業があるのではないか」という不安や悩みが膨らんで、内定を辞退してしまうケースも少なくありません。
このような背景もあり、内定者研修は内定者の不安を払拭し、この企業で働きたいというモチベーションを高めるためにおこないます。
また、内定者研修を通して早めに基礎的なビジネススキルを習得することで、入社後の即戦力化も期待できます。
内定者研修の導入メリット
内定者研修の導入には、どのようなメリットがあるのでしょうか。主な3つのメリットを以下でご紹介します。
必要なスキルの習得
内定者研修の実施により、入社後の業務がスムーズに進められるメリットが挙げられます。
入社前にOAスキルやビジネスマナーなど業務上必要となるスキルを習得してもらうことで、入社後に戦力として早期活躍が期待できます。
また、業務スキルだけでなく「社会人」としての自覚を身につけられるなど、学生のマインドセットにも効果的です。
自立して働くためのマインドを構築し、自分が目指すビジネスパーソン像を明確化することで、仕事に対するモチベーションを高めます。
内定辞退・早期退職の防止
内定者研修は、内定辞退や早期退職の防止に効果的です。
内定期間中に「本当にこの企業でよかったのか」と不安が募って内定を辞退するケースがあります。
内定者研修を通じて定期的にコミュニケーションを取れる環境を整えることで、自分が実際に会社で働く姿をイメージできるため、不安解消につながります。
また、事前に業務に必要なスキルを習得しておくことで、早期退職も防ぐことができます。
慣れない環境ですべてを習得するのは新入社員にとっても負担になりやすく、「業務についていけない」と早期退職の可能性も高まります。
入社後の早い段階で活躍できる環境を整えておくことで、「会社に貢献できている」と感じてモチベーションを高めてくれるため早期退職の防止にも効果的です。
人間関係の構築
内定者研修を実施し、同期や先輩との人間関係を構築することで入社後の不安軽減につながります。
内定者は、さまざまな不安を抱えており、その中の一つに人間関係も含まれています。
入社前の研修を通じて同期や先輩と交流を持てるため、どのような人がいるのかが分かり安心できるだけでなく、互いに刺激し合えるのがメリットです。
知っている同期や先輩がいれば、入社後に相談もしやすく悩みや不安の解消にも効果的と言えます。
内定者研修の最終目標
内定者研修の最終目標は企業によって異なりますが、以下の3つが主な目標として挙げられます。
社会人の基本スキルを習得する
内定者研修は、最終的に社会人の基本スキルの習得を目指して実施します。
ビジネスマナーやOAスキルなど、社会人としての必須スキルを内定者のうちに身につけることで、入社後の即戦力化を図ります。
入社後に早期活躍が期待できるため、会社に貢献できている実感を持てるなどモチベーション維持にも効果的です。
入社後の配属先で必要なスキルを優先的に研修に組み込むなど、研修内容は慎重に検討しましょう。
チームワークを強化する(チームビルディング)
チームワークの強化も、内定者研修における目標の一つです。
研修を通じてチームワークを体感的に身につけることで、社会人として不可欠な基礎力を構築できます。
同僚や先輩との円滑なコミュニケーションの中で、互いに協力し合える体制づくりがおこなえます。
社会人としての意識を持つ
社会人としての意識を持つことも、内定者研修の最終目標です。
これまでは学校で学んでいた学生が、給料をもらって働く社会人としてのマインド構築を目指します。
「どのような社会人になりたいか」を具体的にイメージしてもらうことも大切。
社会人になるための意識転換がしやすくなり、仕事に対するモチベーションを高めてくれます。
入社後に指導する上司やOJT担当者の負担軽減にもつながります。
今の内定者の特徴
社会の変化や育った環境などによって、内定者にも特徴や傾向があります。
ここでは、近年一般的に言われている内定者の傾向についてご紹介します。
社会人としてのマインドセットが不十分
ビジネスでは基礎的な知識やスキルだけでなく、社会人としてあるべき姿がどういうものなのか、人間としての成長に欠かせないマインドセットの形成が不可欠と言えます。
社会人は常に周りの目を意識する必要がありますが、最近の内定者はこれが不足している人が多い傾向にあります。
勤務中であっても上司や人の目がない所では気が緩んでしまうなど、自己を律する姿勢を保てない場合があります。
真面目で素直
理解する能力が比較的高く、真面目で素直な性格の内定者が多い傾向です。
業務においても、方法がわかっていれば自信を持って遂行できる反面、知らないことや未経験のことに対しては足踏みしてしまうこともあります。
チャレンジしようという意識が低く、行動するよりも先に正解を知りたがる人が多いと言えます。
失敗を恐れる
最近の内定者はチャレンジ精神に乏しく、リーダーシップの発揮や能動的な行動などが苦手で失敗を恐れる人が多い傾向にあります。
初めてのことや知らないことなどを前にすると不安が先立ち、「失敗するくらいなら挑戦しない」というネガティブな選択肢を選ぶケースがあり、よくも悪くも注目されることを嫌う特徴があります。
内定者の抱える不安や悩みとは?
株式会社ラーニングエージェンシーが2023年度入社予定の内定者を対象に実施した「内定者意識調査」によると8割を超える内定者が「心配・不安を抱えている」と回答しています。
不安の内容としては「自分の能力で仕事についていけるか」が68.5%で1位、「しっかりと成果を出せるか」が56.5%で2位という結果に。
逆に、入社に向けて期待する内容については、「色々と学び成長できる」が71.7%で1位、「新しい経験ができる」が67.1%で2位となっており、自己成長や自身のスキル獲得に対する関心の高さが伺えます。
(参考:株式会社ラーニングエージェンシー「内定者意識調査」)
また、最近の内定者は対面でのフォローを望む傾向も強くなっています。
株式会社マイナビの実施した「2023年卒内定者意識調査」によると2023年卒では「内々定式」「内定者懇親会」を「対面で実施してほしい」との回答がいずれも5割を超え、2022年卒と比較して10%以上増加しています。
採用活動のオンライン化が進み、先輩社員や同期との関わりが希薄になったことを受け、関係性を構築できる機会の提供が求められています。
(参考:株式会社マイナビ「2023年卒内定者意識調査」)
内定者が習得するべきスキル
内定者が習得すべきスキルには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、一般的に内定者に足りていないと言われるスキルや課題を4つご紹介します。
ビジネスマナー
ビジネスマナーは社会人として最低限必要なスキルの一つです。
ビジネスマナーを知識として持っていても、それを実践できる内定者は少ない傾向があります。
一人前のビジネスパーソンになるためには、他者から見た自分を意識して行動できるよう基礎的なビジネスマナーの習得が不可欠と言えます。
ライティングスキル(文章力)
日報やメール、プレゼン資料、顧客への説明など、業務をおこなう上で不可欠なのがライティングスキルです。
ビジネスにおいては「早く正確に伝わる文章」が求められており、近年多くの企業が新入社員の教育でライティングスキルを重要視している傾向にあります。
内定者は、短い文章で相手に簡潔に伝えられるよう、ビジネス文書の基本を習得しておくと安心です。
伝えるスキル
学生のうちは人前で話したり説明したりする機会も少なく、苦手に感じる人が多い傾向です。
しかし社会人になると、社内外問わず人前でプレゼンテーションする機会が増え、わかりやすく伝えるスキルが求められます。
自分の言いたいことを、相手に言葉で伝える話術を身につける必要があります。
OAスキル
OAスキルは、ExcelやPowerPointなどのPC操作スキルを指し、社会人として業務をおこなうにあたって土台となります。
データの集計やプレゼンテーション資料の作成など基本的な作業に不可欠で、さまざまな業務に活かせる汎用性が高いスキルでもあります。
そのため、内定者のうちに学んでおくと即戦力として期待できます。
内定者研修の実施方法のタイプ
企業ではどのような方法で内定者研修を実施しているのでしょうか。内定者を効果的に育成する方法を3つのタイプに分けてご紹介します。
効率的にスキルを習得する「eラーニング」
内定者研修の一つの方法として、基本的なビジネススキルを効率的に習得するために「eラーニング」が活用されています。
eラーニングは、「いつでもどこでも学習できる」「何度も復習できる」などがメリットです。
入社前にeラーニングでビジネススキルを身に付けておくことで、新人研修の中でアウトプットできるといった効果も期待できます。
eラーニングで学習しやすいテーマとしては、WordやExcelなどの「OAスキル」「ビジネスマナー」「コンプライアンス」などが挙げられます。
チームワークを強化する「ビジネスゲーム研修」
内定者同士の横のつながりを強化する場合、体感的にチームワークを強化できるような研修が効果的です。
単なる座学ではなくビジネスゲーム形式にすると、体験を通してチームワークや仕事の進め方について気づきを得やすくなります。
ビジネスゲーム研修では、「コミュニケーションスキル」「主体性の発揮」「PDCAを回す」などの重要性を体感できるのもメリットです。
学生から社会人への意識改革を促す「公開講座」や「講師派遣型研修」
学生から社会人への意識改革を促し、自律して働くためのマインドを構築する研修として「公開講座」や「講師派遣型研修」が有効です。
公開講座では、内定者を一度に同じ場所に集めるのが難しい場合でも自由に日程を選べることなどがメリットです。
講師派遣型研修では、内定者が一同に集まることで横のつながりをつくりやすくなるなどの効果が期待できます。
研修では「学生と社会人との違い」「企業の常識」などについて学びます。
学生自身が目指すビジネスパーソン像をイメージすることで、組織への帰属意識やモチベーション向上につながります。
内定者研修のプログラム例
内定者研修のプログラム内容は、実際の業務内容ではなく、社会人としての心構えや基本的なビジネススキルなどを優先して研修するのが一般的です。
具体的には、以下のような研修プログラムが挙げられます。
- ビジネススキル(ビジネスマナー、パソコンスキル、ビジネス文書スキルなど)
- 社会人としてのマインドセット
- コミュニケーションスキルの取得
- 会社紹介や仕事内容の説明
- その他業務に必要なスキル(簿記、語学など)
その他、企業により必要なスキルは異なりますが、企業が入社前に最低限習得してほしいスキルを内定者研修で実施するケースがほとんどです。
内定者研修の実施時期と頻度
内定式を10月1日におこなう企業が多いため、内定者研修は10月以降~翌年3月の期間で実施するのが一般的です。
場合によっては、内定式より前に研修をおこなうケースもあるなどスケジュールは企業によってさまざまですが、学業の妨げにならないように決めていくことが重要です。
中には、内定式終了後に続けて研修をおこなう企業もあります。
研修をおこなう頻度は少なすぎても内定者が不安に感じるため、月に1回程度の実施が好ましいですが、2、3ヶ月に1回程度でも効果はあります。
遠方に住んでいるなど、リアルでの対面が難しい場合はオンラインでの実施をおすすめします。
研修内容も、1日で完結するものから数日かけて実施するものまで、ボリュームもさまざまです。
定期的に会社で実務を体験してもらう就労体験(インターンシップ)などを実施する企業もあります。
学生の負担にならないよう、冬休みや春休みなど長期休暇を活用しながら適切なスケジュールで研修を実施しましょう。
内定者研修の設計フローのポイント
効果的な内定者研修を設計するために、特に押さえておきたい3つのフローを解説します。
研修の目的とゴールを明確にする
内定者研修の設計フローとして不可欠なのが、研修の目的とゴールを明確にすることです。
「何のために内定者研修をおこなうのか」「内定者研修のゴールは何か」について、入社後に内定者がどのように活躍してほしいのかを踏まえて設定しましょう。
また、現場で求められるスキルと研修内容にギャップが生じないよう、現場担当者の声を反映して研修を設計するのもポイントです。
内定者の特性・スキルを把握する
内定者の特性やスキルを見える化することで、より効果的な内定者研修を実施できます。
まずは内定者が「どのようなキャリア志向を持っているか」「何に苦手意識を持っているか」などを把握しましょう。
続いて、内定者は「すでにどのようなスキルを身に付けているか」「何が得意・不得意か」などについてみていきます。
特に内定者が苦手意識を持っているスキルに関して、入社前にフォローをおこなうことで不安の解消につながります。
内定者研修のスケジュールを設定する
前述のとおり、内定式は10月1日におこなわれるため、内定者研修は、内定式前の8月から4月の入社前にかけて実施するのが一般的です。
スケジュールを設定する際には、学業に支障が出ないよう配慮が必要です。
学生の中には、内定者研修に多くの時間を割けない人もいるかもしれません。
冬休みや春休みの長期休暇を活用したり、eラーニングやオンライン研修など時間や場所の制約を受けない実施方法を取り入れたりする工夫が求められます。
内定者研修は外部に依頼するのがおすすめ?
内定者研修は、内定辞退や早期退職を防ぎ、社会人としてのマインドセットができる重要な役割を担っています。
そのため、内定者研修を外部のサービス会社に依頼して、その道のプロに任せることも可能です。
会社紹介や仕事紹介のような内容の研修は社内でおこなうこともできますが、限られた期間内で内定者フォローをしながら即戦力化を図りたい場合などは、外部講師による研修をおすすめします。
社内でリソースを割く必要もなく、講師陣の負担軽減にもつながります。
研修内容に合わせて外部サービスを活用することで、効果的かつ効率的に内定者のレベルアップが実現できます。
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まとめ
内定者研修は、「内定者の不安解消」「内定辞退の防止」「即戦力化」といった目的のもとおこなわれます。
実施するにあたって、研修の目的とゴールを明確にし、内定者の特性やスキルを把握したうえで設計することが大切です。
今回の記事を参考に、より効果的な内定者研修となるよう見直しを図ってみてはいかがでしょうか。
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