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目標管理(MBO)とは?具体例やメリット・デメリット、実施方法などを徹底解説

目標管理(MBO)とは、社員自身が目標を設定し、目標到達までを管理すること。
社員の成長や組織の利益につながるとして、近年注目を集めているマネジメント手法です。

目標管理を効果的におこなうためには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。

本記事では、目標管理の考え方や具体例、メリットやデメリットを紹介します。
目標管理を進める上で押さえておきたいポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目標管理(MBO)とは?

目標管理(MBO)とは、社員自らが会社の利益に結びつく目標を掲げ、目標到達までの道のりを管理するマネジメント手法のこと。

MBOとは、Management by Objectivesの略称で、アメリカの経営学者である、ピーター・ドラッカーが提唱したマネジメントの概念です。

目標到達までの目標の設定や管理を会社や上司ではなく、社員自らがおこなう特徴があります。

目標管理(MBO)の考え方

目標管理では、社員が主体的に目標到達までの道筋やアクションを考えます。

社員は具体的な行動が取れるようになるため、パフォーマンスやモチベーション向上のほか、プロジェクトの成功や企業の生産性向上などにつながるというのが目標管理の考え方です。

目標管理では、社員自身が設定した目標の達成度合いに応じて仕事を評価をします。

目標管理(MBO)の具体例

目標管理では、第三者が評価しやすいよう、具体的な目標を立てることがポイントとなります。

具体的な数値目標が示しにくい事務職の場合と、示しやすい営業職の場合とに分けて、目標設定の具体例をご紹介します。

職種 目標設定の具体例
事務職 ・上期の最終月には業務上のミスを〇%削減する
・〇月までにマニュアルを整備し、〇月には運用を開始する
営業職 ・来月までに〇〇の成約率を20%から30%まで向上させる
・年度末までに新規顧客を〇件獲得し、売上〇〇円を達成する

目標管理(MBO)と人事評価制度との関係性

人事評価制度とは、社員の働きやスキルなどを評価し、報酬や等級などに反映する制度のことです。

適正な人事評価に役立つ仕組みですが、目標管理と人事評価との結びつきはありません。

日本において目標管理が広まったのは、バブル崩壊後の1990年代後半に「目標管理イコール人事評価」という誤った認識が広まったことにあります。

仕事の成果を評価基準とする成果主義が取り入れられ、成果主義導入の文脈で目標管理が採用されたことによるものですが、ドラッカーが提唱した目標管理は人事評価制度ではなく、あくまでもマネジメントの手法です。

目標管理(MBO)とOKR・KPIの違い

目標管理(MBO)と類似しているマネジメント手法に「OKR」や「KPI」があります。

これらは厳密にいうと「実施の目的」や「目標の共有範囲」、「目標達成度の設定」において違いがあります。

OKRとは「Objectives and Key Result」の略称で、「目標と成果指標」を意味する言葉です。

OKRの目的は、組織と個人で目標を共通化させ、チームや個人のパフォーマンスの向上を図ることです。
目標管理(MBO)は組織への貢献度を評価し人事評価に反映しますが、OKRは人事評価に反映しないのが一般的です。

また、OKRは基本的に、目標の共有範囲は組織の全社員ですが、目標管理(MBO)の場合は上司と部下になります。

目標達成度の設定も、OKRはあえて難易度の高い目標を設定するため達成度を60%〜70%程度としますが、目標管理(MBO)は達成が可能な目標を設定するのが基本であるため、達成度は100%にします。

一方、KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、直訳すると「重要業績評価指標」です。

KPIは、「重要目標達成指標」を達成するまでの過程が適切であるかを知ることが目的です。

KPIの目標共有範囲は、チームやプロジェクトのメンバーです。
また、プロジェクトの達成度は、プロジェクトごとに達成すべき指標を決定します。

OKRと目標管理(MBO)は「マネジメント手法」ですが、KPIは最終的なゴールに辿り着くまでに適切なプロセスを踏んだかを判断するための「指標」です。

目標管理(MBO)・OKR・KPIの比較表

目標管理(MBO)とOKR、KPIの「目的」「目標の共有範囲」「目標達成度の設定」について、以下の表にまとめました。

  目標管理(MBO) OKR KPI
目的 個人のモチベーション向上・組織の利益 チームパフォーマンスの向上・組織の生産性向上 目標達成ためのプロセスが適切かどうかの確認
目標の共有範囲 上司と部下 全社員 チームやプロジェクト内
目標達成度の設定 100% 60%~70%程度 各プロジェクトで達成すべき中間指標を決める

目標管理(MBO)のメリット

では、企業で目標管理を導入すると、どのような効果があるのでしょうか。
導入のメリットを見ていきましょう。

主体性向上につながる

目標管理では、社員自らが目標を設定します。

目標達成に向けて自身がすべきことや足りないことを考えながら行動するようになるため、社員の主体性向上につながります。
その結果、企業の生産性向上も期待できます。

また、目標設定の段階で会社の方針と社員自身の方向性をすり合わせるため、経営理念や経営戦略の理解が深まることもメリットです。

社員からの納得を得やすい

達成すべき目標や期限を明確に設定する目標管理は、その目標の達成度合いや進捗について数字を基に人事評価をおこないます。
そのため、評価が客観的で透明性の高いものとなります。

成果指標となる数値を社員自らが設定しているため、自身に対する評価について社員から納得感を得やすくなります。

自己管理スキルが向上する

目標管理は、上司からの命令や指示ではなく社員自らが目標を決める、自己統制に基づくマネジメント手法です。

そのため、自己管理スキルが向上することもメリットです。
社員自身がすべき行動を判断・管理する中で、業務スキルや知識の向上も期待できます。

人材を育成・評価しやすい

目標管理を導入すれば、人材育成がしやすくなることもメリットです。

一般的に、組織の目標に基づき個人目標を立案するのは管理職の仕事です。

しかし目標管理では、社員自身が目標到達までの道筋を考えるため、部下もマネジメントの基本を身に付けることができます。

目標を達成するためにどのような課題があり、どのような改善が必要なのかを分析する思考も養われます。

また、達成度合いが明確に数値化されている目標管理は、管理者から見ても評価がしやすくなります。

目標管理(MBO)のデメリット

目標管理の導入には多くのメリットがありますが、運用方法によってはデメリットが生じる場合もあります。
どのようなデメリットがあるのでしょうか。

モチベーションが低下する可能性がある

目標の達成度合いが明確になるため、適切な評価が得られていないと感じた場合、部下のモチベーションが低下する恐れがあります。

例えば、自身の意志ではなく上司からの指示で目標を決めたり、現在の知識やスキルに見合わない高い目標を設定したりするケースです。

社員の自主性や現在のスキルなどを考慮せずに目標を決めた場合、その評価に納得できず、ネガティブな思考を抱くことになる可能性があります。

また、設定される目標が社員ごとに異なるため評価基準が統一されていないことも、モチベーション低下の原因となります。

場合によっては業務効率が下がる

目標を達成することに意識が向いてしまい社員が初めから低い目標を設定する場合、かえって業務効率が下がる可能性があります。

また、管理者との面談や達成度合いを共有する時間など目標管理に関わる業務負担が大きくなり、業務効率を下げるケースもあります。

加えて、目標の管理業務が煩雑になると、管理すること自体が目的となる恐れもあります。

達成基準の設定が難しい職種がある

職種によっては、目標の達成基準を設定することが難しいものもあります。
例えば、総務や人事などの事務職は、成果を数値化しにくい職種です。

例えば、「〇〇の効率化」など目標が達成されたか判断しにくいような目標を設定した場合、部下と上司でその達成度に関する評価にズレが生じる可能性があります。

チーム力が低下する可能性がある

組織・チームの目指す目標や方針を踏まえず、個人の成果のみを目的とした目標設定をした場合、チーム力が低下する場合もあります。

目標管理の本来の目的である組織力の強化を念頭に置き、個人の目標だけでなくチームとしての目標や役割を設定することが大切です。

目標管理(MBO)の実践手順

目標管理(MBO)の実践手順目標管理を実践する際、どのような手順を踏むとよいのかをご紹介します。

社員の目標を設定する

最初におこなう手順は、社員の目標を設定することです。

そこで重要となるのは、組織の目標やビジョンをしっかり把握した上で、社員自らが目標を設定すること。
企業理念や目標管理をおこなう趣旨などを社員全員に周知する機会を設けましょう。

上司は、社員自身が設定した目標が「組織の目標に沿っているか」「社員の成長を促せる目標であるか」などを確認し、必要に応じて目標の見直しを促します。

ただし、組織の意向ばかりを押しつけることは社員のモチベーション低下につながる可能性があるため、気をつけましょう。

目標達成に向けて計画を立てる

目標が設定できたら、目標を達成するまでの具体的な計画を立てます。

目標達成の期日から逆算して計画を策定し、Excelやスプレッドシート、専用ツールなどを使って目標管理シートを作成しましょう。

その際、実現不可能な計画ではなく、達成可能な計画を立てるようにします。

一つのプランだけでなくいくつかのプランを用意し、進める過程で臨機応変にプランを変えていけるように計画するのがおすすめです。

計画を実行する

次におこなうことは、計画の実行です。

目標管理シートで期日や達成度を確認しながら計画を実行しましょう。

その過程で、何らかの障害が生じたり計画の難易度が高すぎたりして計画通りにいかない場合は、上司と部下が相談しながら計画を修正します。

評価・振り返りをおこなう

目標の期日が来たら、上司と部下で評価・振り返りをおこないます。
部下は自身の評価をおこない、上司は部下を客観的な評価や適切なフィードバックをしましょう。

このとき大切なのは、結果だけではなく、プロセスについても評価することです。

また、部下からは目指すキャリアや今後の目標、上司からは期待する組織での役割といったように、今後の展望についても話し合うこともおすすめします。

目標管理(MBO)のポイント

ここからは、目標管理をおこなう際に押さえておきたいポイントをご紹介します。

社員が自主性を持ち目標設定できるようにする

社員自身での目標設定が重要となる目標管理において、上司が部下に目標を押しつけてしまうことは、単なるノルマになりかねないので注意が必要です。

自主性を尊重することで、社員はモチベーションを高く維持しながら目標達成に向けて行動するようになります。

社員が自ら目標を設定するためには、「目標管理の説明会」や「目標設定研修」を実施するなど、会社側の働きかけも重要です。

数値などを用いて具体的な目標にする

数値などを用い、できるだけ具体的な目標を設定することもポイントです。

目標の計画や期限を具体的に設定することで、目標に向けた行動が取りやすくなるほか、評価や振り返りの精度も高まります。

目標を数値化しにくい事務などの職種においても、「業務ミスを◯個から◯個に減らす」「作業時間を◯時間から◯時間に短縮する」といったように、できるだけ定量的に目標を示しましょう。

目標の達成基準を明確にすることで、上司も客観的に目標の達成度を判断することができます。

社員のスキルに応じた目標にする

設定目標は、社員のスキルを考慮し決定することも大切です。

目標は個人のスキルや知識に応じて達成可能な目標で設定する必要がありますが、簡単に達成できる目標では社員の成長が期待できない点に気をつけましょう。

例えば、達成の難易度を60%程度とするなど、努力次第で達成できるような目標を設定するのが有効です。

プロセスも評価する

上司が達成度合いを評価する際は、結果だけではなく、プロセスも含めて評価しましょう。

その際に大切なことは、できた点を認めて褒めることです。
その上で、できなかった点については指摘し、目標の軌道修正を促しましょう。

定期的に振り返る

目標管理では、振り返りを繰り返すことが効果的であるとされています。振り返りのタイミングは、半期に一度、1年に1度など短期間で設定するケースが多いです。

ただし、どのような目標を立てたのかを忘れてしまうことや、目標を期日前に達成してしまい、目標の再設定が必要となるケースもあります。

目標管理の実施と並行して「1on1」を取り入れるなど、定期的に目標の進捗状況や振り返りをおこなう機会を設けることもポイントです。

目標管理(MBO)と併せて実施したい施策

目標管理を効果的におこなうために、目標管理と併せて実施したい施策をご紹介します。

部下に対する教育

目標管理と併せて実施したい施策の一つは、被評価者である部下に対する教育です。

部下は、組織の目指す方向性と自身の方向性をすり合わせ、目標を設定する必要があります。

組織の目標達成のために「できること」や「求められていること」を認識してもらうため、企業の理念やビジョンを学んだり、自身のスキルの棚卸しや今後のキャリアについて考える機会を設けましょう。

そうすることで、部下は自身のなりたい姿をイメージしながら目標を設定することができます。

上司に対する教育

評価者である上司に対して教育をおこなうことも、目標管理で成功を収める鍵となります。

部下が目標を設定する際、上司には部下に組織の目標を伝えながら目標をすり合わせるという役目があります。

また、進捗を管理し適切なフィードバックをおこなったり、目標の軌道修正を促したりすることも役割に含まれます。

目標管理と併せ、「目標管理の目的」「部下との関わり方」「評価者としてのスキル」などを学べる研修を取り入れることをおすすめします。

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例えば、若手社員のマインドセットとキャリアデザインを目指す「キャリアデザイン研修」、評価者としての意識とスキルを磨く「管理職応用研修」などがあります。

自社の人材育成や教育のためにご活用ください。

まとめ

目標管理(MBO)は、社員自身が目標を立てて主体的に行動することで、個々のモチベーションが向上し、結果、組織の利益にもつながるというマネジメント手法です。

評価者である上司は、部下の目標管理を適切にサポートする必要があります。

本記事でご紹介した実践手順やポイント、目標管理と併せて実施したい施策などを参考に、目標管理の効果的な運用を目指してみてはいかがでしょうか。

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「人と組織の成長を加速する」というミッションのもと、採用、育成、定着を支援する様々なソリューションをワンストップで提供するカケハシ スカイソリューションズならではの知見をお伝えすることを目的として記事を執筆・編集。社員研修の知恵袋では、人事担当向けに、社員教育全般に役立つノウハウを幅広く取り扱っています。
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