マネジメント研修とは、マネジメントに関する専門的な知識やスキルを習得する研修のこと。
企業の中核を担う管理職が対象の研修ですが、変化の激しい現代においては、マネジメントの難しさがより一層高まっています。
今回は、マネジメント研修の概要や実施内容、手法などを具体的にご紹介します。
目次
マネジメント研修とは?
マネジメント研修とは、目標管理やリーダーシップ、部下の育成・管理などに関する能力を高め、現場で役立つ実践的なスキルを習得する研修のことです。
一般的に部下を管理・育成する立場の社員が受講対象となるため、管理職研修と呼び実施されることもあります。
なお、組織におけるマネジメントとは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を活用し、組織全体の目標達成を目指すこと。
管理職は、組織の掲げるゴールに向かって目標を設定し、その達成に向けてチームを導くことが重要な役割です。
そのため、マネジメント研修は、管理職個人の能力を高めるだけでなく、組織全体の成長に欠かせない研修と言えます。
企業のマネジメント研修の実施割合
2018年10月に実施されたHR総研の「人材育成に関する調査」によると、管理職研修を実施している企業は全体の約6割という結果が出ています。
従業員の規模別で見ると、1001名以上の大企業では79%、301人から1000人の中堅企業でも76%と8割近くが実施しています。
しかし、300名以下の中小企業になると46%と半数以下で一気に下がり、規模が小さくなるほど管理職の育成が浸透していない印象です。
また、管理職研修の内容を見ると「マネジメント」が81%と最も高く、次いで「リーダーシップ」が67%「目標管理」が48%「コーチング」38%といった結果でした。
リーダーシップや目標管理、コーチングはすべて、マネジメントに含まれる要素です。
管理職の立場によって習得すべきスキルは異なりますが、マネジメントスキルの習得は欠かせないことが、この結果からわかります。
(参考:HR総研「人材育成「管理職研修」に関するアンケート調査 結果報告(2019年)」)
マネジメント研修の実施目的
マネジメント研修の実施目的は、優秀な管理職の育成です。
組織にとって優秀とは、組織の成長や業績向上に貢献する従業員を増やすことができる存在を指します。
そのため、管理職には、目標設定や部下の管理・育成だけでなく、経営に関する視点も必要となります。
さらに、近年は社会の変化が大きく変革性や多様性が重視され、従来のマネジメント手法だけでは太刀打ちできない状況も課題です。
現代の企業の在り方や個々の働き方にマッチしたマネジメントスキルの習得は、課題解決の糸口として注目されています。
マネジメント研修の対象者とそれぞれの内容
マネジメント研修は管理職を対象に実施されますが、管理職といってもさまざまな役職があり研修内容も異なります。
「新任管理職」「中間管理職」「上級管理職」「チームビルディング研修」それぞれにおけるマネジメント研修の内容をご紹介します。
新任管理職向け研修
新任管理職とは、中堅社員などの一般従業員から新しく昇格した社員を指します。
主に、係長や課長補佐、リーダー、マネージャーといった人が当てはまります。新任管理職の場合、1人の従業員から部下の管理・育成を担う立場に移行します。
そのため研修の目的は、マネジメントする人材への意識や行動転換を促すことです。
マネジメントの基礎を学習した後、現場で実践し上長と相談しながら、マネジメント業務に慣れていきます。
中間管理職向け研修
中間管理職研修は、主に課長や次長が該当します。
新任管理職と上級管理職の間を担う立場であり、部署に対する責任を持つといった特徴があります。
一定のマネジメントの経験があることから、これまでのマネジメントスタイルを振り返り、不足している能力の強化を目的に実施されることが多いです。
さらに、今後を視野に入れて上級管理職への昇格に備え、事業を担うスキル習得を目的に実施されることもあります。
上級管理職向け研修
上級管理職研修は、担当する部署の最高位の管理職である部長が当てはまります。
上級管理職は、経営側に近い立場にあるため、経営や組織開発など、より広い視点で事業管理のためのスキルを身に付けることを目的に実施されます。
部署内を統括する立場であるため、新任管理職や中間管理職の育成に関するスキルも学びます。
そのほか、組織の責任者である「CxO」といった次のステップに進むため、高度な専門知識を研修で習得することもあるでしょう。
チームビルディング研修
チームビルディング研修は、管理職の階層に関わらず、成果をあげるチーム作りをおこなうための研修を指します。
メンバー全体で目標に向かって協力することや、チームワークを向上させることはもちろん、チーム内で個々が持つ強みを活かしながら、メンバーを育成することも目的としています。
具体的には、ゲームやスポーツ、グループワークなどを用いた研修を通じて、チーム形成の流れや、チームリーダーの役割などを学ぶことができます。
他にも、コミュニケーション力を高め、ビジネス理解を強化できることが特徴です。
チームビルディング研修をおこなうメリットとして、チーム内での意思疎通がスムーズになり、一致団結して効率的に業務をおこなえるようになることが挙げられます。
また、メンバーの理解が深まり、強みを活かす機会がつくり出されることで、業務の付加価値が高まることも期待できます。
マネジメント研修で身に付けるべきスキル
マネジメント研修で習得すべきスキルは以下の3つとなります。
- 部下を育成するスキル
- 強い組織に形成するスキル
- 経営の視点を養うスキル
それぞれの具体的な内容を確認していきましょう。
部下を育成するスキル
部下を育成するスキルとは、人材の流出を防ぎ優秀な人材を増やすことです。
部下の育成に関するスキルは多岐に渡りますが、主に「コミュニケーション」「目標設定」「成長支援」「モチベート」といったことが役立ちます。
部下一人ひとりの特性を理解し適切に対応や育成することで、社内で優秀な人材が育ち、企業の成長に貢献するでしょう。
強い組織を形成するスキル
強い組織を形成するスキルとは、部署内の連携や他部署との協力体制を図ることで、強い組織を作りパフォーマンスを最大化することです。
マネジメント研修で学ぶべきスキルには「業務プロセスの改善」「チームビルディング」「他部署理解」などが挙げられます。
組織力の向上に向けた知識やスキルが身に付くことで、部署間の対立や障壁を乗り越えやすくなり、組織の業績や成果の最大化につながります。
経営の視点を養うスキル
経営の視点を養うスキルとは、自身が管轄する部署だけでなく、企業全体の成果を意識することです。
管理職になると、数字を正しく捉え、現状や世の中の動向と結びつけた未来を予想する「数学力」が重要となります。
研修では、数字を活用するノウハウを習得するだけでなく、問題解決や意思決定、戦略立案などあらゆる場面で数字と結びつける力を養うことができます。
マネジメント研修を成功に導くためのポイント
マネジメント研修は、実施方法や目的を間違えるとスキルの定着が図れないことも考えられます。
ここでは、マネジメント研修を成功に導くためのポイントを確認しましょう。
- 研修目的を明確にする
- 受講者が振り返りをおこなう機会を設ける
- 周囲からの見た行動の変化を確認する
- 最適な講師を選ぶ
- 予算に合わせた研修を選ぶ
- 研修後のフォローアップで実践と定着をはかる
(1)研修目的を明確にする
マネジメント研修を実施する際は、研修をおこなう目的を明確にすることが大切です。
目的が定まっていないと、研修の実施だけで満足してしまい、必要なスキルが身に付かずに終わることもあります。
研修を計画する段階で、研修のゴールや対象者、習得させたいスキルを設定し、受講者にもあらかじめ共有しておきましょう。
研修のゴールや習得できるスキルが明確であれば、受講者自身も目的意識を持って臨めるため、効果の高い研修を実現できます。
(2)受講者が振り返りをおこなう機会を設ける
研修では「やって満足」という状況に陥ることや、最終的に研修の効果がよくわからないといったことも生じやすいです。
研修の実施が目的にならないよう、受講者自身が振り返る機会を設けることも重要です。
研修終了時には、受講者にアンケートやレポートを書いてもらうなど、何を理解したのかアウトプットできる工夫をすることもおすすめです。
研修で得たスキルや現場での実践法など、実務で活かせるのかきちんと確認しましょう。
(3)周囲からの見た行動の変化を確認する
マネジメントは、管理職本人だけでなく周囲との関係の中で取り組む意識が必要です。
そのため、周囲が感じる「研修の成果」を確認することも肝要。
周囲からのフィードバックを得られることで、管理職自身の新たな課題や目標の洗い出しにつながり、マネジメントにおける質も向上します。
管理職本人の行動の変化がチームに波及し、最終的に組織の成長が可視化できれば、研修を実施した効果は高いと言えます。
(4)最適な講師を選ぶ
マネジメント研修では講師選びにも注意しましょう。
講師を社内で選定した場合、受講者はマネジメント層になるため、組織事情が絡むケースも見られます。
そのため、外部に研修講師を依頼することも効果的です。
特に既存組織の変革を目指す場合、様々な他社事例や市場の最新情報、より客観的に自社を分析できることから、外からの視点を活用することがおすすめです。
外部講師を選択する際には、講師自身もマネジメント経験があることや、なるべく受講者と年次が近く、現在進行形で受講者と同じ役割を担っている講師に依頼することもポイントになります。
受講者はより自分事として、研修を受け入れやすくなります。
(5)予算に合わせた研修を選ぶ
外部講師に依頼してマネジメント研修をおこなう場合は、予算にあった研修を選択することも重要です。
研修期間や研修内容、受講者数、規模などによって必要な費用は異なるため、事前に明確な予算の立案をおこない、複数の研修会社と見積りをとることをおすすめします。
目安相場としては、20人未満の規模で3万円~30万円ほどで、1日がかりの研修では50万円~100万円以上かかるケースもあります。
別途、会場代や備品代などがかかる場合もあるため、よく確認しましょう。
この他、オンライン講座やeラーニングサービスを導入すると、コストを抑えることができる場合があります。
費用対効果を加味しながら検討しましょう。
(6)研修後のフォローアップで実践と定着をはかる
研修実施後に学んだ内容を業務で取り入れられるよう、フォローアップをおこなうことも効果的です。
例えば、研修内容を現場で実践できているか評価基準を設けたり、フォローアップ研修をおこなったりするなど、受講者のモチベーションが向上し、実践に活用したいと考えられるような施策を取り入れましょう。
研修がやりっぱなしになり、研修受講自体が目的となってしまっては、学びの効果を充分に発揮できません。
研修で学んだ内容を現場で実践し定着できるよう、研修の効果測定をおこない、研修内容を活用して業務の改善や向上ができたか確認しましょう。
マネジメント研修の主な実施方法
マネジメント研修は、主に「集合研修」「オンライン講座」「eラーニング」の3つの方法が多く取り入れられています。
それぞれの研修方法の特徴をご紹介します。
集合研修
集団研修とは、オフラインで実施する研修のこと。
集団研修には以下の3つの方法があります。
- 社内で研修講師を選出して実施する
- 社会講師を社内に招き研修をおこなう
- 不特定多数が参加する社外研修に参加する
集団研修は、参加者同士の交流が図りやすく、直接講師に質問できるなどの特徴があります。
しかし、研修のために特定の日程を確保する必要があるため、日程調整の際は注意が必要です。
管理職業務だけでなくプレイヤー業務も兼任する人材を対象とする場合には、研修で多くの時間を取られないよう配慮しましょう。
オンライン講座
オンライン講座とは、ZoomなどのWeb会議ツールを活用し、オンラインで講座を受ける研修のことです。
どこにいても参加でき、Web上で講師に質問可能といったメリットがあります。
一方で、参加者同士の雑談の機会が作りにくいことや、気軽にディスカッションの時間を設けられないことがデメリットとして挙げられます。
また、受講者はパソコン操作に慣れておく必要があります。
eラーニング
eラーニングとは、録画された講座動画を視聴し受講する研修のこと。
時間や場所に制約がなく、倍速再生や途中で中断できるなど、自分のペースで学習できる点が特徴です。
しかし、受講者同士の交流が難しく、グループワークやディスカッションができないというデメリットがあります。
録画された動画では、講師に質問しにくい点も注意点として挙げられます。
現代の社員におすすめのマネジメント手法
働き方が多様化する昨今においては「仕事と私生活を分けたい」という若者が増加傾向にあります。
それは、自分らしい生活や過ごし方を重視したいといった気持ちの現れでもあります。
そのため、管理職は、現代の社員が持つ仕事観や思考を理解し、育成する中で「自分が尊重され働きやすい環境」をマネジメントしていくことが重要となります。
ここでは、現代の社員を育成する際におすすめのマネジメント手法をご紹介します。
ゴールデンサークル理論
ゴールデンサークル理論とは、「Why(なぜ)」→「How(どうやって)→「What(何が)」の順で伝えることで共感を得られ、行動を促しやすくなるという理論です。
元は、マーケティングコンサルタントのサイモン・シネックが提案した考え方ですが、人間の脳の働きに沿っていることから、マネジメントの方法としても活用されています。
一般的に、業務では時間を優先するあまり「Why」を深堀せず、「How」や「What」に焦点をあてがちです。
しかし、人を育成する際は「Why」を確認した上で指導することが大切です。
「どうして〇〇をしたのか」など、理由を最初に確認することで、手段や行動に問題が発生した場合であっても、どこで誤った考え方が生じたのか判断できます。
また「Why」は人間の感情が入り込む部分でもあります。
指導される側は自分の考えを「なぜ?」と聞かれることで、自身を尊重してくれる上司だと認識しやすくなります。
Will・Can・Must
Will・Can・Mustとは、自分の価値や進みたい道を理解し把握するために役立つフレームワークのことです。
やりがいを持って仕事をするためには、「やりたいこと」「できること」「すべきこと」の3つの要素が必要と言われています。
- Will=自分の将来像や理想の働き方、仕事を通じて実現したいこと
- Can=自分が得意なことだけでなく、克服したいこと
- Must=会社から期待される業務やミッション
Will・Can・Mustの考え方では、3つの輪が重なり合うところに仕事の満足度が生まれ、その部分が大きいほど満足度も高くなる傾向にあるとしています。
そのため、マネジメントをする際は、メンバーそれぞれの特徴を把握し、Will・Can・Mustのバランスを適切に調整して目標設定することが重要です。
ライフキャリアレインボー
ライフキャリアレインボーとは、仕事だけでなく、プライベートにおける役割の部分(ライフキャリア)も含め、虹色のように相互関係を保ちつつ、キャリアが形成されるという考え方です。
仕事=キャリアではなく、年齢を重ねていくうちに結婚や出産、育児など、プライベートで担う役割も増加することを踏まえています。
そのため、将来なりたい自分のキャリアデザインを描く際は、仕事だけでなくプライベートを含めた理想の姿を作り上げていくことが効果的と言われています。
人材育成においては、仕事だけでなく個人の人生を意識したマネジメント手法を積極的に取り入れることが求められているのです。
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まとめ
部下の管理や育成などに関するスキルを習得するマネジメント研修。
多くの企業で実施されている一方で、規模が小さくなるほど、管理職に向けた教育が浸透していない傾向があります。
また、近年は変革性や多様性が重視され、従来のマネジメント手法だけでは太刀打ちしにくい現状もあります。
自社のマネジメント研修を成功に導きたい場合には、今回の記事を参考に研修内容を検討してみてはいかがでしょうか。
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