雇用形態や働き方の多様化が進み、管理職が担うマネジメントの難しさが増しています。
企業では管理職の育成が重要課題の一つとなっていますが、その難度の高さを実感している人事担当者も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、管理職を育成する目的や3つの育成ポイント、成果をあげる管理職を育成するためにすぐに取り組める施策についてご紹介します。
目次
管理職を育成する目的
管理職のミッションは「組織の成果を持続的に出すこと」です。
これまでのように一人のプレイヤーとして成果をあげることと、10人の部下に活躍してもらい、トータルとして10倍以上の成果をあげることでは、求められる知識やスキルが異なります。
管理職として求められるのは後者であるため、管理職を育成する目的は「チームの成果を最大化できる人材づくり」と言い換えることができます。
優秀なプレイヤーだからといって、企業の期待に応えられる管理職になるとは限りません。
そのため、管理職を育成する上では、「プレイヤー時代の知識と管理職として必要な知識の入れ替えができるか」「マインドチェンジして次のステージに臨めるか」という2点が鍵となります。
管理職を育成することは、チームの生産性の向上に寄与します。
優れたリーダーシップとマネジメントスキルにより部下の能力を把握し、適切な業務管理がおこなえます。
チームの能力向上は、ひいては組織の成長を後押しし、企業の発展につながります。
企業は優秀な管理職の育成により、さまざまなメリットを享受できるのです。
管理職育成の5つのステップ
管理職を育成する流れを5つのステップに分けて詳しくご紹介します。育成する際の参考にしてください。
(1)管理職育成の目的設定
まず始めに、管理職を育成する目的設定をします。
ゴールを設定しないと、その施策の効果測定ができず施策自体が成功したのか否かの判断がつきません。
目的は大きく分けて、身に付けてもらいたい学習目標と、研修後に実践できるような行動目標の2つを決めましょう。
そのためには、管理職の現状を把握して課題を洗い出し、理想像とのギャップを可視化することが重要です。
研修を通じて「誰にどのようになってほしいのか」を言語化することで、育成の方向性が見えてきます。
(2)育成の全体像の設計
次に、育成の全体像を設計していきます。
ゴール(理想像)に必要な要素を「経験」「薫陶」「研修」などの観点で洗い出します。
以下は、「個とチーム双方の成長を促し、先を見据えたチームの育成」をゴールに設定した場合の要素の一例です。
経験 | 部下一人ひとりの育成に加え、チーム全体の組織開発に挑戦 |
---|---|
薫陶 | 優れた指導者などから実体験やマインドについて話してもらう機会を設定 |
研修 | 個人とチーム全体、それぞれのマネジメント手法について学習 |
分類して洗い出すことで抜け漏れを防ぎ、それぞれの要素をどのように進めればよいかが見えてきます。
(3)育成の細かなロードマップを作成
洗い出した要素を元に、育成のロードマップを作成していきます。
「経験」の要素では、OJTやワークショップ、ケーススタディなどを用いて疑似体験を提供します。
理想の流れとしては、以下の二通りの流れが好ましいと言えます。
- 実務に就く前に研修で学習・疑似体験し、その学びを活かして実務に取り組む
- ある程度実務を経験した後に研修で振り返り、改善策を洗い出しそれを実行する
「薫陶」は、上司や先輩、外部の優れた指導者などから話してもらう他、他の参加者との対話も効果的です。
「研修」は、経験と薫陶の内容に必要なテーマを取り入れましょう。
(4)育成計画の設定
研修内容が決まったら、具体的な育成計画を策定します。
なにをどのくらいの期間で実施していくのか、具体的な内容と実施期間を決定します。
その際、施策の効果検証が把握できるように、カークパトリックモデルの4段階評価を参考に設定するとよいでしょう。
効果測定の観点を知ることで問題点を整理できます。
レベル | 内容 | 評価項目 | 手法 | 測定タイミング |
1.反応 | 研修に対する 印象 |
満足度 有益度 自己効力感 |
本人に対する アンケート |
施策の直後 |
2.学習 | 知識・技術の 獲得 |
学習内容理解度 | テスト・ ロールプレイ |
施策の数日後 |
3.行動 | 行動変容 | 行動変容の 内容やレベル |
行動チェック リストなど |
施策の数カ月後 |
4.結果 | ビジネス上の 成果 |
売上・利益 コスト削減 退職率 |
ビジネス上の 成果測定 |
施策の6カ月~ 1年後 |
(5)育成施策の効果検証
育成施策を実施したら、必ず効果検証をおこないましょう。
研修をより効果的なものにするためにも振り返りは不可欠です。
振り返る際は、以下のような流れでおこなうとよいでしょう。
- 良かった点、悪かった点を洗い出す
- なぜ良かったのか、悪かったのかを分析する
- 改善策をまとめる
良かったこと、悪かったことの背景や原因までを紐解いていくことが重要なポイントです。
組織の強みや課題が見つかるケースもあり、今後の企画に役立てられます。
よりよい研修にしていくため、効果検証で発見された課題を改善していくまでが管理職育成における全体の流れです。
管理職の育成を成功させる3つのポイント
管理職の育成は難度が高い課題の一つです。管理職の育成を成功させるポイントを3つ紹介します。
- 管理職に期待する役割やスキルを明確にする
- 管理職を対象とした研修・サポート体制を構築する
- 意図的に挑戦的な仕事の機会を与え、能力開発を促す
ポイント(1)管理職に期待する役割やスキルを明確にする
管理職の育成を成功させるためには、管理職に期待する役割やスキルを明確にすることが重要です。
企業が期待する管理職の役割を理解してこそ、管理職を育成するための正しい目標を設定できます。
また、マネジメント経験のない管理職がいることを想定し、企業と対象者の間で管理職の役割について認識にズレがないよう、辞令に加えて直接伝えることもポイントです。
ポイント(2)管理職を対象とした研修・サポート体制を構築する
管理職とはいえ、スキルアップを個人の努力に任せているだけでは不十分な部分もでてくると考えられます。
管理職を対象とした研修の実施やサポート体制の構築など、スキルアップできる環境を用意することも有効です。
例えば、管理職向けのオンラインコンテンツや専門スキルを身につけるための研修など、企業向けの管理職研修サービスを活用するのもおすすめです。
カケハシ スカイソリューションズでは、「マネジメント応用研修」や「コーチング研修」など、管理職を対象とした研修を提供しています。
マネジメント応用研修では、「部署のビジョンと現状のギャップを正しく把握すること」や「部署のビジョンを計画に落とし込む」などのステップを踏みながら、管理職の役割やスキルを学べる内容となっています。
カケハシの管理職を対象とした研修について詳しくはこちら
管理職の研修内容についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
ポイント(3)意図的に挑戦的な仕事の機会を与え、能力開発を促す
管理職に必要な能力には現実の仕事でしか培えないものが多いため、能力を鍛えるための場を意図的につくることも育成を成功させるポイントになります。
上司と共に部署の方針を立てるなどの経験が、管理職としての視野を広げることに役立ちます。
必要な能力が今の部署で鍛えられない場合には、戦略的な異動・配置換えも有効です。
管理職育成の成功事例
訪問入浴介護事業を展開するアサヒサンクリーン株式会社は、「中間管理職の横のつながり」や「将来の幹部としてのビジネススキル不足」に課題感がありました。
管理職研修の実施にあたり同社は、企画実施からその後のフォローまでを一気通貫でおこなうカケハシスカイソリューションズ(以下、カケハシ)に魅力を感じ、研修を依頼し導入しています。
●本社部門の中間管理職における横のつながりの弱さの改善
●将来の幹部としてのビジネススキル不足
●中間管理職に対する研修の実施
●教育を受ける機会がなかなかなかった中間職への研修実施
●普段伝えづらい部下への期待を伝える機会の醸成
研修では事前課題を設けて振り返ることで、研修への意欲や自身の位置づけの確認をおこなう準備期間を確保。
当日の研修を通じて横のつながりができ、よい関係性とよい学びが得られる充実した時間になりました。
研修のカリキュラムに「経営体感ワーク」を取り入れることで、受講者は自身のポジションを再確認するとともに、関係性の大切さを体感できたと言います。
育成のプロに聞く、変化に対応できる管理職を育成するコツ
現在の社会経済を取り巻く環境はとても複雑で、未来を推測するのが難しくなっています。
withコロナによりテレワークやリモートワークも普及し、組織内においてもこれまで通りにはいかないことが増えているでしょう。
変化に対応できる管理職を育成するために取り組みたい施策について、数々の研修の講師として登壇実績が豊富なカケハシ教育研修事業部の責任者に聞いてみました。
教育研修事業部 執行役員
変化の大きい時代に対応できる管理職を育成するためにすぐに取り組める施策とは?
人材の多様化や働き方改革の促進、withコロナによるテレワーク勤務などにより、管理職を取り巻く環境も大きく変化しています。
管理職として成果をあげる方法も変わってきていますね。
withコロナ時代においては、「アポイントメントが取りにくい」「名刺交換をしない」など、クライアントとの関係性を築きにくくなっている点も挙げられるでしょう。
業務においても、現在できなくなっていることをどのように補填するか、それに伴いメンバーをどのように育成するかが課題と言えますね。
withコロナの変化に対応するために、組織の形と管理職の役割は変わっていく必要があると考えます。
組織の形は、トップダウン型に加えて、「ミドルアップダウン型」が大切ですね。ミドルアップダウン型とは、トップから降りてきた考えをミドル層(管理職層)が納得して現場に落とす構図です。
同時に、現場で起こっている変化を吸い上げて、トップに伝える役割も担います。ミドル層は現場を一番熟知していると共にトップの考えを理解する立場にあり、ミドル層が機能することで「スピーディーに効果的な施策を打ちやすい」と言えますね。
管理職が「自分の視座を一段上げて、経営者だったらどう判断するか」という視点を持てるように、再教育の機会を設けるのも効果的です。
管理職候補者のマインドチェンジを効果的に図るには?
説明もなく管理職としての役割を求めてしまっている企業が多い印象です。
「自分の役割は?」「管理職ってどういうもの?」というように、改めて管理職の役割認識を明確にし、対象者にしっかり伝えることが重要です。
その上で、企業側が期待する役割やスキルと現状とのギャップを示すことで、管理職候補者のマインドチェンジが効果的に行われると考えます。
成果をあげる管理職を継続して育成していくために、企業に求められることとは?
管理職がチャレンジできる場を与えることが重要です。
そして管理職としてチャレンジした仕事を認め、奨励します。失敗してもマイナスではなく、また新しいものへのチャレンジを奨励していくことが大切ですね。
企業によっては部下を持たない管理職もいます。場を与えることで、成果をあげる管理職が育つ環境もつくられていくでしょう。
また、成果をあげる管理職を継続して育成していくためには、ステップアップの道筋をあらかじめ設定し、目標に応じた研修を実施することが求められますね。
管理職育成プログラムならカケハシ スカイソリューションズ
採用・育成・定着を支援するさまざまなソリューションをワンストップで提供するカケハシ スカイソリューションズでは、管理職を対象としたマネジメント研修の他、各種育成プログラムをご用意しております。
管理職を対象とした研修では、「管理職基礎研修」を始め、「マネジメントコーチング研修」や「女性活躍推進」「DE&I」など、時代に合わせた多様なマネジメント手法にも対応しています。
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まとめ
管理職の育成を成功させるポイントは、3つありました。
管理職を対象とした研修・サポート体制を構築する
意図的に挑戦的な仕事の機会を与え、能力開発を促す
管理職としてのマインドチェンジを効果的に図るためには、企業が管理職に求める役割やスキルをしっかりと示し、認識のズレをなくすことが大切です。
withコロナの変化に対応できるよう、ミドルアップダウン型を機能させる管理職の育成に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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