中堅社員育成

評価者研修とは?実施の目的や内容、評価する上でのポイントを解説

評価者研修とは、人事評価制度への理解を促すことで、公平な評価をおこなうスキルを身に付けるための研修です。
人事評価の適切な運用には、評価の公平性が欠かせません。

この記事では、評価者研修について、実施する目的やその重要性、評価者研修が有効なケースについて詳しく解説します。

人事評価の理解を深める「評価者研修」とは

評価者研修とは、人事評価をおこなう人を対象に、人事評価制度への理解を深めるための研修です。
評価方法や評価基準など、評価制度に関する知識やスキルを身に付けることで、公平な評価の実現を目指します。

評価者研修には、評価スキルや面談スキル向上のほかに、部下の目標設定から目標達成までの支援・育成の一連のプロセスが含まれています。

人事評価の公平性を高めるためには評価者スキルの向上が不可欠であることから、多くの企業で評価者研修が導入されています。

人事評価の重要性と目的

人事評価の目的は、従業員一人ひとりの処遇の決定や企業方針の浸透、人材育成などさまざまあります。

特に、人事評価制度は従業員の賃金や役職などに反映されることから、従業員のモチベーションやエンゲージメントに影響を及ぼします。
そのため、適切な人事評価制度の構築は、人材育成の観点においても重要な要素といえます。

人材を育成し、価値を高めることが、ひいては企業の成長につながります。
人事評価が適切かつ公平に実施されて初めてその目的が達成されるため、評価制度の質を高める評価者研修が重要視されているのです。

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評価者研修の近年の実施状況

産労総合研究所が実施した「2016年 評価制度の運用に関する調査」によると、評価者訓練を「実施している」企業は71.4%でした。
7割を超える企業が、評価者訓練を実施していることが見てわかります。

一方で、評価される側の従業員(被評価者)に対しておこなわれる「被評価者訓練」の実施状況は22.6%と2割程度に留まっています。

(参考:産労総合研究所「2016年 評価制度の運用に関する調査」

評価者研修を実施する目的

評価者研修を実施する目的は、企業の人事評価制度の質を高めることにあります。
具体的な目的として、主に以下の3つが挙げられます。

評価者研修を実施する目的
  • 評価制度への理解促進
  • 評価スキルの向上
  • フィードバックスキルの向上

評価制度への理解促進

人事評価制度の導入は、従業員を正しく公平に評価するためです。
そのためには、まず評価者の評価制度に対する理解を深め、正しい運用方法を学ぶ必要があります。

評価制度の内容や評価基準はどのようなものか、なぜそのように定められているのかなど、制度について理解しなければ適切な運用は難しくなります。

人事評価制度の内容は企業によって異なります。
評価者研修では、評価者が公平な評価をおこなえるよう、自社がなぜ人事評価制度をそのように定めたのか、重視しているポイントはなにか、正しい理解を促します。

評価スキルの向上

評価者の制度への理解促進とともに、正しい評価スキルを身に付けることも評価者研修の目的の一つです。
評価者の評価能力が低い場合、主観や固定概念、偏った価値観に評価が左右されてしまうため公平な評価は実現できません。

適切に評価されないと、被評価者である従業員に不満が生じて企業や評価者への不信感につながり、モチベーションの低下を招きます。最悪の場合、離職につながる恐れもあります。

客観的かつ公平な評価をおこなうためには、評価スキルの向上が欠かせません。

フィードバックスキルの向上

評価者は評価をおこなうだけでなく、被評価者へ適切なフィードバックを実施する必要があります。
フィードバックは、被評価者の成長を促し、自社のパフォーマンス向上に欠かせない要素の一つです。

評価者研修では、効果的なフィードバックの方法やコミュニケーションの取り方などをトレーニングします。

フィードバックを受け止めてもらうためには、被評価者との信頼関係が必要なため、対話を通じた丁寧なフィードバックスキルが不可欠となるのです。

評価者研修を実施するメリットとは

評価者研修の実施により企業が得られるメリットについて以下でご紹介します。

評価制度を適切に運用できる

評価者研修の実施により、評価制度を適切に運用できるのが大きなメリットです。
自社に優れた人事評価制度が整っていても、評価者の能力が伴っていなければ意味がありません。

評価者研修をおこなって、評価者の理解を促しスキルレベルを上げることで、人事評価制度の適切な運用に役立てます。

また、評価者の評価能力を標準化できるのも評価者研修のメリットの一つです。
評価者に同一の研修を実施することで、同じ知識やスキルが身に付くほか、自社の人事評価制度に対する認識も揃えられます。

評価者による評価のばらつきを防ぎ、評価者全体のスキル向上につながります。

人材を効率的に育成できる

人材を効果的に育成できるのも、評価者研修のメリットとして挙げられます。

人事評価の代表的な項目の中に「能力評価」があります。
この能力評価により、人材の能力やスキル、得手不得手を正しく評価することで、人材の適材適所への配置がおこなえます。

評価者は、従業員の特性を見極める力を評価者研修により学ぶことで、人材の能力を最大限活かした効率的な人材育成ができるようになります。

人材の特性に見合った人材配置により、人材の力が発揮され、結果として企業の成長につながります。

従業員の成果につながる

従業員の成果につながることも評価者研修をおこなうメリットです。
評価者は、被評価者に対して「なにが評価され、なにが不足しているのか」に加えて「どう改善すればよいか」といったフィードバックをする能力も求められます。

適切な評価とフィードバックは、従業員のモチベーションやエンゲージメントに直結する重要な要素です。
評価者研修の実施により、評価者は適切なフィードバックができるようになり、結果として従業員の成果につながりやすくなります。

また、被評価者に対して、「どのように評価されているのか」「なにを求められているのか」、評価制度の理解を促すことで、企業と従業員との認識のブレをなくすことができます。

評価者研修の対象となる人や役職

評価者研修の対象者は、一般的に以下に分類されます。

評価者研修の対象者
  • マネージャー(管理職)の方
  • 人事評価を受ける側の方(被評価者)
  • 経営者の方
  • 人事担当や人材業界で活躍される方

マネージャー(管理職)の方

マネージャーや管理職の方は部下を持つ立場にあり、部下の管理や指導、評価が求められるため、評価者研修が必要となります。

しかし、管理職としての経験の程度によって、評価者研修の内容は異なる点に注意しましょう。
管理職の経験が浅い場合には、人事評価制度に関する基礎的な知識から学び、評価方法、効果的なフィードバックについて指導します。

管理職経験が豊富な場合は、ケーススタディや他の評価者との認識のすり合わせなど、実践的かつ高度な内容が求められます。
対象となる管理職の経験に合わせた評価者研修の実施が肝要です。

人事評価を受ける側の方(被評価者)

人事評価を受ける側の方(被評価者)に評価者研修を実施するのも効果的です。

被評価者は、評価者研修を実施することで、自身がどのように評価されているのかを理解できます。
自社がどのような人材を求めているのかがわかるため、自身の行動や業務に対する意識の改善が図れる利点があります。

また、評価者と被評価者間の認識のすり合わせをおこなえるため、評価に対して不満が生じにくくなる効果も期待できます。

経営者の方

経営層も評価者研修の対象者です。経営戦略や事業戦略を推進する上で、人材育成は欠かせない要素の一つです。

経営者を対象に評価者研修をおこなうことで、制度の改善や新制度構築のよい機会となり、企業の成長を支える基盤構築にもつながります。

研修では、自社の人事評価制度の現状把握や課題点・改善点の洗い出しに加えて、他社が取り入れている人事評価制度の事例などをプログラムに組み込むと効果的です。

人事担当や人材業界で活躍される方

評価者研修の対象には、人事担当者や人材業界で活躍される方も当てはまります。

人材一人ひとりの個性を見極める力が付き、より効率的かつ生産性の高い人材配置や人材紹介がおこなえるようになります。

評価者研修により、評価力やフィードバックスキルを向上させることで、人材業界で働く方は求職者と企業のマッチング精度を高めることができ、人事担当者の方は従業員に適した配属先を見極める力を鍛えられます。

効率的な人材育成をおこなうためにも、人材業界や人事担当者の方が人事評価制度への理解を深め、評価スキルを磨くことは不可欠といえます。

評価者研修の実施内容・プログラム

評価者研修の実施内容やプログラムにはどのようなものがあるのでしょうか。以下で詳しく解説します。

目標設定

評価者研修では、被評価者に達成してほしい目標の設定方法を学びます。

目標設定は、被評価者の経験やスキルなどを考慮した上で定める必要があります。
被評価者のモチベーションを低下させないためにも、高すぎず低すぎない目標に設定するのがポイント。

評価者研修では、被評価者一人ひとりの状況に合わせてスキルの醸成を目指します。

目標達成への支援方法

定めた目標を達成するための支援方法も、評価者研修のプログラムの一つです。

評価者研修では、被評価者の特徴を見極め、対話を通じて被評価者のやる気につながる助言や指導方法を身に付けます。

目標を達成するためにはどうすればよいのか、具体的かつ建設的な支援やフォローの方法を学べる内容を取り入れましょう。

評価力の向上

評価者研修の内容の一つに、評価力の向上を目的としたプログラムがあります。

評価力は、公平な評価をおこなう上で欠かせないスキルとして、人事評価制度の要と言っても過言ではありません。

研修では、評価者が正しく公平に評価をおこなえるよう、ケーススタディやディスカッションの場を設けるのをおすすめします。
評価者同士で認識の擦り合わせをおこなうことで、評価者間での評価のばらつきをなくし、納得感のある公平な評価につながります。

面談やフィードバック方法

評価者研修では、面接やフィードバックスキルを身に付けます。
特に、初めて評価者となる人は、面談やフィードバックをされる側しか経験していないことがほとんどです。
そのため、評価者研修では、面談やフィードバックの方法を学ぶプログラムが必要となります。

正しく効果的な面談を実施するスキルやフィードバックスキルが身に付くと、被評価者とのコミュニケーションがスムーズにおこなえるだけでなく、信頼関係の構築やモチベーションの向上にも役立ちます。

人事評価制度への理解

評価者研修では、自社の人事評価制度への理解を促します。

人事評価制度は、企業によってその特徴や目的が異なります。
自社の評価制度が他社とどう違うのかを比較して学べる内容にすれば、自社の強みや特色について認識するよい機会となるだけでなく、改善点や課題点に気づくきっかけにもなります。

人事評価制度への理解が深まるほど、正しい評価制度運用の実現につながります。

被評価者と認識の擦り合わせ

評価者研修の中で、被評価者と認識の擦り合わせをおこなうのも効果的です。

自社の人事評価制度の目的や評価基準について学ぶ機会を設けます。
被評価者が評価される姿勢や行動について認識を擦り合わせることで、評価される行動と評価につながりにくい行動との区別ができるようになります。

評価者研修では、評価される行動の具体例を挙げ、被評価者がイメージしやすいプログラム内容にしましょう。

評価者研修が有効なケースとは

ここでは、評価者研修が有効なケースについて解説します。

人事評価制度に課題を抱えている

人事評価制度に課題があり、適切な運用がおこなえていない企業は、評価者研修が有効です。

人事評価は、時代の変化や企業の成長に伴って見直しが求められます。
企業規模や事業内容が変わっているのに古い制度のままでは、従業員が正当に評価されずモチベーションの低下を招き、企業の成長の妨げとなる可能性があります。

定期的に制度を振り返り、改善するためにも、評価者研修が不可欠です。
定期的に実施することで、自社の人事制度の見直すよいきっかけとなります。

人事評価の担当者に課題や問題がある

人事評価をおこなう担当者に課題がある場合も、評価者研修が有効です。
優れた人事評価制度が整っていたとしても、評価者の理解が不足していれば適切な運用は望めません。

評価者研修を実施して評価者の理解を促し、レベルを上げる必要があります。
公平かつ適切な評価や目標設定、フィードバックがなされないと、被評価者の不満につながりやすくモチベーションが低下してしまいます。

納得感の得られる評価がおこなえるよう、不足しているスキルを研修で身に付けましょう。

人事評価を受ける側に課題や問題がある

人事評価を受ける側である被評価者に課題や問題がある場合も、評価者研修の実施をおすすめします。

評価者と被評価者との間に、人事評価制度に対する認識の相違があると、評価に対して納得ができず不満を抱きやすくなります。
被評価者が研修を受け、評価制度への理解を深めることで、認識の擦り合わせができます。

「どのような行動が評価されるのか」が明確化されるため、目標設定がしやすくなり、自発的な行動ができる従業員の育成にもつながります。

評価をおこなう上でのポイント

ここでは、評価者が正しく公平な評価をおこなうためのポイントを3つご紹介します。

  • 評価軸や基準の見直し
  • 評価者としての意識の醸成
  • 業務に活かせる研修内容にする

評価軸や基準の見直し

公平な評価をおこなうには、評価軸や基準の見直しが不可欠です。
経営戦略や事業戦略の観点を踏まえた評価軸となっているか、評価項目や基準は人材育成につながるかどうかを改めて見直し、整備しましょう。

また、新たに定めた評価軸や基準は、従業員に公開して周知することで擦り合わせをおこないます。
公平性が担保されている点を従業員に理解してもらうことは重要です。

評価者としての意識の醸成

評価者は、普段の業務において、評価する側としての立場を意識する必要があります。

評価者となる対象者には、評価者に求められる姿や指針を定期的に周知しましょう。
評価者としてあるべき姿を再認識することで、人事評価における偏ったバイアスを排除でき、公平な評価をおこなえるようになります。

業務に活かせる研修内容にする

評価者研修を実施する際には、研修で学んだ内容を業務に活かせるようなプログラムにしましょう。

講義に加えてワークを取り入れるのがポイントです。
実際の事例を用いたケーススタディや評価者同士でのディスカッション、自己分析などを通じて、人事評価制度への理解を深めスキルの向上を図ることも公平な評価をおこなう上で不可欠です。

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まとめ

評価者研修は、企業の人事評価制度への理解を深め、公平な評価の実現に不可欠な研修です。
評価者研修の実施により、評価者のレベルを高めることで、より効率的な人材育成につながります。

また、定期的に実施することで、自社の人事評価制度を見直し、改善するきっかけにもなります。
この記事でお伝えした内容を参考に、効果的な評価者研修を実施して企業の成長につなげましょう。

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