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経験学習サイクルとは何?4つのステップ、施策例、PDCAサイクルとの違いを解説

経験学習サイクルとは、経験から教訓を得るプロセスを理論化したもの。

自分が経験したことを振り返り、そこから気づきや教訓を導き出すことで成長につなげる学習モデルです。

この記事では、経験学習サイクルの概要や実践する際のポイントなどを、成功事例と併せてご紹介します。

経験学習サイクルとは何?

経験学習サイクルとは、実際に経験した事柄に対し、「経験→内省→教訓→実践」の4段階のサイクルを繰り返して教訓の獲得や成長を目指す手法です。

米国の教育理論家であるデイビッド・A・コルブにより提唱されました。

変化の激しいビジネス社会の中で生き残るためには、役職や属性に関わらずすべての社員が学び続けることで個々の成長を促し、結果として企業の成長につなげる必要があります。

幅広い学びを得るためにも、業務の中で学べる経験学習サイクルの重要性が高まっています。

経験学習サイクルとPDCAサイクルの違いとは?

経験学習サイクルと混同しやすい概念に、PDCAサイクルがあります。

PDCAサイクルは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の4つのプロセスを繰り返すサイクルです。
W・エドワーズ・デミングが提唱したフレームワークです。

両者の決定的な違いは、その目的にあります。
経験学習サイクルは、個人が経験から教訓を得て成長するためのサイクルであるのに対し、PDCAサイクルは、主に業務の効率改善や問題解決を目的とした枠組みです。

経験学習サイクルの4つのプロセス

経験学習サイクルの4つのプロセス経験学習サイクルは、以下の4つのプロセスから構成されます。

経験学習サイクルの4つのプロセス
  1. 経験する
  2. 内省する(振り返り)
  3. 教訓化する
  4. 試行する(実践)

経験がそのまま学びとなるとは限りません。
ビジネス上で経験したさまざまな事柄を意識して振り返り、学びを得る学習サイクルの習慣化が大切です。

ここでは、経験学習サイクルの4つのプロセスについて詳しくご紹介します。

(1)経験する

経験学習サイクルにおける最初のプロセスは「経験」です。
実際の業務の中で経験する場を設けます。

ここでいう「経験」は、人から教えてもらった内容や資料から得た知識といった間接的なものではなく、自身が直接「体験」したものです。

例えば、「企画のプレゼンをおこなった」「新規顧客を獲得できなかった」などの具体的な経験がこのプロセスに該当します。

また、目標を設定するのも大切なポイントです。
目標は個人の状況や属性によってさまざまですが、簡単すぎず成長につながる適度な難易度にしましょう。

(2)内省する(振り返り)

次に、経験したことを内省します。
ビジネスでは「振り返り」と呼ばれているこのプロセスは、経験学習サイクルにおいて最も重要な要素です。

振り返りでは、1つ目のプロセスの「経験」が「なぜその結果になったか」を分析して深く掘り下げていくことで、これまで気づかなかった問題点や改善点を発見できます。

具体的には、「経験から学んだことはなにか」を自問自答して、客観的かつ俯瞰的に見ることが重要です。

経験で得た結果を多角的に振り返り、その結果にたどり着いた要因や背景を考えましょう。
経験をしっかりと復習することで、次のプロセスである「教訓化」の土台構築につながります。

振り返る際は、失敗経験だけでなく成功経験でも同様におこないましょう。
次の経験でよりよい結果を出すための一助となります。

(3)教訓化する

経験学習サイクルの3つ目のプロセスでは、振り返りにより得た事柄を「教訓化」します。
「こうすれば成功する」という教訓(ノウハウ)を導き出し、ほかの経験に活かせるようにします。

そのためには、経験して内省したことを概念化するのが重要となります。
「これは上手くいかなかったが、次はこのようにすればよいのではないか」といった仮説を立てて行動します。

事柄の概念化により教訓を獲得し、自身の経験則とするのが教訓化のプロセスです。

(4)試行する(実践)

経験学習サイクルの4つ目のプロセスは、「試行」です。
知識は学んだだけでは身につきません。
これまでのプロセスで得た気づきや教訓、仮説をもとに実践を通して確認しましょう。

もちろん、すべてが成功するとは限りませんが、学んだことを新たな場面で試行・実践することで、さらに新たな経験につながります。

その新たな「経験」を通じて得られた気づきにより、以前よりも質の高い教訓が得られます。

このように、「経験」「振り返り」「教訓化」「試行」の4つのプロセスを繰り返すことが、人が成長するために必要なサイクルと言えます。

経験学習サイクルを実践する方法【シーン別】

経験学習サイクルの実践方法は大きく分けて、自身で経験学習サイクルを回すケースと部下・後輩の経験学習サイクルを回すケースの2種類があります。
それぞれの実践方法をシーン別にご紹介します。

自身で経験学習サイクルを回す

自分自身で経験学習サイクルをおこなう場合、失敗を恐れることなく経験や実践を重ねましょう。

経験学習サイクルにありがちな問題として、「失敗=恥」と考えて失敗を恐れるあまり、経験・実践できないケースが挙げられます。

経験学習サイクルの核とも言える「経験」が得られなければ、学びも得られません。
失敗を恐れずに、積極的に挑戦しましょう。

また、経験学習サイクルの実践において、振り返りの習慣化も重要となります。

経験から得られる学びを最大化するためにも、これまでのプロセスを多角的かつ客観的に見る必要があります。

客観的に見るのが苦手な場合や視野を広げたい場合には、同僚や上司などに意見を求めてみるのも一つの方法です。
視野が広がり、自分では気付けなかった教訓を得られるようになります。

部下・後輩の経験学習サイクルを回す

部下や後輩の育成を目的として経験学習サイクルを回す際には、「経験の場」を積極的に設けるのがポイントです。

とくに社歴の浅い社員の場合、自ら経験の場を用意するのが難しいケースが考えられます。
経験する業務の幅が広がるよう意識して本人の適正に合った学習機会を設定し、経験学習サイクルのきっかけ作りをおこないましょう。

また、内省や教訓化のプロセスでは、慣れていないとやり方がわからず戸惑うケースも少なくありません。

始めはアドバイスやフィードバックをおこないながら、経験学習サイクルを正しく回せるようになるまでサポートしてあげましょう。

最後に、得られた学びを実践する機会を再度提供して、経験学習サイクルを習慣化させるのが理想です。

経験学習を取り入れる際のポイント

経験学習を取り入れる際に押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。

  1. 積極的に経験させる
  2. 内省を促す
  3. コミュニケーションを活性化させる
  4. 教訓を活かせる場を提供する
  5. 適切なフィードバックを実施する
  6. 経験学習サイクルを習慣化する

(1)積極的に経験させる

経験学習を取り入れる際、積極的に経験させるのが重要なポイントです。

経験学習サイクルにおける教訓やノウハウは、社員自身が主体的に取り組んだ「経験」からしか得られません。
これまでと代わり映えのない経験ばかりでは、新たな教訓は獲得できず成長につながりません。

積極的に新規プロジェクトに参加させたり、ジョブローテーションをおこなったりして、幅広い経験ができる機会の確保に努めましょう。

(2)内省を促す

経験学習を取り入れる場合、得られた経験の内省(振り返り)を促すのがポイントです。

内省のプロセスでは、まず経験したことを振り返り、自分がどのような経験をしたのかを言語化して確認します。
その内容についてさらに詳しく分析することで、経験を的確に把握できます。

また、経験で得られた結果やそのプロセスを客観的・俯瞰的に分析するだけでなく、「次に取るべき行動はなにか」というところまで掘り下げるとより効果的な経験学習がおこなえます。

(3)コミュニケーションを活性化させる

経験学習サイクルを回す際には、コミュニケーションの活性化も意識しましょう。

経験学習では、物事を客観的かつ俯瞰的に見ることが求められます。
自身の視点だけでは発見できなかった気づきや教訓を得るためにも、第三者からの視点を取り入れる必要があります。

同僚や上司から意見をもらう、部下や後輩にフィードバックをおこなうには、日頃のコミュニケーションが不可欠です。

コミュニケーションが不足していると、意見を素直に受け入れられない、的確なフィードバックができないといった問題が生じる可能性があります。

立場に関係なく、それぞれが得た教訓を互いに共有できる関係作りをおこなうことで、質の高い経験学習サイクルが実行できるようになります。

(4)教訓を活かせる場を提供する

経験学習サイクルでは、経験から得られた教訓を活かせる場を確保しましょう。

教訓を得ても、実践できなければ宝の持ち腐れです。
教訓を実践できる業務を任せたり、一歩進んだ研修を実施したりと成長の機会を提供します。

学びを次の経験に意図的につなげることで、経験学習サイクルの好循環を作り出せます。

(5)適切なフィードバックを実施する

経験学習をおこなう際には、適切なフィードバックを心がけましょう。

経験学習サイクルの効果を最大化させるためには、多角的な視点が不可欠です。
経験を無駄にしないためにも、状況をしっかりと分析できているかどうか、適切なフィードバックが大切なポイントとなります。

とくに、経験の浅い社員の場合、経験学習サイクルを一人で回すのは難しいため、日報での確認や1on1ミーティングなどをおこなってフォローしましょう。

その際には、本人が自らの力で気づきを得られるよう、答えを与えるのではなく、疑問を投げかけるのが大切です。

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(6)経験学習サイクルを習慣化する

経験学習サイクルは、日常的に回し続けることで大きな成長につながります。

一度きりの取り組みで終わることなく、日頃の業務の中に取り込んで習慣化させるのが重要なポイントとなります。

例えば、毎日業務を始める前に一日の業務内容を確認し、経験となりそうなシーンがあれば意識して業務にあたるようにしましょう。

業務を終えたら内省し、教訓化する時間を確保することで経験学習サイクルを日常的に回すことができます。

経験学習サイクルを習慣化することで常に学び続けることができ、人材育成につながります。

経験学習を導入する際の注意点

メリットの多い経験学習サイクルですが、導入する際に気をつけたい点も存在します。
どのような点に注意すればよいか以下でご紹介します。
導入の際の参考にしてください。

  • 振り返りの時間を設ける
  • 主体性を尊重する
  • 適切なサポートをおこなう

振り返りの時間を設ける

経験学習を取り入れる際には、振り返りの時間を意識的に設けるようにしてください。

経験学習において陥りやすい失敗の一つに、せっかく経験したことを振り返らずに放置してしまうケースが見受けられます。

振り返りを疎かにしてしまうと、経験が無駄になるだけでなく、また同じ失敗を繰り返す事態にもなりかねません。

そうならないためにも、「業務終了後30分は振り返りをおこなう時間」といったように日常的に時間を取るように意識しましょう。

振り返り用のワークシートを用意しておくのも効果的です。気軽に取り組める仕組みを整えておくことで習慣化を促せます。

主体性を尊重する

経験学習では、主体性を損なわないよう注意が必要です。
主体的に課題を見つけ、教訓を導き出すのが経験学習です。

経験学習サイクルをおこなっている本人が迷っている時に、直接的な答えやアドバイスを与えたり、意見を押し付けたりすると、実践における主体性が低下してしまい本来の効果が得られない場合があります。

効果的な経験学習サイクルにするためにも、本人の意見を尊重するよう心がけましょう。

適切なサポートをおこなう

経験学習サイクルの導入において、周囲は適切なサポートの提供を心がけましょう。

経験学習には主体性が大事だと前項でお話ししましたが、かといって放置しすぎてはいけません。

経験学習サイクルの教訓化のプロセスでは、事柄を客観的かつ多面的に見て分析する必要があります。

とくに、新入社員や経験学習に慣れていない若手社員などの場合、分析や内省の段階で固定概念に囚われたり、思考に偏りが生じたりしてしまい、正しく教訓化できないケースも考えられます。

経験学習サイクルを回すコツをつかめるまでは、積極的にコミュニケーションを取って適切なサポートをおこないましょう。

経験学習サイクルの施策例について

経験学習サイクルの導入にあたり、有効な施策について以下でお伝えします。

経験学習サイクルの施策例
  • OJT
  • 支援ツールの導入
  • 経験学習サイクルの研修
  • 1on1ミーティング
  • ジョブローテーション

OJT

OJTを通じて経験学習サイクルを実践するのも効果的な施策の一つです。

OJTは、現場での実践を交えながらスキルや知識を身につける育成手法の一つで、多くの企業で取り入れられています。
座学だけでは得られない知識やスキルも、短期間で効率的に学べるのが特徴です。

経験学習をおこなう際にOJTを取り入れることで、業務の実践という「経験の場」の提供もしやすく、効率よく経験学習サイクルを回すことができます。

支援ツールの導入

経験学習サイクルを効率よく回すためには、支援ツールの導入も検討しましょう。

支援ツールを利用することで、経験や成長度合いの状況などを視覚的に把握できるほか、部下の現状把握や進捗管理がオンライン上でできるため運用しやすくなります。

経験学習サイクルの研修

新入社員に対して経験学習に関する研修を実施するのも効果的です。
ビジネス経験に乏しい新入社員は、経験学習をおこなっても次の経験に活かせず、同じミスを繰り返してしまうなど課題が多くあります。

入社後の早い段階で、経験学習サイクルを正しく回すための研修を実施することで、その後もスムーズな人材育成につながります。

1on1ミーティング

経験学習サイクルに取り組む上で効果的な施策として、1on1ミーティングの実施が挙げられます。
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1でおこなう定期的な面談のことです。

定期的に1on1ミーティングを実施することで、部下がどのような経験を得てどのような教訓を獲得できたのかが確認できます。

また、部下とは違った観点からアドバイスすることでより深い学びにつながります。

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ジョブローテーション

経験学習サイクルを導入する際には、ジョブローテーションを取り入れるのも効果的な施策の一つです。

ジョブローテーションとは、社員のスキルアップや能力開発を目的として、さまざまな職種や職場をローテーションして配置転換する制度のことです。

ジョブローテーションにより、経験学習サイクルの源となる「経験」を効率的に獲得できます。

経験学習サイクルの導入事例

経験学習サイクルの導入に成功した企業の事例を以下でご紹介します。
自社に取り入れる際の参考にしてください。

Yahoo! JAPAN

Yahoo! JAPANでは、経験学習を取り入れた育成制度や研修制度を導入しています。

1on1ミーティングや人財開発カルテ、人財開発会議など、社員一人ひとりが成長できる環境作りをおこなっているのが特徴です。

社員一人ひとりの持続的な成長を促す体制基盤が構築されているため、より効果的な経験学習サイクルの導入を実現しています。

(参考:「ヤフーで始まった「新しい働き方」。企業の成長を支える”自律的な学び”とは」)

Google

Googleでは、経験学習を活用した組織運営をおこなっています。

日常の業務の中に学習の機会があると考え、日頃から社員同士でアドバイスや情報交換を積極的におこなっているほか、社員同士で教え合うことで人脈を広げるための機会を意図的に設けているのが特徴です。

こうした「学習する文化」を取り入れた結果、Googleでは組織力向上に成功しています。

(参考:Google re:Work「学習と能力開発」)

経験学習サイクルの導入はカケハシ スカイソリューションズ

経験学習サイクルの導入はカケハシ スカイソリューションズカケハシ スカイソリューションズは、採用・育成・定着を支援するさまざまなソリューションをワンストップで提供。

新入社員を対象に、日々の経験の振り返りをおこなうフォローアップ研修から、OJTトレーナーを対象としたOJTトレーナー研修など、さまざまな研修プログラムをご用意しております。

定型のパッケージ研修だけではなく個社ごとにオリジナル研修も実施しています。
まずは、お問い合わせください。

まとめ

経験学習サイクルは、日常の業務の中で得られる経験から学びや教訓を獲得できる優れた育成手法です。

しかし、本人が意識してサイクルを回す必要があり、習慣化できなければ満足な効果は得られません。

この記事でお伝えしたポイントや注意点を参考に、経験学習サイクルを取り入れて効果的な人材育成に活用してみてはいかがでしょうか。

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知恵袋編集部
「人と組織の成長を加速する」というミッションのもと、採用、育成、定着を支援する様々なソリューションをワンストップで提供するカケハシ スカイソリューションズならではの知見をお伝えすることを目的として記事を執筆・編集。社員研修の知恵袋では、人事担当向けに、社員教育全般に役立つノウハウを幅広く取り扱っています。
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