新入社員育成

新入社員の成長を促す、効果的なOJT教育のやり方6ステップ

OJT教育を導入するにあたり、「進め方がわからない」「効果的なやり方を知りたい」と感じている人事担当者もいるのではないでしょうか。

今回の記事では、OJTのやり方をステップ別に解説する他、その効果を高めるためのポイントやコツをご紹介します。

これからOJTを導入する、あるいはOJTを導入しているが思うような成果が得られていないと感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

OJTを重視する企業は「73.6%」

OJTとは「On The Job Training」の略で、実際に業務を通して上司や先輩社員が、新人の指導を行う人材教育のことを指します。

OJT教育を用いることは、不安を抱える新入社員に対し早期業務習得を促せ、モチベーションや業務効率の向上へとつなげられます。

OJTを行う最大のメリットは、個性の特性に合わせた内容やスピードで教えられる点です。また、実務を通じた育成により、終了後は即戦力になりやすいといえます。

指導者側のスキルアップや職場の人間関係が醸成できるといった利点もあります。

厚生労働省の平成30年度能力開発基本調査によると、正社員に対して計画的なOJTによる教育訓練を実施した企業および事業所は62.9%と、6割を超えています。

また、「正社員の教育訓練」を尋ねると、「OJTを重視する」は20.5%、「OJTを重視するに近い」は53.1%と、合わせて73.6%であり、人材育成の手段としてOJTを重視する企業が多いことがわかります。

昨今では、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワークが急速に普及しました。

これまでは常態的に隣にいながらできていたOJTが、リモートで行うことになり難度が増したことで、これまで以上にOJTのやり方に関心が寄せられています。

参考:平成30年度能力開発基本調査

効果的なOJTのやり方を6ステップに分けて解説

OJTをこれから導入する企業や、テレワークに準じたOJTのやり方を工夫したいと考える企業はどうすればいいのでしょうか。

OJTのやり方には6つのステップがあります。それぞれの項目ごとに詳しく見てみましょう。

ステップ(1)目標設定

はじめに、OJTの目標設定をします。目標設定は経営層や人事部が、現場の責任者や上司と共に行うことが重要です。

育成後の「人物像」を習得してほしい「知識」「スキル」などとすり合わせて、「どんな人材になっていることを望むのか」を考えます。

計画の立案や実行も現場任せとならないようにすることで、効果的にOJTを進めるための体制を整えましょう。

テレワークでは対面での指導ができなかったり、お互いの状況がわかりづらかったりします。

設定した目標を新人に共有することで、会社が期待していることや先輩の考えが理解できるため、安心感も生まれやすいでしょう。

OJT指導者と新人だけでなく、部署内においても到達度合いを共有するコミュニケーションの機会を設けることが大切です。

ステップ(2)育成対象者の現状把握

次に、育成対象者の現状を把握しましょう。新卒社員か中途社員か、職種や階層、経験年数、個々の能力によって育成内容が異なることもあります。

これまでの経験や知識、学習の傾向等を把握することは、足りないものをOJTで補えるような、一人ひとりに合った育成計画の立案にもつながります。

ステップ(3)OJT指導者の選出

続いて、OJT指導者を選出します。指導者に求められるスキルは、コミュニケーション能力や指導力、状況判断力など多岐にわたるものです。

育成対象者と年齢が近い指導者であれば、円滑なコミュニケーションを期待できますが、経験不足によって充分な指導ができないという懸念もあるでしょう。

育成対象者の現状と研修内容にマッチした指導者を選ぶためには、OJTの目的や指導方法を明確にしておく必要があります。

指導者側の状況や能力を加味した上で、「指導者をサポートする役割」を配置するのもひとつの方法です。

新たにテレワーク下でOJT教育を取り入れる場合は、指導者の再教育をこの段階で行いましょう。

ステップ(4)計画の立案

次は、指導者と育成対象者で現状レベルの確認を行いながら、計画を立案します。

目標を一つずつクリアしていく「積み上げ式」と、終了後に目指すべき姿から目標を立てる「逆算式」、どちらが適しているかを見極めましょう。

目標に向けた具体的なスケジュールや達成方法を熟考していくことが重要です。

育成対象者にも、事前に期待する「人物像」や研修の「全体像」を伝えれば、より高い効果が期待できます。

設計した育成計画通りに進まない場合は、早めに原因を探って対応策を考えるなど、目標に向けた行動が滞らないよう注意しましょう。

ステップ(5)計画の実行(OJTの実践)

計画立案後は、実際の職務現場での業務においてOJTを実践です。

指導者は、「Show(やってみせる)」「Tell(説明・解説する)」「Do(やらせてみせる)」「Check(評価・指導する)」といった4つのステップで実践します。

はじめは難度の低い業務から始めます。指導者の業務を見せながら、徐々に育成対象者が一人で行えるような流れを作っていきましょう。

指導者と育成対象者に具体的なゴールを明示することで、達成状況を確認できるだけでなく、育成対象者が目指すべき姿をイメージしやすくなります。

ステップ(6)フィードバック

最後に、目標やスケジュールと照らし合わせながら、できたことやできなかったこと、今後の課題などをフィードバックして確認し合います。

現場での「Check」で行う評価や指導だけでなく、定期的にフィードバックする時間を確保しましょう。

周囲の人たちが、新人をきちんと見ていると伝えることは、エンゲージメントの向上にもつながるため、定期的にフィードバックしながら目標達成を目指すとよいです。

OJTは、これら6つのステップを単発ではなく、反復的・段階的に継続して行うことが重要です。

育成担当者が一度で覚えられる場合もあれば、繰り返すことで習得できる場合もあることを理解し、継続して実行しましょう。

育成のプロに学ぶ、OJTの効果を高めるポイント

OJTの効果を高めるには、どのような方法があるのでしょうか。

数々の研修の講師として登壇実績が豊富なカケハシ スカイソリューションズ(以下、カケハシ)教育研修事業部の責任者に、効果的なOJTのやり方やコツを聞いてみました。

O.M
O.M
(株)カケハシ スカイソリューションズ
教育研修事業部 事業部長

OJTを導入する際、特に力を入れるべきステップは?

OJTのやり方6ステップの中で「目標設定」は重要ですね。

指導者側が自身の役割をきちんと知ることや、育成対象者が到達すべきところを把握するのは大切だと思います。

OJT教育は適宜指導できる点はよいのですが、リモートの場合は特に、意図してフィードバックの時間を設けないとコミュニケ―ションが取りづらいです。

指導者と育成対象者の両方が到達すべきところを明確にしておくことで、よくありがちな「育成対象者が放置されてしまう」という課題もなくなると思います。

また、実践のステップの中では、指導者と育成対象者の両者に工夫が必要だと思います。

指導者が隣にいれば、育成対象者は業務を見て真似てみたり、わからないことはすぐに聞けたりと、意図した指導以外の場面でも学べる環境にあります。

しかし、テレワークの場合は、「聞きたいときに聞けない」「相手が今何をしているかわからない」という状況にあるため、迷うこともあるでしょう。

自らアプローチしていかないと情報が得られない、指導されないということを伝えた上で、指導者も効率的な指導につなげるにはどうするとよいかを考えるなど、双方の「働きかけ」が求められます。

OJT導入後、効果をより高めるために、人事担当者や経営層にできることは?

コロナ禍以前のOJTでは、「新入社員の気持ちがわからない」という課題がありました。

残業抑制や働き方改革などにより、「仕事が終わるまで残業する」という考えから、「仕事は頑張りたいが、定時には帰りたい」という考えを持つなど、新入社員世代の意識が変化しているため、さまざまな考えを持つ新入社員への指導は難度が増しているのです。

育成対象者が持つ考えを理解し、仕事において何を目指しているのかを把握することが重要でしょう。

また、対面で指導が行える場合は、仕事を通してやり方を見せられます。

しかし、「背中を見て育て」という文化は時間を要し、徐々に時代にそぐわなくなってきているのが事実です。

OJTとしての「成果」を考えたときに、時代に沿って結果が出る指導に変えていくことが指導者だけでなく、人事担当者や経営層にも求められているのではないでしょうか。

OJTの導入企業に対し、カケハシが提供しているサービスについて詳しく教えてください。

カケハシではOJTの指導者向けに「OJTトレーナー研修」を提供しています。

「OJTの役割とは何か」と、働き方改革・テレワークの普及による世の中の変化を踏まえ、「かつて自分たちが受けたOJTのやり方とは変化している」ということを伝えています。

「どう育成するか」の前に「なぜ必要なのか」を指導者に理解してもらうことが、OJTを効果的に進める上では重要です。

カケハシの研修では、「マインドセット」もポイントとしています。

OJT指導者だけでなく、その上司や管理職など、OJTを進める上では部署内の連携が大切です。

指導者と育成対象者の「1対1」ではなく、部署内のあらゆる人材が「1対n」で関われるよう、OJTトレーナー研修を管理職が受ける企業もあります。

部署や企業全体の協力がある中での教育は、より効果を発揮しやすいと思います。

まとめ

OJTのやり方には6ステップありますが、テレワークを実施しているかや新入社員の意識など、企業によって抱える課題は異なるでしょう。

指導を行うには、指導者や部署にとどまらず、人事担当者や経営層など関わる人々を巻き込んでいくことが重要です。

今回の記事を参考に、新入社員の考え方や時代の流れを踏まえ、OJT教育を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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