人材の流動化が進む昨今、人事担当者にとって一番避けたいのは、コストをかけて採用をした社員が戦力となる前に離職してしまうこと。
離職防止・定着支援は今やどの企業にとっても重要なキーワードですが、そこで浮かぶのが「新卒入社と中途入社の離職は全く別の問題なのか?」という疑問です。
結論から言えば「別かもしれないが、同じかもしれない。」という回答になります。社会経験とスキルの2軸から考えていきましょう。
新卒社員と中途社員という二分法について
採用手法の多様化により、「ポテンシャル採用の新卒人材と即戦力採用の中途人材」という切り分けでは正確に現状分析ができない場面が増えているからです。
例えば、他社で1~3年間務めたのちの転職である第二新卒者では、社会人としての基礎力を期待する一方、自社の業界に関連する専門スキルは新卒者と変わらないことも多いでしょうし、社員の人脈を活用する手法としてリファラル採用も注目されていますが、採用される方の年齢層も保有スキルも業界経験も様々で一括りに論じることは容易ではありません。
そこで今回ご紹介したいのは、「社会経験」と「スキル」の2軸で切り分けゾーニングする考え方です。
もちろん自社内でも部署によって離職状況に違いはありますが、直近の離職者をここにあてはめてみることで、自社で特に重点的にケアをすべき層が再認識できたり、自社で起きている離職の傾向を掴む助けになるかもしれません。
社会経験の軸
社会経験の豊富さに応じて、職場への順応のために必要な支援は異なってきます。
社会経験が少ない場合
新卒入社が典型的ですが、その中でも大卒者と専門・高卒者でも経験に差がありますし、中途入社でも他社での経験が1年程度、という方もここに分類されるかもしれません。
社会経験が低ければ低いほど、自分から周囲に働きかけて関係を作ったりする力が低い傾向があり、まず職場に溶け込むことにも周囲からの支援が必要となります。
これはマイナス部分に見える反面、企業というものに先入観を持たない分、自社の文化へ素直に適応しやすい面もあります。
有効な施策例
- 挨拶の習慣、承認の声かけなど会話の活性化
- マナーや社内ルールなどの研修
- 上司との面談
社会経験が多い場合
社会人経験が長いほど、自ら周囲に溶け込んでの関係構築も苦にならない方が増えるでしょう。
一方で、自身の経験と照らし合わせ、自社や部署の文化への疑問や違和感を感じることもあり、対話を通じてそれらを解消してあげることが順応を促す上で重要となります。
有効な施策例
- 上司との面談
- 人事部など直接利害関係のない部署との面談
共通して大切なポイント
社会経験の豊富さで分けて考えつつも、あらゆる新入社員に共通して欠いてはならない視点として、「企業への共感を持っているか」ということがあります。
職場への順応をしていく上で、組織の考えや判断の軸が見えないことは大きなストレスになります。
社会経験の有無に限らず、まずはしっかりと自社のビジョンを理解させ、本人の仕事の意義や価値を言語化してあげることも重要な定着支援と言えるでしょう。
スキルの軸
スキルの高さにより、戦力化のために求められる支援の性質が異なってきます。
スキルが低い場合
入社後の伸びしろを期待されるポテンシャル採用の方で、新卒者が典型的ですが、第二新卒や業界未経験の若手採用も含まれる場合があります。
スキル面で活躍できる水準にないため、その引き上げのためのOff-JT(研修)や現場でのOJT教育という形での支援の割合が高まり、また成長を実感できるような環境を整えることも重要です。
相性の良い施策例
- Off-JT(研修)の充実
- OJT指導者の育成スキル向上
- 1on1などの振り返り面談導入や面談者のコーチングスキル向上
- スキルマップの整理スキルが高い場合
スキルが高い場合
高いスキルを持った方であれば即活躍してくれるのかと言うと、そうではないケースもあります。
採用時点で現場が求めるスキルとのミスマッチがあることもありますが、十分な能力を持っていても、自社の文化や慣行への理解不足や社内人脈の不足など、自社でスキルを活かすための「ツボ」が掴めず成果が上がらない、ということもあります。
そういった場合に、原因を本人の柔軟性に求めるのではなく、異なる文化を持つ方が自社の文化を理解するための対話の機会を多く用意することが大切です。
相性の良い施策例
- 人事部面談
- 部署間交流
- ケースワークなどを通じた判断軸の研修
社員間のコミュニケーションを活性化させたいなら
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おわりに
今回は社会経験とスキルの2軸で分ける考え方を紹介しましたが、離職には様々な背景があり、何か特効薬がすぐに見つかるわけではありません。
だからこそ、どこから手を付けていくべきなのか、優先順位を取り決めて計画を立てていくための分析が重要となります。
重要な課題である定着支援・離職防止の施策を考えていくうえで、この記事が少しでも助けになればとても嬉しく思います。
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