採用活動は大手企業より中小企業の方が圧倒的に難しいと言われています。
なぜ中小企業の中途採用は難しいとされるのでしょうか。
本記事では、中途採用が難しい理由を解説するとともに、採用上のハンデを抱える中小企業はどのような対策を打てばいいのかについて解説します。
目次
中途採用が難しいと言われる理由
近年、労働人口の減少により人手不足が深刻化したことで、中小企業に限らず中途採用自体が難しい状況にあると言われています。
まずは、中途採用そのものが難しい理由をご紹介します。
求人倍率が上がっている
2009年以降、有効求人倍率は増加傾向が続いています。
実際、2023年9月に厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況(令和5年8月分)について」によると、有効求人倍率は新型コロナウイルスの影響により2020年度は一時的に下がった時期がありましたが、その後も微増ながら増加の一途を辿っています。
有効求人倍率の上昇は、企業側からみると「採用の難易度が上がる」ことを意味します。このため、企業間での人材獲得競争が激化し、「中途採用自体も難しくなった」と考えられるでしょう。
(参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年8月分)について」)
即戦力の人材が少ない
企業側は、経験やスキルを持つ即戦力人材を求めます。しかし、採用市場は、すぐに現場で活躍できるような人材が少ないため、中途採用が難しいと考えられます。
即戦力となる人材は現場で活躍しており、企業が離職防止のために好待遇にしていることがあります。
さらに、実力のある人材が転職を考えた場合には「取引先からのスカウト」「フリーランスへの転身」など複数の選択肢があり、転職市場には現れにくいと考えられます。
人材を見極めるのが難しい
中途採用は、新卒採用に比べると人材の見極めが難しいことも要因として考えられます。新卒であれば、応募者全員が未経験者であるため、志望動機や適性などを基に選考が可能です。
しかし、中途採用の場合は、同業種の経験者や異業種からの未経験者もいます。経験者と言っても実際の職務経験は人によって差があったり、未経験者と言ってもポテンシャルが高かったりします。
さまざまな職歴や経歴の人材が応募してくることから、採用の見極めは容易ではなく、採用担当者に高い能力が求められるでしょう。
採用活動に時間をかけられない
中途採用は、人手不足や欠員補充を目的に実施されるケースが多く、早急に人材が必要なために採用に時間をかけられないことも、採用を難しくする要因と考えられます。
時間が限られると、応募者の適性を見極めきれずに採用することも。
その場合、企業と入社者の間にミスマッチが生じ、予想した成果を上げられないことも考えられるでしょう。
人材の見極めが難しい中途採用において、短期間で自社にマッチした人材を獲得することは極めて難しいと言えるのです。
中小企業の中途採用が難しいと言われる理由
中小企業の中途採用が難しい理由を大手企業と比較してみていきましょう。
- 知名度が低い
- マンパワー不足
- 「中小企業」という言葉のイメージが悪い
知名度が低い
中小企業は大手企業と比べ知名度が低い場合が多いです。このことは広告費にかけられる予算が少ないことも起因しているでしょう。
人は自分の知らないものや未知のものに対して恐怖心を抱くため、知らない企業より知っている企業を選ぶ傾向が高いといえます。
つまり、知名度が低いことは、残念ながら転職先として選択される可能性が低いということに直結すると考えられます。
マンパワー不足
中小企業であれば、人事担当が他業務を兼務しているケースが多く見受けられます。
大手企業が分業しているような人事関連の業務をすべて一人でこなした上で、他業務も兼任している場合には、採用業務に時間をさけなくても当然といえるでしょう。
他業務に圧迫され、ついつい応募者対応が後回しになってしまうということも多いのではないでしょうか。
しかし売り手市場がつづく昨今、応募者対応は可能な限り早くおこなわなければ、優秀な人材であればあるほど他企業にとられてしまう可能性が高くなります。
こうしたマンパワー不足も中小企業の中途採用を難しくする要因の一つといえるでしょう。
「中小企業」という言葉のイメージがあまりよくない
よくある中小企業のイメージをあげてみましょう。
・安定していない
・給料が低そう
・福利厚生が充実していない
・研修制度がない
・休みが少ない
・残業が多く、残業手当の支給もない
実際は決してそんなことはないにも関わらず、上記のようなイメージが求職者の中で蔓延しています。
中途採用の場合、新卒採用と比べて給与や就労環境といった雇用条件に重きをおいて転職活動するケースが多いように思います。
厳しいことをいうようですが、前述のような悪いイメージから求職者がそもそも応募すらしないというのが現実なのです。
中途採用で失敗するケース
どのような場合に中途採用が失敗していると判断すべきなのでしょうか?
具体的なケースを3例挙げてみていきましょう。
求人募集をかけても応募者が集まらない
求人募集をかけても応募者がなかなか集まらないことで、中途採用での人材確保に失敗するケースも多いです。求める人材が応募しないといったケースもあるでしょう。
応募者が集まらない原因は、以下のような理由が考えられます。
・知名度が低く、応募者が不安に感じる
・他社に比べて、給与や労働条件が劣っている
・転職市場に存在しにくい人材を募集している など
採用可否の判断が遅い
せっかく求める人材からの募集があっても、採用可否の判断が遅いことで失敗するケースもあります。
中途採用に応募する求職者は、同時に複数企業の選考を受けていることも多く、なるべく早く転職先を確定したいと考える方が一般的です。
そのため、採否の意思決定が遅いと、採用可否の連絡が早い企業の方へ入社を決断してしまい、結果的に採用に失敗するのです。
入社後のフォロー不足により早期離職につながる
無事に入社に至ったとしても、入社後のフォロー不足によって早期離職につながることもあります。
特に未経験者は、業務の基本から分からないため、手厚いサポートが必要となります。社会人の経験があるからと言ってフォローを疎かにすると、早期離職を招くきっかけになるでしょう。
また、業務経験がある人材を採用できた場合も、入社後のフォローは不可欠です。
業務ルールの共有や、相談先のサポートといった支援が不足すると、不安感を募らせ早期離職につながることが考えられます。
中途採用がうまくいかない時の対処法
中途採用がうまくいかない時はどのように対処するとよいのでしょうか?
対処法をご紹介します。
採用基準を明確に決める
必要とする人材を採用するためには、採用基準を明確にすることが大切です。
採用基準を決める際は、転職市場の調査や現場へのヒアリングを通して、求める人材の具体的なペルソナ設計を実施します。
経験者の場合は「〇〇の職務経験が1年以上」「〇〇資格所有者」など具体的な内容があると分かりやすいです。
未経験の場合は「経験の有無を問わず、成長意欲を持って自社事業でチャレンジしたい人」などの具体的な設定をおこなうことで、ポテンシャルの高い人材獲得につながります。
採用方法や手順を見直す
採用手法によって獲得しやすい人材は異なるため、採用方法を見直すことも重要です。「採用基準」と「自社の採用課題」を照らし合わせ、最適な採用方法を検討しましょう。
多くの求職者の目に留まりやすくするため、1つの手法だけでなく複数の手法を組み合わせることもおすすめです。
また、確実に採用に結びつけるために、採用手順の見直しも不可欠。
特に、応募者へのファーストコンタクトや採用可否の意思決定はスピードが重要です。少しでも早くこちらの意志を伝えたいときには、連絡ツールの活用なども検討しましょう。
中小企業向けの中途採用がうまくいかない時の対処法
ここまで中小企業の中途採用が難しい理由をお伝えしてきました。では具体的には何を改善すれば中小企業の中途採用がうまくいくのでしょうか。
知名度を上げることは一朝一夕で実現できるものではありません。地道なブランディングが必要になるでしょう。
そこで改善のポイントとなるのは、マンパワー不足の解消と、求職者が抱くマイナスイメージをいかにして払拭するかという点です。
マンパワー不足を解消する
もっとも手っ取り早いマンパワー不足の解消法は増員でしょう。しかしそう簡単に増員できないのが現実ですよね。そこで整理したいのが、「その採用業務は時間をかけておこなうべき業務か」ということです。
最近では、応募者管理を一元化することで効率化をはかることのできる採用管理システム(ATS)を導入する企業様も増えてきました。または、一部業務を外部に委託する採用代行(RPO)を利用される企業様もいます。
多少費用はかかりますが、社内のリソースだけで対応しようとして一部業務がおろそかになってしまい、結果として採用がうまくいかないようでは元も子もありません。
今の社内のリソースだけで果たしてすべての業務をこなせるのか、今一度考えてみてはいかがでしょうか。
マンパワー不足の解消については、以下の記事でより詳しくお伝えしています。採用業務の効率化をはかりたい方は、ぜひ合わせてご一読ください。
求職者が中小企業に対して抱くマイナスイメージを払拭する
中小企業に対するマイナスイメージは求職者が勝手にイメージしていることなので、求人広告の打ち出し方をうまく工夫すればその思い込みを覆し入社に結びつけることが可能です。
悪いイメージを払拭するにはどうすればいいのでしょうか。イメージを変える求人広告を作成する上でもっとも意識しておきたいことは「具体性」です。
伝えたい自社の魅力に具体性があればあるほど求職者のイメージは良い方向に変わります。説明されるだけではなかなかわかりにくいと思うので、中小企業が失敗しがちな中途採用の求人広告打ち出しの具体例を出してみていきましょう。
・若くて活気あふれる社風です
・未経験者も大歓迎です
・異業種からの転職者も数多く活躍しています
上記のようなフレーズは求人広告でよく見かけますが、どこの会社でもいえるありふれた打ち出しだといえます。
社名を変えても違和感がないようなメッセージでは求職者にとって魅力的に感じられることはありません。
今求人広告に打ち出しているメッセージは自社でしかいえないことですか。この機会に改めて自社の求人広告の打ち出しを振り返ってみてはいかがでしょうか。
中途採用を成功させるポイント
中途採用を成功させるために押さえておきたいポイントは以下の3つです。
- 自社の魅力を伝え、他社と差別化する
- 広報活動を積極的におこなう
- 待遇や福利厚生を見直す
自社の魅力を伝え、他社と差別化する
中途採用を成功に導くためには、まず応募者を増やすことが重要です。求職者に自社の魅力を伝え、他社との差別化を図ることを検討しましょう。
自社の実績や社員へのヒアリングを基に競合他社と比較分析をすることで、採用市場における自社の強みや魅力が把握できます。
求職者に向けて、自社に入社するメリットを的確にアピールできると、自社への関心につながり、応募者数の増加に貢献するでしょう。
フレームワークを活用しよう
自社の魅力に気付き、競合他社と差別化できるポイントを把握するには「フレームワークの活用」が有効です。フレームワークとは、問題解決や分析、意思決定などをおこなう際の思考の枠組みです。
フレームワークを採用活動に取り入れることで、自社の強み・弱みの客観的な掘り下げにつながり、求職者にアピールすべきポイントが明確になります。その他、転職市場での立ち位置や競合他社との違いなど、漏れのない分析も可能となるでしょう。
フレームワークの例を紹介
フレームワークの手法 | 内容 |
KJ法 | グループに分かれてアイデアを出し合うブレインストーミングを活用し、出てきた意見をグループ化して整理・分析をする方法 |
3C分析 | 「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3項目に応じて、自社を分析する方法。 自社が求める人材のペルソナを設定し、ペルソナから見た自社や競合他社の強み・弱みを洗い出す。 |
SWOT分析 | 「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4項目から、自社の内外の環境を分析する方法。 「強み×脅威」「弱み×機会」など、それぞれの内容をかけ合わせ、競合他社との差別化を検討。 |
広報活動を積極的におこなう
自社が求める人材からの応募を促すため、採用に向けた広報活動も積極的に実施しましょう
例えば、求人媒体には、通常の求人情報だけでなく、具体的な仕事内容や働き方、職場の雰囲気などを加えるのがおすすめです。
求職者が抱くミスマッチを軽減し、早期退職のリスクを抑えることができるでしょう。
また、自社メディアの運用やSNS発信などを取り入れることで、広告コストを抑えた広報が実現できるでしょう。
待遇や福利厚生を見直す
転職先を選ぶ基準として、「勤務形態」や「福利厚生」を重視する求職者が多い傾向にあります。
そのため、求職者が自社を魅力的に感じられるように、待遇や福利厚生を見直すことも検討しましょう。
具体的には、「在宅勤務制度やフレックスタイム制の導入」「特別休暇制度の創設」などが挙げられます。
自社事業の特性を活かし、ユニークな福利厚生を検討して自社の強みとしてアピールするのもよいでしょう。
採用の成功事例を紹介
中途採用の成功事例を4つピックアップしてご紹介します。
求人広告を活用しドライバー採用に成功
課題
千葉県に本社がある、従業員50名以下の運送業社では、これまで、ハローワークだけで採用ができていました。
しかし、近年のドライバー需要の高まりに伴い応募人数が減少し、最終的には3カ月間の応募者数が0名となり、人手不足の状態に。
事業拡張のためには、ドライバー確保が急務でしたが、どのように対処すれば採用ができるのか悩んでいました。
解決策
他のドライバー応募求人との差別化を強化するため、ドライバー志望者に響く入社の魅力とは何かを徹底的に洗い出し、自社にしかない魅力を整理。
「ドライバーの夢をかなえる」という採用コンセプトのもと、わかりやすく求人広告に魅力を表現しました。
成果
求人広告を工夫し、求職者に自社の魅力がわかりやすく伝わったことで、「ドライバーのやりたいことが実現できる」「夢のような歓迎ぶり」と好評となり、40名の応募を獲得。11名のドライバー採用に成功しました。
ダイレクトリクルーティングから求人広告の掲載に切り替え、採用に成功
課題
東京都に本社がある、従業員300名以下の通信土木・通信工事事業社では、近年採用手法として注目されるダイレクトリクルーティングを活用するも、反応がなく応募者0名の状況が続いていました。
年度末までに施工管理職を確保しなければならない状況でしたが、採用の目途が立たず困っていました。
解決策
採用チャネルをダイレクトリクルーティングではなく、求人広告掲載に切り替えました。
中小企業の土木工事業務に携わっている方に向けて、自社に入社すれば抱えている悩みが解決できることを具体的にアピールしました。
成果
求人広告への掲載に切り替え、中小の土木工事企業に勤務している方の悩みにダイレクトに訴えたことで、自社への惹きつけに成功し、応募者数が1カ月で45名に達しました。
応募者の中には、有資格者から20代の未経験者まで幅広い人材の応募を獲得。最終的に、有資格者1名を含む3名の採用に成功しました。
訴求内容を変更し、20代からの応募を獲得し採用に直結
課題
東京都にある、従業員100名以下の投資型マンションの設計・販売を手掛ける企業では、若手営業職の募集に苦戦していました。
「20代で年収1000万の社員も在籍」など、採用したい20代が魅力に感じるような内容を求人広告に打ち出すも効果がなく、高待遇を謳っても採用に直結しない悩みを抱えていました。
解決策
「年収1000万」といった高待遇であっても、近年の若者には魅力的に感じられず、不信感を抱く可能性もあると考えて、求人広告の打ち出し方の修正を検討。
若者が抱きやすい悩みに触れ、入社することで悩みが払拭されることをアピールポイントとして訴求しました。
成果
求人広告の内容を、若者の悩みに共感し、入社によって解決できることをアピールする内容に変更したことで、合計28件の応募を獲得。自社の求める20代の応募は、28件中20件に達しました。
有名国立大学卒の優秀な人材などからも多数の応募があり、結果的に採用したかった20代2名の採用に成功しました。
まとめ
今回は、中小企業の中途採用が難しい理由や中途採用を成功させるポイント、成功事例を解説しました。
現在、慢性的な人手不足によって中途採用市場は厳しさを増しており、中小企業にとってはその影響が顕著となっています。
中途採用を成功に導くためには従来の方法の見直しが不可欠です。今回の内容を参考に、自社の魅力を最大限にアピールし、採用に結び付く施策を検討しましょう。
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