現在、全産業の平均就業者数は大きく変わらないのに対し、建設業界では就業者が1997年を境に減少し続けており、建設業の人材不足は深刻な状況にあります。
「採用難といわれる建設業で、どのような方法で採用を行うとよいのか」と考える人事担当者や管理職層も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、建設業が採用難に陥っている原因をもとに、採用を成功させるコツをご紹介します。
目次
建設業における採用難の現状
昨今の建設業における採用難は、年々増している状況にあります。
厚生労働省によると、平成31年度の有効求人倍率は、建設の職業が5.38、電気工事の職業が3.85、土木の職業が6.14と、全職種で大幅に人手不足が生じていることがわかります。
特に建設躯体工事の職業は、有効求人倍率が11.64と人手不足が顕著です。また、建設業全体の有効求人倍率は5.75であるのに対し、全産業の有効求人倍率は1.53と、全作業から見ても建設業の有効求人倍率は非常に高いことがわかるでしょう。
(参考:厚生労働省『 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))』)
建設業が採用難に陥っている原因とは
建設業の厳しい採用状況下にいる採用担当者の方の中には「そもそもなぜ人手が不足しているのだろうか」「この環境下で本当に優秀な人材を確保できるのだろうか」と気になる方もいるでしょう。
建設業の採用難の原因は、大きく分けて3つあります。
- 離職率の増加
- 好景気による需要の拡大
- 若者離れと高齢化
原因(1)離職率の増加
厚生労働省の調べによる、建設業離職者が仕事を辞めた理由には、「作業に危険がある」「賃金と労働が見合わない」「休みが取りづらい」「遠方の作業が多い」「雇用が不安定である」などが挙げられています。
建設業に就職したものの、これらの理由から定着せずに離職してしまうケースが多く見られているようです。なかでも最も離職の引き金となる理由は「賃金と労働が見合わない」といわれています。
建設業では長時間労働が多い中、企業によっては日給制であるために収入が不安定になる傾向があります。また、現在の日本の建設業には公的な資格が存在しないため、技術を証明したり正しく評価したりできる仕組みがありません。
そのため、給与設計をする際の目安が明確ではなく、給与額は企業の裁量によって異なってしまうことが「賃金と労働が見合わない」と感じる原因となっているのでしょう。
原因(2)好景気による需要の拡大
近年、東日本大震災の復興事業やアベノミクスによる公共事業の増加、さらには東京五輪に向けた施設の新設など、建設業への需要は大きく増えています。
不況に見舞われていた建設業界は、需要の拡大により再び活気づいてきました。その一方、建設業では増加した需要をまかなえる人材が確保できておらず、就業者にとっては一人あたりの負担する業務が増大しているという現状に陥っています。
「請け負った案件が余裕を持って回せない」「技術者にしわ寄せが来て残業時間が増える」といった状況です。そのため、健康面や安全面、長時間拘束といった負担に耐えかねて、離職してしまうケースが頻発しているようです。
原因(3)若者離れと高齢化
現在の建設業は、若年層の在職者が減少傾向にあります。若手が業界を離れることや、そもそも若手が入職しないことで、在職者の高齢化が進む一方といえるでしょう。
そのため求人数は多く、様々な職種で好待遇な求人が目立っています。しかし、よりよい待遇をされるのは、資格保有者や実務経験者といった1級人材に限られます。
現場で働く職人の人手不足のみではなく、職人を動かす技術者層も人手不足に陥っているのが現状です。若手および中堅の技術者が不足していることから、建設業では採用難が起きていると考えられています。
建設業界の難しい採用を成功させるには
難しいとされる建設業界での採用を成功させるには、どのようなポイントがあるのでしょうか。中途採用コンサルタントに、採用のコツや成功事例を聞いてみました。
中途事業部リーダー
中途採用コンサルタント
採用難の建設業界での採用では、採用者の年齢層や経験層など、ターゲットをどこに絞るとよい?
採用者のターゲットは、「建築学部を卒業した若年層」か「50代の資格保有者」のどちらかに絞るとよいと思います。
人員不足の現状から1人でも多く採用したいがために、「若手からベテランまで、多数活躍できるためどなたでも採用できます」と打ち出す企業が多いです。
建設業界の特徴として、過去にリーマンショックや民主党政権の影響により、中小ゼネコンの倒産が続き、大企業でも採用を抑制していた時期があったため、現在30代の在職者がほぼいないといった現状があります。
しかし、一般的に企業で30代の未経験者を採用するのはリスクが高く難しいでしょう。そのため、建築業界での採用を成功させるためには、幅広い人材をターゲットにするのではなく、企業にとって必要な人材にターゲットを寄せる方がよいと思います。
各社どのように中途採用を行っている?効果的な方法は?
建築業界の企業では、求人広告、人材紹介、ダイレクト・リクルーティング、ハローワーク、派遣など、多種多様な採用手法を使って中途採用をしている企業が多いです。
その中でも建設業は、「よい人材がいれば採用したい」と、人材紹介の割合は非常に高いですね。しかし、人材紹介への登録企業は多いですが、採用成功率は低いと思います。
実際に中途採用が成功している企業の6~7割程度は、求人広告を使っているケースが多いと感じています。
よい人材がいたら紹介してもらうという「待ち」の姿勢ではなく、求人広告やダイレクト・リクルーティングのスカウトをするなど「攻め」の姿勢で戦っている方が採用成功率は高いです。
求人広告は、企業が求める人材や働くメリットを伝えられることが、効果が出る前提といえますね。
また、人材紹介でずっと採用を行っている企業は成長できないと感じていて、「人が来ないから仕方ない」で終わってしまいがちです。
求人広告などで戦っている企業は、「この待遇では採用できない」「この魅力では集まらない」などと組織の内部に目を向けるようになります。
採用がうまくいくのは、待遇の嘘や誇張表現ではなく、常に戦い続けることで「ターゲティングが違った」「採用対象を変えよう」といった学びや事実につながり、企業時代の「採用力」が上がっていくからだと思います。
「中途媒体だから採用できる」のではなく、「中途媒体でも戦っていく」ことで強くなっていくイメージです。
まとめ
建設業では離職率の増加や若者離れ、技術者の高齢化に拍車をかけて、需要の拡大が進んでいます。中途採用を行う際は、ターゲティングや方法を常に考えていくことが大切です。
「待つ」だけでなく「攻め」ていくことで、組織の採用力にもつながっていくでしょう。また、自社でのターゲットの設定や採用への対応が難しい場合は、アウトソーシングや専門のコンサルタントへの依頼もおすすめです。
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