出戻り社員とは、過去に在籍していた企業で再び雇用された社員のことを指します。
近年、一度退職し他社で働いた元社員からの「戻りたい」という思いに着目し、出戻り社員を積極的に受け入れる企業が増えています。
今回は、出戻り社員が注目される背景や、出戻り社員を再雇用する場合のメリットとデメリット、再雇用の際のポイントを解説します。
目次
出戻り社員が注目される背景
出戻り社員が注目される背景には、近年の社会状況から次の3つの要因があると言えます。
(1)労働人口の減少
日本では少子高齢化に伴う労働人口の減少が社会問題となっています。
既に経験者である即戦力を確保したいと考えた場合、出戻り社員を採用すれば人材の補填をすることが可能です。
(2)働き方の多様化
働き方の多様化に伴い人材の流動性が高まり、優秀な人材ほど転職を検討する傾向が見受けられます。
元社員が再び働きたいと考えた時に、受け入れられる環境を整備することは、企業にとって人材確保のチャンスとなります。
(3)優秀な人材の確保が必要
新しい人材を採用した場合、その人材が活躍できるかどうかは実際に業務をしてみるまで未知数です。
一方、出戻り社員であれば過去のパフォーマンスから、入社後の活躍を見込める人材か判断できるため、より優秀な人材の採用につなげられます。
実は、出戻り社員に力を入れている企業も多い
実際に出戻り社員を受け入れている企業は、どのくらいあるのでしょうか。
マイナビが全国の民間企業を対象に実施した「中途採用状況調査2021年版」によると、2021年に出戻り社員の再雇用を実施した会社の割合は52.7%という結果でした。
従業員数301名以上の企業では7割弱の企業が、また上場企業でも7割を超える企業が出戻り社員採用を実施しており、ベンチャー企業・大手企業など多くの企業で出戻り社員の受け入れに力を入れていることがわかります。
(参考:マイナビ「中途採用状況調査2021年版」)
出戻り社員のメリット・デメリット
出戻り社員を再雇用するメリットとデメリットをみていきましょう。
メリット
出戻り社員を採用することは、「即戦力となる」ことと、「他社での経験を還元できる」というメリットが期待できます。
出戻り社員に対しては、通常新たに入社した社員に向けておこなう研修全てを実施する必要がありません。会社のカルチャーをよく理解したうえで、ギャップなく業務を進め即戦力としての活躍を期待できるからです。
育成コストが省けるため、非常に費用対効果の高い採用であることがメリットと言えます。
また他社での業務経験を経て、過去に在籍していた時よりもスキルアップしていることも期待できます。具体的には仕事の進め方の違いや社内ツールの活用経験、マネジメント方法など、他社で得た経験やノウハウを自社に還元できるでしょう。
環境を変えた期間があったからこそ、自社内では思いつかないような新しい発想を期待できる点も大きなメリットとなります。
デメリット
出戻り社員を採用することで生じるデメリットとして、「既存社員との待遇バランスにより、軋轢を生む可能性」や、「出戻り社員が過去の経験や実績に固執することへの課題」が考えられます。
出戻り社員を受け入れる際には、既存社員との待遇バランスを考慮する必要があります
。長く会社に在籍し貢献してきた社員からすれば、途中で辞めて戻ってきた人材の方が高く評価されることを不公平と感じ、既存社員との間に軋轢を生んでしまうリスクがあるためです。
また、会社は常に進化を続けていることから、過去の在籍時と再雇用時が同じ状況とは限りません。出戻り社員の在籍時に実行していた仕事の進め方が通用しない可能性もあります。
出戻り社員にとっては「完全なる新たな環境」ではないからこそ、過去の経験や実績という固定概念から、現状のやり方へ適応できず、変化を受け入れづらい可能性もあります。
出戻り社員の受け入れを決めた際には、このような特有のリスクがある点にも目を向けなくてはなりません。
出戻り社員採用のためのアプローチ方法
出戻り社員採用のためのアプローチ方法として、「退職者のネットワークの構築・活用」が効果的です。
退職した人材と現役社員がつながることのできるコミュニティをSNS上に形成しておくことで、再雇用ニーズが発生した際にすぐに情報発信をすることが可能になります。
またこうしたコミュニティがあることで、再び働きたいと思った退職者からも企業側に再雇用の相談をしやすくなります。
出戻り社員の待遇面など、雇用の際のポイント
出戻り社員を迎える際には、再雇用制度を構築し、再雇用のための条件や選考基準、待遇についてあらかじめルールを設ける必要があります。
既存社員から不平不満の声が挙がる、モチベーションが下がるなどの問題が生じないよう、社内への周知・理解の徹底も重要です。
再雇用の際には、出戻りを希望する社員が、退職後にどのような業務を経験してきたのか、仕事に対する向き合い方は以前と変わっていないかなどをヒアリングします。
その上で、「現在」の職場とのマッチングを判断し、給料・ポジション・労働条件・業務内容などの待遇面における説明をしましょう。
出戻り採用の場合、書類選考の免除など一般公募よりも効率的な採用を進める傾向がありますが、雇用契約の内容をはじめ重要な確認事項は、きちんと書類に落とし込んでやり取りをしなくてはなりません。
実際に出社し働きはじめた際のポイント
出戻り社員を再雇用して働き始めるまでに、過去の退職理由となった原因が現在は解決されているか確認することが重要です。
退職理由によっては、再雇用後も同様の問題が生じ、再び退職してしまう可能性もあります。企業側の制度や待遇について不満があって退職した場合には特に注意が必要なため、前回の退職理由はしっかりとヒアリングしましょう。
また、実際に働き始める際に出戻り社員の懸念となるのが、「周囲に受け入れられるか」という点です。出戻り社員の受け入れ体制は、組織と既存社員一人ひとりの「意識」の問題です。
出戻り社員が戻ってきた際に居心地の悪さを感じると、よいパフォーマンスを発揮するための妨げや再び退職してしまうことにもなりかねません。
そのため、「出戻りを許す」ではなく、「出戻りを歓迎する」雰囲気を醸成する必要があります。
出戻り社員採用で押さえておくべき注意点とは
会社側が出戻り社員を再雇用する際に押さえておくべきポイントは、「なぜ出戻り採用を実施するのかの目的を明確にする」ことです。
出戻り社員の採用は、あくまでも採用手法の一つです。現在組織が抱えている人材の採用や定着についての課題について、出戻り社員の採用を導入することで解決できるのかをしっかり見極め、目的を設定しましょう。
また、出戻り社員採用について定期的に振り返りをおこなうことも重要です。応募から採用の歩留まりを見つつ、課題箇所を洗い出し改善しましょう。
実際に再雇用した出戻り社員の活躍状況や、周囲との人間関係に問題が起きていないかを確認することも必要です。
出戻り採用は、退職者誰でも戻れる制度ではなく、目的に合わせアプローチ対象を絞り、周囲とのハレーションを生まないよう、注意深く実施していく必要があります。
まとめ
人材の獲得競争がより激しくなっていくと予想される中、企業はこれまで通りの採用方法だけでは、人手不足に陥る可能性があります。
今回の記事を参考に、組織の活性化や業績アップを図るための重要な人事戦略として、出戻り社員の採用を検討してみてはいかがでしょうか。
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