中途採用ノウハウ

出戻り社員を採用する背景とメリット、アプローチ方法とは

出戻り社員を採用する背景とメリット、アプローチ方法とは

出戻り社員とは、過去に在籍していた企業で再び雇用された社員のことを指します。

近年、一度退職し他社で働いた元社員からの「戻りたい」という思いに着目し、出戻り社員を積極的に受け入れる企業が増えています。

今回は、出戻り社員が注目される背景や、出戻り社員を再雇用する場合のメリットとデメリット、再雇用の際のポイントを解説します。

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出戻り社員の定義と特徴

出戻り社員とは、一度退職したのちに再び同じ企業に戻って働く社員のことを指します。

退職理由や退職後の経験は関係なく、育児や介護など家庭の事情で退職したのちに雇用される場合も、出戻り社員に含まれます。

ただし、一般的に定年退職後に再雇用された社員は、出戻り社員とは呼ばないので注意しましょう。

また、「出戻り」という言葉がネガティブに捉えられることもあるため、最近では卒業生・同窓生という意味を持つ「アルムナイ」が使われるケースも増えています。

出戻り社員が注目される背景

出戻り社員が注目される背景には、近年の社会状況から次の3つの要因があると言えます。

(1)労働人口の減少

日本では少子高齢化に伴う労働人口の減少が社会問題となっています。

既に経験者である即戦力を確保したいと考えた場合、出戻り社員を採用すれば人材の補填をすることが可能です。

(2)働き方の多様化

働き方の多様化に伴い人材の流動性が高まり、優秀な人材ほど転職を検討する傾向が見受けられます。

元社員が再び働きたいと考えた時に、受け入れられる環境を整備することは、企業にとって人材確保のチャンスとなります。

(3)優秀な人材の確保が必要

新しい人材を採用した場合、その人材が活躍できるかどうかは実際に業務をしてみるまで未知数です。

一方、出戻り社員であれば過去のパフォーマンスから、入社後の活躍を見込める人材か判断できるため、より優秀な人材の採用につなげられます。

実は、出戻り社員に力を入れている企業も多い

実際に出戻り社員を受け入れている企業は、どのくらいあるのでしょうか。

マイナビが全国の民間企業を対象に実施した「中途採用状況調査2021年版」によると、2021年に出戻り社員の再雇用を実施した会社の割合は52.7%という結果でした。

従業員数301名以上の企業では7割弱の企業が、また上場企業でも7割を超える企業が出戻り社員採用を実施しており、ベンチャー企業・大手企業など多くの企業で出戻り社員の受け入れに力を入れていることがわかります。

(参考:マイナビ「中途採用状況調査2021年版」)

出戻り社員のメリット

企業が出戻り社員を再雇用するメリットについて解説します。

  • 即戦力としての期待
  • 採用・育成コストの軽減
  • ミスマッチによる早期離職の低減

即戦力としての期待

出戻り社員の採用は、即戦力として期待できるのが大きなメリットです。

出戻り社員は、すでに会社のカルチャーをよく理解しているため、ギャップなく業務を進める即戦力としての活躍を期待できます。

また他社での業務経験を経て、過去に在籍していた時よりもスキルアップしていることも期待できます。

具体的には仕事の進め方の違いや社内ツールの活用経験、マネジメント方法など、他社で得た経験やノウハウを自社に還元できます。

別の環境で過ごした期間があったからこそ、自社内では思いつかないような新しい発想を期待できる点も企業にとって有益と言えます。

採用・育成コストの軽減

採用・育成コストを軽減できるのも、出戻り社員を採用するメリットの一つです。

自社での勤務経験があることから、社員の人となりや能力・スキルなどを企業側がある程度把握しているケースがほとんどです。

そのため、通常の採用と比較すると面接や選考過程において採用プロセスが短く済み、コスト軽減につながります。

また、出戻り社員は企業の業務フローや人事評価システム、社風などを熟知しているため、通常おこなう新入社員向けの研修やオンボーディングなどをすべて実施する必要がありません。

育成コストが省けるため、費用対効果が非常に高い採用と言えます。

ミスマッチによる早期離職の低減

自社を熟知した社員の再雇用により、入社後のミスマッチによる早期離職を防げるのも大きなメリットです。

優秀な人材を採用できたとしても、「思っていた業務と違った」「社風に馴染めない」といったミスマッチによる早期離職の可能性は少なくありません。

その点、出戻り社員は自社の内情を知っているため、こうしたミスマッチの発生は起こりにくいと言えます。

出戻り社員は企業風土や職場の雰囲気などを理解しており、業務に専念できることから高いパフォーマンスも期待できます。

採用難の昨今において、ミスマッチを減らし定着率を高められる出戻り採用は、企業にとって有用な採用手法の一つとなり得ます。

出戻り社員のデメリット

出戻り社員の採用においてメリットを得られる一方で、注意すべき懸念点もあります。
ここでは、主なデメリットについてご紹介します。

  • 過去の経験や実績に固執
  • 既存社員のモチベーションの低下
  • 既存社員の離職の可能性が高まる

過去の経験や実績に固執

いくら過去に勤務経験があるといっても、会社は常に進化を続けていることから、過去の在籍時と再雇用時が同じ状況とは限りません。

出戻り社員の在籍時に実行していた仕事の進め方が通用しない可能性もあります。

出戻り社員にとっては「完全なる新たな環境」ではないからこそ、過去の経験や実績という固定観念から現状のやり方へ適応できず、戸惑いが生じるケースもあります。

出戻り社員の在籍時と現在で会社が大きく変化している場合は、都度研修を実施するなど必要な対応が求められます。

また、給与や待遇についても、離職前と同等の条件を提示できない場合には、入社前に話し合っておく必要があります。

既存社員のモチベーションの低下

出戻り社員を採用することで、既存社員のモチベーションが低下してしまう恐れがあります。

出戻り社員の人事評価は、過去の自社での実績に加え転職先での経験やスキルを加味するため、好待遇になるのが一般的です。

しかし、長く会社に在籍し貢献してきた社員からすれば、途中で辞めて戻ってきた人材の方が高く評価されることを不公平と感じ、モチベーションや生産性の低下を招く可能性があるため注意が必要です。

既存社員との待遇バランスを考慮しなければならない点は、出戻り社員を受け入れる際の難点と言えます。

既存社員の離職の可能性が高まる

積極的に出戻り社員を採用することによって、既存社員の離職率を高めることが懸念点として挙げられます。

「転職先が合わなくても、また同じポジションで再雇用してもらえるだろう」と考え、退職者が増えてしまうリスクがあります。

出戻り社員の採用事例が増えることで、既存社員の転職に対するハードルを下げてしまい、結果として人材流出を助長してしまう恐れがあるため注意が必要です。

出戻り社員の再雇用の際には、このような特有のリスクがある点にも目を向けた上で導入を検討しましょう。

出戻り社員採用で注意すべきポイント

出戻り社員の採用におけるメリットとデメリットを理解したところで、実際に出戻り社員を再雇用する際に企業側が押さえておくべきポイントについて、以下で解説します。

  • 再雇用の制度を構築する
  • 既存社員への周知を徹底する
  • 再雇用時の条件やキャリアプランを明確にする
  • アルムナイ制度の検討

再雇用の制度を構築する

出戻り社員を迎える際には、再雇用制度を構築し、再雇用のための条件や選考基準、待遇についてあらかじめルールを設ける必要があります。

既存社員とのバランスを取るためにも、給与や役職といった条件や待遇面の設定には配慮が求められます。

離職前と同程度にするのか、離職後の他社での経験を踏まえて待遇を厚くするのかなど、基準や方針を決めておきましょう。

これらのルールを明確にしておくことで、出戻り社員との条件や待遇に関しての齟齬を防ぐだけでなく、既存社員への理解を促し、不平不満や混乱を極力抑えられるようになります。

また、出戻り採用の場合、書類選考の免除など一般公募よりも効率的な採用を進める傾向がありますが、雇用契約の内容をはじめ重要な確認事項はきちんと書類に落とし込んでやり取りをしなくてはなりません。

出戻り社員の再雇用は、組織全体のモチベーションや信頼関係にも影響を及ぼすため、制度の構築には慎重に取り組みましょう。

既存社員への周知を徹底する

既存社員から不平不満の声が挙がる、モチベーションが下がるなどの問題が生じないよう、社内への周知の徹底も重要です。

「なぜ再雇用をおこなうのか」といった事前説明だけでなく、採用が決まった際には、その経緯や理由などを既存社員へ共有することで理解を促せます。

加えて、出戻り社員の配属先の社員には、入社後のポジションや役割を伝えてフォローを要請しましょう。

離職からどのくらいブランクがあり、自社がどのように変化しているかを周囲が理解しておくことで、入社後の適切なサポートがおこなえます。

しっかりとした事前説明をおこない、出戻り社員と既存社員の双方が混乱しないよう対策することで、入社後のスムーズな活躍につながります。

再雇用時の条件やキャリアプランを明確にする

再雇用の際には、条件やキャリアプランについてしっかりと話し合うことが大切です。

出戻りを希望する社員が、退職後にどのような業務を経験してきたのか、仕事に対する向き合い方は以前と変わっていないかなどをヒアリングします。

その上で、「現在」の職場とのマッチングを判断し、給料・ポジション・労働条件・業務内容などの待遇面における説明をしましょう。

出戻り社員が入社後の役割や責任を理解・納得することで、ギャップを防ぎます。

また、出戻り社員のキャリアプランについても話し合いが必要です。

どのようなキャリアプランを描いていて、その実現のために必要なスキルや経験は何か、といったことをヒアリングしておけば、配属先を決める検討材料にもなります。

アルムナイ制度の検討

アルムナイ制度とは、一度退職した人材を再び採用すること、または退職者をリソースとして捉え、活用する仕組みのことを指します。
「カムバック制度」や「出戻り制度」とも呼ばれています。

退職後も企業と交流できる場を設けることで、社内の状況や雰囲気を知れるため、復帰を考えた際の心理的なハードルが下がります。

具体的には、退職後も企業の情報をサイトやSNS、イベントを通じて発信し、元社員とのつながりを維持する取り組みなどが挙げられます。

出戻り社員採用のためのアプローチ方法

出戻り社員採用のためのアプローチ方法として、「退職者のネットワークの構築・活用」が効果的です。

退職した人材と現役社員がつながることのできるコミュニティをSNS上に形成しておくことで、再雇用ニーズが発生した際にすぐに情報発信をすることが可能になります。

またこうしたコミュニティがあることで、再び働きたいと思った退職者からも企業側に再雇用の相談をしやすくなります。

まとめ

人材の獲得競争がより激しくなっていくと予想される中、企業はこれまで通りの採用方法だけでは、人手不足に陥る可能性があります。

今回の記事を参考に、組織の活性化や業績アップを図るための重要な人事戦略として、出戻り社員の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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知恵袋編集部
「人と組織の成長を加速する」というミッションのもと、採用、育成、定着を支援する様々なソリューションをワンストップで提供するカケハシ スカイソリューションズならではの知見をお伝えすることを目的として記事を執筆・編集。中途採用の知恵袋では、採用担当向けに、中途採用全般に役立つノウハウを幅広く取り扱っています。
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