中途採用ノウハウ

アルムナイ採用とは?退職者を再雇用するためのポイントやメリットについて解説

アルムナイ採用とは?退職者を再雇用するためのポイントやメリットについて解説

労働人口が減少し人材獲得が困難を極める昨今、注目を集めているのが「アルムナイ採用」です。

「アルムナイ採用」という言葉を聞きなれない方も多いでしょう。

本記事では、「アルムナイ採用」とは何か、そしてアルムナイ採用を活用するためのポイントについて解説していきます。

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アルムナイ採用とは?

アルムナイ採用とは、他社への転職や起業など、様々な理由で自社を退職した人を再雇用する採用のことです。

アルムナイ(alumni)は「卒業生」や「同窓生」を意味する英語で、企業においては自社の退職者やOB・OGを指す言葉として用いられています。

アルムナイ採用では、退職者を自社の貴重な人材資源ととらえ、継続的にネットワークを築き、その中から自社に合った人材を再雇用します。

アルムナイ人材は自社の企業文化や業務をすでに理解しているため、即戦力として活躍できる点が大きな魅力です。
また、過去の実績を踏まえて信頼性の高い人材を獲得できることから、採用リスクを軽減する効果も期待されています。

アルムナイ採用の特徴

アルムナイ採用の特徴は、転職や起業などを理由に「自発的に退職した人材」を対象とする点です。

アルムナイ人材は自社を退職した後もビジネスシーンで活躍し、他社での経験を積んでいると考えられます。

また、アルムナイ人材は「過去に自社で活躍していた人材」であるため、アルムナイ人材の再雇用は即戦力の確保につながります。
さらに、「自社の企業理念や企業文化を理解している人材」であることから、アルムナイ採用はミスマッチなく採用できる可能性が高いチャネルとして注目されています。

アルムナイ採用の現状

株式会社プロフェッショナルバンクが実施した調査によると、アルムナイ採用(再雇用)を実施している企業の割合は67%でした。
アルムナイ採用に至った経緯で最も多いのは「過去在籍社員からの自己応募」で、70%の回答を得ています。

また、再雇用する際の選考方法については、「選考しない」が10%、「簡易選考」が58%で、約7割の企業が通常とは異なる選考方法で採用を進めていることがわかりました。

再雇用における「採用率が100%」と回答した企業は34%、「採用率が50%以上」と回答した企業は48%であることから、アルムナイ人材と企業とのマッチング率の高さが伺えます。

同調査にて、アルムナイ採用を実施してよかった点について一番多かった回答は、「即戦力として活躍してくれた」が35%、次いで「採用コスト・教育コストを抑えられた」が16%、「新たに身に付けたスキルを還元してくれた」が11%でした。

これらの結果より、アルムナイ採用は採用課題を解決できるとともに、現場としてのメリットも大きいことがわかります。

特に若い世代において転職が一般的な選択肢となりつつある現在、アルムナイ採用は中途人材を確保する方法としても重視されています。

(出典:株式会社プロフェッショナルバンク「再雇用(アルムナイ採用)の実態に関する調査」)

アルムナイ採用が注目される理由とは?

アルムナイ採用が注目されている背景にはどのような理由があるのでしょうか。
主な理由を2つ紹介します。

雇用の流動化への対策

アルムナイ採用が注目される背景の一つとして「雇用の流動化」が挙げられます。

雇用の流動化とは、人材が企業間を移りやすくして労働力の流動化を図ることにより、企業の生産性が向上して経済成長につながる状態を指します。

雇用の流動化によって企業は人材を獲得しやすくなる一方、人材流出のリスクも抱えることになります。
企業にとって働き手の確保は喫緊の課題であるため、「転職潜在層」であるアルムナイ人材にも目を向ける企業が増えていると考えられます。

人的資本経営の考え方が普及

人的基本経営とは、人材を「資本」としてとらえ、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

経済産業省が人的資本経営の指針として作成した「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」では、自社を退職したアルムナイを「自律的なキャリア意識を持つ人材」「目的意識が明確な人材」と位置づけています。

このように、アルムナイも自社の資産だとする価値観が広がっていることも、アルムナイ採用が注目される理由といえます。

(参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」)

アルムナイ採用をおこなうメリット

アルムナイ採用をおこなうことで、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。
アルムナイ採用をおこなうメリットを紹介します。

自社に合った即戦力人材を獲得できる

アルムナイ採用をおこなうことで、自社に合った即戦力人材を獲得できる可能性が高い点がメリットです。

その理由として、アルムナイ人材は初対面の応募者よりも基本的な企業理解が進んでいるため、マッチング率が高くなると考えられます。

また、退職を経たことで在職時には気づけなかった自社の強み・弱みを再認識する機会もあるでしょう。

転職によって得られた新たな視点や他社での経験・スキルなどを業務に活かすことで、自社の成長に貢献してくれると期待できます。

採用や育成にかかるコストを抑えられる

アルムナイ採用では、基本的に退職者本人からの応募や在職者からの推薦があって採用に至ります。

求人媒体などを活用して広く募集をかける必要がないため、採用にかかる時間とコストを大幅に抑えられるのがメリットです。

アルムナイ人材は、すでに自社の企業文化や働き方を把握しているため、採用後の研修費用を削減できます。

通常、即戦力として短期的な成果を見込める人材を採用するには、求人や選考過程に工夫を凝らす必要があることを考えると、採用や育成にかかるコストを削減できる点は、大きなメリットといえます。

転職潜在層へのアプローチになる

自社を退職したアルムナイ人材と適切につながりつづけることは、転職潜在層へのアプローチになります。

普段からアルムナイ人材と接点を持つことでお互いの状況が見えるようになると、再入社へのハードルを下げることができるでしょう。

アルムナイ人材がいざ転職を考えた際に、自社を転職候補先として第一想起してもらえると期待できます。

また、「辞めても関係性がつづくのが当たり前」という企業文化があると、ネガティブな退職を減らせるといったメリットも考えられます。
このような理由から、アルムナイとのネットワークづくりに関心を持つ企業は増えています。

従業員体験(EX)の向上につながる

アルムナイ採用は、従業員体験(EX)の向上につながる点もメリットだと考えられています。
従業員体験(EX)とは、従業員が会社の中で働くことを通して得るすべての経験のことです。

アルムナイ採用で一度退職した人材が戻ってくることで、在職中の社員に対して「転職してもまた戻りたいと思える会社」だと印象づけられます。

自社で働くことへの誇りは従業員エンゲージメントの向上にも作用し、そのような社員が増えると社内の雰囲気もよくなります。

アルムナイ採用とは?退職者を再雇用するための5つのポイント

アルムナイ採用を企業がうまく活用するためのポイントは5つあります。

  1. 退職者との関係性を維持する手段を決める
  2. アルムナイ採用を周知する
  3. 退職時、快く送り出すことでよい印象を残す
  4. 退職者と定期的に連絡をとる
  5. 社内の受け入れ体制を整える

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.退職者との関係性を維持する手段を決める

アルムナイ採用を活用するためには、退職後も退職者との関係性を維持する必要があります。

関係性を維持する手段は複数あります。個人的にSNSでつながる方法や定期的にメールを配信する方法、コミュニティサイトを作成し登録してもらうといった方法も考えられるでしょう。

退職者とのこれまでの関係性を考慮して選択する方法をかえてみてもいいかもしれません。

運用者がもっとも負担なく定期的にコミュニケーションをとることが可能な手段を選択することが重要です。

2.アルムナイ採用を周知する

退職時に忘れずにアルムナイ採用の存在を伝えるようにしましょう。

退職後、仮に「戻りたい」と思ったとしても退職者側からは申し出にくいものです。

アルムナイ採用について説明し、退職者の再雇用に積極的であることを伝えておけば、退職者が再び転職を検討した際に「出戻り」も選択肢のひとつとして考えられるようになるでしょう。

3.退職時、快く送り出すことでよい印象を残す

アルムナイ採用を活用していく上で退職者が会社に対してよい印象を持っていることは重要です。

悪い印象しかない会社に戻りたいと考える人はいません。

退職を選択しているということは何かしら会社に対して不満を抱いている可能性が高く、何もフォローしなければ悪い印象だけが残ってしまうことになりかねません。

退職者が出ることは会社にとってつらいことではありますが、今後良好な関係性を保つためにも快く送り出すことを心がけましょう。

4.退職者と定期的に連絡をとる

退職者との関係性を維持する手段で何を選択したかにもよりますが、期間を決めて定期的に連絡をとり近況の把握に努めましょう。

もし社内で募集しているポジションがある場合には、再雇用の提案も合わせておこなうとよいでしょう。

その際、一度再雇用の提案を断られたからといってあきらめてはいけません。退職者の状況も時の経過とともにかわります

一度断ったポジションであっても、時が経過すれば魅力的に感じる可能性もおおいにあります。

期間が空いて再度募集しているポジションがある場合には、必ず告知をおこなうようにしましょう。

5.受け入れ体制を整える

退職者を再雇用する場合、既存社員から不安の声や反発の声が上がる可能性があります。はじめて退職者を再雇用する場合は特にその可能性が高いでしょう。

「一度退職した人を再雇用してもまたすぐに辞めてしまうのではないか。」
「会社に不満があって辞めたはずなのになぜ戻ってくるのか。」

このような不快感を示す既存社員がいてもおかしくありません。

アルムナイ採用を活用したことで既存社員が不満を抱き、万が一退職してしまっては元も子もありません。

そのような状況にならないためにも、なぜ退職者の再雇用を推奨するのか、採用難の昨今、退職者を再雇用することがもたらすメリットや、なぜその退職者を再雇用するにいたったのかをきちんと説明し、既存社員が退職者の再雇用を受け入れられるように準備をしましょう。

再雇用した出戻り社員が現場で活躍する経験を積んでいくことで、既存社員から不安の声や反発の声が上がることはなくなっていくはずです。

アルムナイ採用の活用事例

実際にアルムナイ採用を活用できた事例を知りたい、という方もいるでしょう。

この記事を書いている私もアルムナイ採用で約7年ぶりに再雇用された出戻り社員です。
ここからは私が再雇用されるにいたった経緯とポイントをお伝えしていきたいと思います。

私が出戻り社員となった経緯

私が再雇用されるにいたったきっかけは、当時の同期からのSNSでの連絡でした。近況の確認と合わせて、募集している職種があることを伝えられました。

最初に連絡をもらったとき私はちょうど異動が決まったタイミングで、異動した部署でがんばりたいという気持ちが強く、再雇用の申し出は断ることになりました。

それから1年が経過し、新しいスキルを身につけようと転職も含めて検討していたタイミングで再び当時の同期から募集している職種があるという連絡を受け、出戻りという道を選択しました。

アルムナイ採用を活用できたポイント

私が出戻りを決意するにいたったポイントは3つです。

  1. タイミングがよかったこと
  2. 退職時、円満に退社できていたこと
  3. 出戻り社員が多かったこと

1.タイミングがよかったこと

定期的に声をかけられたことで、ちょうど転職を検討しているタイミングで声をかけられたから

2.退職時、円満に退社できていたこと

退職したことに対する申し訳なさはあったものの、既存社員が嫌な顔せず送り出してくれたことや在籍時の関係性から、会社に対してよい印象を抱いていたから

3.出戻り社員が多かったこと

私の他にも出戻り社員が複数いることを知り、社内に出戻り社員を受け入れる体制があると感じ安心感が得られたから

すでに退職した人材と改めて関係性を築こうと思ってもなかなか難しいものです。

まずは既存社員との関係性を築くことを優先し、退職者が出た際にも快く送り出すことでよい印象を残すことからはじめてみてはいかがでしょうか。

今回の事例からもわかるように、アルムナイ採用を活用する上で必ずしも人事が退職者と関係性を維持する必要はないといえます。

大事なのは定期的にコミュニケーションをとることです。

退職者の同期や上司など、すでに関係性が築けている社内の人材に協力してもらうこともひとつの手段として考えるようにしましょう。

労働人口減少に備え、アルムナイ採用をうまく活用しよう

日本の労働人口が減少することは周知の事実であり、今後も採用難はつづく見込みです。

「一つの会社に長く勤めよう」という終身雇用の考え方も収束しつつあり、人材の流動性は高まってきています。

アルムナイ採用をおこなうことで、「自社に合った即戦力人材を獲得できる」「採用や育成にかかるコストを抑えられる」「転職潜在層へのアプローチになる」「従業員体験(EX)の向上につながる」といったメリットが得られます。

退職者を減らすだけではなく、退職者も人的資源としてとらえ、再雇用の可能性を維持していくことが重要です。

「アルムナイ採用の活用方法はわかったけど、活用するメリットがよくわからない」
「一度退職した人材を再雇用して大丈夫なものなの?」

そのような疑問をいただいた方はぜひ以下の記事をご一読ください。

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