企業の採用活動は大きく「新卒採用」と「中途採用」の2つにわけられます。
新卒採用はポテンシャルが重視されるのに対し、中途採用は「採用ニーズに合った経験やスキルを所有しているか」を重視して採用をおこないます。
職務経験のある人材を採用する中途採用の場合、ビジネスマナーなど基礎的な人材育成の手間を省略でき、早期戦力化が期待できます。
また、他社での職務経験がある人材から自社にはない知識やノウハウを取り込めることもメリットです。
メリットも多い中途採用ですが、どのように採用活動をすすめると採用がうまくいくのか、進め方を悩んでいる人事担当者もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、中途採用の理想の手順や、採用を成功させるために押さえておくべきポイントについてご紹介します。
目次
中途採用の現状とは?
中途採用の流れについて知る前に、中途採用の基礎知識や現状について解説します。
中途採用と新卒採用の違い
まずは、中途採用と新卒採用の違いについて見ていきましょう。
中途採用の目的や時期、メリット・デメリットなどいくつかの観点から、新卒採用と比較して表にまとめました。
自社が注力すべきなのはどちらの採用なのか、検討する際の参考にしてください。
中途採用 | 新卒採用 | |
採用目的 |
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ターゲット | スキル採用 | ポテンシャル採用 |
採用時期・期間 |
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メリット |
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デメリット |
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中途採用では、即戦力となる人材を獲得でき、採用期間も短いため人事の負担が少ないのがメリットと言えます。
一方、デメリットは優秀な人材を獲得するための報酬や待遇面といった採用コストが高額になることです。
新卒採用では、比較的コストを抑えながら、新入社員を一から育てることで自社に馴染みやすくなります。
しかし、採用活動期間が長期化するほど人事担当者に負担がかかるのが課題として挙げられます。
中途採用のターゲットとは?
中途採用におけるターゲット層は、年代によって「若手」「ミドル」「シニア」の3つに大別されるのが一般的です。
各年代の目安は以下の通りです。
- 若手:29歳以下
- ミドル:30歳~54歳以下
- シニア:55歳以上
若手層(20代)
中途採用のターゲットで最も多い年代が「若手」の20代と言われています。
若手の中でも、以下の階層に分類できます。
既卒 | 大学卒業後、正社員としての就業経験を持たない若年層。 正社員としての就業経験がないため、新卒採用と同様のポテンシャル採用に分類される。 |
第二新卒 | 大学卒業後、就職したものの3年以内に退職、または転職活動をおこなっている人材。 少なからず社会人経験があるため、最低限のビジネスマナーや知識を身につけているのが特徴。 |
即戦力 | 3年以上の業務経験のある人材。 研修の必要がなく、即戦力として期待できるのが特徴で、人によっては専門性の高いスキルを保有しているケースもある。 |
ミドル・シニア層(30代以上)
ミドル層は、プレイヤーとして高いパフォーマンスが期待できるほか、部下の管理・育成などマネジメント経験者も多い層です。
ボリュームのあるシニア層では、人手不足解消の手立てとして積極的に採用する企業が増えています。
プレイヤー | 豊富な知識やスキルを持っている、高いパフォーマンスが期待できる人材。 自社にない人脈やスキルを持っているケースもある。 |
マネージャー (管理職) |
部下の管理・育成などマネジメント業務の経験者が多い層。 自社にないノウハウや視点、経験から組織の成長が期待できる。 |
労働力として | 運送業やタクシードライバー、警備員などで労働力として期待できるシニア層を指す。 ボリュームがあるため、慢性的な人手不足に悩む業界がシニア世代を積極的に採用している。 |
現在の中途採用のトレンド
労働人口の減少や働き方に対する価値観の変化など、様々な要因が重なり、ここ数年は「売り手市場」と言われています。
2024年12月時点の有効求人倍率は1.25倍と、企業にとって人材の獲得が難しくなっているのが見て取れます。
また、株式会社マイナビが実施した「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」によると、企業における年間の中途採用人数は増加傾向にあります。
(参照:株式会社マイナビ「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」)
2023年の企業における年間採用人数を見ると、平均21.8人。
2022年と比較して2.6人、2021年と比較すると5.5人と年々増加し、調査開始以来最多の人数を記録しています。
人材獲得競争が激化する中で、人材確保の手段として多くの企業が中途採用をおこなっていることがわかります。
(参照:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年12月分及び令和6年分)について」)
採用フローとは?
採用フローとは、採用活動における「流れ」のこと。
採用計画の立案から始まり、募集や書類選考、面接から入社までと様々なプロセスを辿る採用活動を可視化して、適切な運用を目的に作成するものです。
採用フローは、新卒採用や中途採用など採用手法によってプロセスが異なります。
複数の採用手法を併用しておこなうことが多い採用活動において、一つひとつのプロセスを確実にこなしスケジュール通りに進めるためにも採用フローの作成は不可欠と言えます。
採用フローを作成するメリット
採用フローを作成する主なメリットを以下で解説します。
改善点が可視化できる
採用フローを作成することにより、採用活動の改善点が可視化できるメリットがあります。
「各工程のスケジュールは適切か」「採用のボトルネックはどこにあるのか」など、採用活動の流れを分析・検証することで、採用フローのどのプロセスに課題や問題があるのかが見えやすくなります。
洗い出された課題に対して改善を図りブラッシュアップしていけば、採用力が向上できます。
情報共有や連携を強化できる
社内での採用活動に関する情報共有や関係者との連携を強化できるのも、採用フローを作成するメリットの一つです。
採用フローを作成することで選考の進捗が可視化でき、情報共有がしやすくなります。
関係者全員が採用フローを把握し、同じ認識を持って採用活動に取り組めば、連携も強化されスムーズな採用活動につながります。
また共有漏れや確認の手間を減らし、トラブル防止にも効果的です。
中途採用の理想の手順
中途採用の手順には、企業が新しく人を採用する際におこなう「採用計画・選考・内定・入社」などがあります。中途採用の手順として、どのようなプロセスを踏めばよいのか、順を追って解説します。
- 採用計画の立案
- 母集団形成
- 採用選考
- 合否連絡・内定通知
- 入社手続き・入社後フォロー
手順(1)採用計画の立案
採用計画を立てる際は、採用目標の設定とスケジュールの策定からおこないます。
事業の拡大や社員の退職に伴う中途採用の場合、「どの部署に」「どのような人材が」「いつまでに」「何人必要か」を整理します。
中でも、求める人材を設定する際は、現場の社員にヒアリングして「具体的な人物像を洗い出し、ニーズを反映させる」ことが大切です。
中途採用は通年での実施が可能ですが、時期によって転職活動に波があります。
一般的な転職活動の動きとして、年度末で退職して新年度から転職する「3月~4月」や、ボーナスを受け取ってから転職する「6月と12月」、9月末の上半期を終えてから転職する「9月」が活発になります。
転職活動が活発な時期は求人倍率も高まるため、あえて時期を外し、前倒しで採用するスケジュールを策定する企業もあるようです。
手順(2)母集団形成
採用活動では、いかに自社が求める人材を多く集められるかが重要です。
母集団形成を成功させるためには、求職者が共感できる求人広告を作成し、募集を開始します。
募集要項には勤務地といった必須事項に加え、「企業のビジョン」「自社ならではの魅力」「入社後のキャリアパス」などを表記しますが、中途採用では他社の求人と差別化するために、「職務内容」「職場の雰囲気」「キャリアアップの内容」をより具体的に伝えます。
また、募集をかける媒体によって集客できる層は異なります。
求める人材がどのような媒体を利用しているのかを事前にリサーチし、どこに掲載するかを選択しましょう。
手順(3)採用選考
採用選考では、応募者に対して「書類選考」「技能審査」「面接」などによる選考をおこないます。
中途採用では、入社後に自身が抱くキャリアイメージとの違いや、企業文化になじめないことなどを理由に早期退職してしまうケースが懸念されます。
入社後のミスマッチを防ぐために、面接では「転職先に何を求めているか」「自分の能力を活かしてどのように成長したいか」などを確認するのがポイントです。
手順(4)合否連絡・内定通知
中途採用での合否連絡や内定通知は、できるだけ迅速におこないます。
中途採用の応募者は、複数社の選考を同時進行で進めている場合が多いです。よい人材を逃さないためには、スピード感のあるフローが欠かせません。
内定の受諾は内定通知から一週間以内とすることが一般的です。また、よい人材ほど在職中の職場から引き留められることも考えられます。
内定後は採用者に雇用契約書を渡しますが、郵送ではなく来社してもらい、手渡しする方が効果的です。
内定辞退が起こらないように、定期的にコンタクトを取るなど細やかな対応が求められます。
手順(5)入社手続き・入社後フォロー
内定後は、労働条件通知書の作成など入社に必要な各種手続きをおこないます。
職務経験があっても新たな環境に適応するのには時間がかかると想定し、定期的な面談の実施や世話係を配置しましょう。
入社後の面談では、仕事内容や待遇について認識のずれや細かなギャップなどが発生していないか確認します。
中途採用を成功させるために押さえておきたいポイント
中途採用を成功させるために、人事・採用担当者はどのようなことを心がけるとよいのでしょうか。
これまでのべ3,000社の採用支援に携わる、カケハシ スカイソリューションズのキャリア採用事業部 執行役員に採用成功のポイントを伺いました。
キャリア採用事業部 執行役員
中途採用だからこそ重要となる手順は?
中途採用では、採用計画の時点でどのような人材を採用するのか、「ターゲット像を明確にする」ことが重要です。
新卒者は「同じ世代」「社会人経験がない」という共通点があり、その中で自社が求めるポテンシャルや価値観に合うかどうかで見極めることができます。
一方、中途採用の求職者は「職務経験が異なる」「世代もバラバラ」であることが多いため、ターゲット像が明確に決まっていなければどの人材を採用するべきか決められなくなってしまいます。
ターゲット像が不明確であるがゆえに、採用担当者が感情的に揺れ動いてしまい、その間に他社に決まってしまうことも少なくありません。
迷わず合否判断できる状態まで社内で徹底的にすり合わせておくことが大切ですね。
中途採用成功のために意識すべきこととは?
中途採用では対応のスピード感が求められます。
転職者は、よりスピーディーに内定をもらえる企業やアプローチしてくれる企業を選ぶ傾向があります。
「一週間後に面接する人を見てから決めよう」というように、候補者を相対評価していると対応が遅くなってしまうため、中途採用では絶対評価による選考が有効ですね。
絶対評価をおこなうためには、さきほども述べましたが、あらかじめ採用の基準値を決めておくことが重要です。
この3つに当てはまれば合格と判断できるような基準を設けることで、感情論で判断することがなくなります。
スピード感を持った判断が求められる中途採用では、面接官の主観を抜いた方がよい結果につながりますよ。
内定辞退を防止するために必要な内定者フォローとは?
内定を決定する前に、「現職で退職が受理されているのか」をしっかり確認する必要があります。
よい人材ほど引き留められる傾向があるためです。
また、本人の意向はもちろんのこと、配偶者の意向も確認できるとよりよいですね。
労働条件や給与について家族が納得していない場合、内定を辞退されるケースもあります。
これらの情報を事前に得られるかが、内定辞退防止のポイントにもなりますね。
中途採用の担当者に必要な心構えとは?
やはりなんと言っても、採用ターゲットをしっかり選定するに尽きますね。
中途採用のフローを手配する人と、直接面接して候補者をジャッジする人は異なるケースの方が多いです。
採用活動ではいろいろな人を動かす必要があるため、関係者が共通認識を持っておくことが大切です。
人事・採用担当者は、採用した人材が配属される部署の人たちとの情報共有も欠かせません。
また、求人広告を出す媒体を選ぶ際は、掲載料が安いから使ってみるのではなく、自社の魅力を効果的に打ち出せる媒体かどうかを十分検討するとよいでしょう。
まとめ
中途採用では、異なる世代や様々な職務経験を持つ人材を相手に求人募集をおこないます。
中途採用の手順には、採用計画の立案や母集団形成、採用選考、合否連絡、内定者フォローなどがありますが、中でも重要なのは採用計画の立案時に採用ターゲットを明確にすることです。
母集団形成において基本となるのは求人広告です。
効果の出る求人広告の作り方を知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

また、中途採用ではスピード感も求められます。合否の判断に迷わないように、採用の基準値を明確に定めておきましょう。

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