ビジネスコラム
「動く」ではなく「働く」
海外事業部 グループマネージャー 三上 富士雄
先日、労働生産性についての国別ランキングが発表されました。
毎年OECDから発表されるデータで、先進7カ国で日本は数年、最下位が続いています。
他の先進国の日本人の働き方に対する調査では、「働きすぎ」「効率が悪い」「過剰サービス」などの声がよく聞かれるそうです。
しかし、このようなイメージとは別に、日本または日本人によって生産される製品やサービスの品質が、世界中から高い評価を得ていることは間違いありません。
生産性とは、資源から付加価値を産み出す効率内容を意味します。
私は過去に、「生産性を高める努力」について、大きな影響を受けた出来事がありました。それは研修で参加したトヨタ自動車様の工場見学です。
工場見学では、作業する机の高さや向き、隣の従業員との作業エリアの間隔など、現場から生み出された数々の業務効率策の紹介から、ロボットアームで溶接するFA技術の活用まで、生産性を高めるための強いこだわりと深く考えられた数々の仕組みについて学びました。
その後、トヨタ自動車に関する書籍を熟読しましたが、主に書かれていたことは、工場で見たような生産性を高めるためのノウハウよりも、トヨタの従業員として働くために必要な考え方や姿勢など、人材育成の重要性についてでした。
一般的に生産性の向上へ取り組むにあたり、
「目的」「プロセス」「ねらうべき効果」「結果の共有」
この4つの基準で理解浸透をおこなうことが課題になります。
しかし実際は簡単なことではありません。生産性の向上を従業員へどのように意識させて取り組ませるか?ここが大きなポイントになります。
従業員の意思を生み出すためには、
「目的」「プロセス」「ねらうべき効果」「結果の共有」に加え、
「誰のため」
という基準を加えるべきだと私は考えます。
この基準内容は従業員が納得して働くための大きな要因です。成果の向こう側に見えてくる顔。改善結果だけではなく、お客様を第一に、関わる人の気持ちを考えながら取り組むことは、働く姿勢として大事なことです。
しかし、この基準には、社内の人材教育のレベルが大きく関係してきます。
高い品質と効率化の両立による付加価値の源泉は、問題解決のための「思考力」と人の気持ちを感じるための「思いやり」だと思います。
他社のノウハウの真似による行動ではなく、人のために取り組む意識、行動が、「点」ではなく、いつまでも続く「線」としての生産性向上へとつながり、結果的に企業風土として形成されることが理想です。
自主的に問題解決へ取り組める社員がいる企業とそうでない企業の差は大きい。経営者が今の生産性を見て、未来への改善に取り組み、従業員は過去の生産性を見て、現在の改善に取り組むことで、風土づくりは始まります。
人間の思いと思考力は無限大です。
従業員の思いと思考力を最大限に引き出し続けることが、一番の生産性の向上ではないでしょうか。
2016.12.14 KSN 131
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