ビジネスコラム
中小企業と、シンギュラリティ。

ヒューマンリレーション事業部 グループマネージャー 李 泰一


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「シンギュラリティ」という言葉を聞いたことはありますか?

日本語で「技術的特異点」と訳され、人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事という意味で使われます。特異点の後では、科学技術の進歩を支配するのは、人類ではなく人工知能になると言われています。

まるでSFの世界のような話ですが、その特異点が2045年、つまり、いまから30年後にやってくるというのです。

30年後の話か、と他人事にはしていられません。

いまや、ITと無縁な業界は無いと言っても過言ではなくなり、10年前には考えられなかったほど、多くの仕事を人工知能が代替するようになりました。私が聞いた話によると、いま話題のテレビCMのアイディアも人間ではなく、人工知能が導き出したそうです。

シンギュラリティに関する詳しい話は別の機会に譲るとして、それほど技術進歩の激しい現代において、企業が時代の変化に飲み込まれず、勝ち抜くためには何が大切なのかというテーマについて、今日はお話したいと思います。

情報技術の進化に比例して、大きく変化したものが一つあります。それは、ビジネスモデルの平均寿命です。

1920年~1930年代は65年。1990年代では15年。2010年では10年。そして、近年では5年と言われるほどにビジネスモデルの平均寿命は短くなっています。

情報の流通スピードはますます加速し、地域や国を超えて、全世界的にリアルタイムで情報が拡散・消費されるようになりました。身近なシーンで考えても、情報技術の発達により、情報共有の手段は多様化し、どこにいても仕事ができるようになりました。つまり、様々な側面でビジネスのスピードが早くなっているのです。

それは単に作業スピードの話にとどまりません。

情報の流通スピードが早くなるわけですから、当然、状況が変化するスピードも早くなります。ですから、企業にはその変化に対応するスピードが求められるようになったのです。

すべての状況変化に対して、いちいち経営TOPの判断を仰いでいては、変化に取り残されてしまいます。自ら意思決定できる社員が何人いるか。意思決定のスピードをいかに早めることができるか。それが、これからの時代を勝ち抜くために最も大切なことだと私は考えます。

もちろん、社員が勝手な判断でバラバラな意思決定をしていたら、変化に対応するどころか組織に混乱が起き、企業としての方向性を見失ってしまいます。重要なのは、企業としての軸をきちんと理解した上で、一定の基準をもって、それぞれの社員が意思決定をできるようになることです。

その軸や基準こそが、企業理念であり、企業としてのミッションなのです。

「社長が決める」のではなく、「理念とミッションに基づいて」決める。

社員に意思決定を任せるとなれば、特に移行期には、大小さまざまな失敗が起きると思いますが、まずは、経営者ご自身がパラダイムチェンジをすることが求められているのだと私は考えます。

30年後に「シンギュラリティ=技術的特異点」が訪れるとするならば、企業の意思決定の特異点はもっと近い未来に訪れるはずです。いえ、もしかしたら、すでに訪れているのかもしれません。

そして、この特異点は、組織規模が大きい大手企業ではなく、中小企業がリードすべき時代的変換点なのだと思います。


2016.11.09 KSN 129

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