インドは国土面積が日本の約9倍、人口は10倍、
購買力平価GDPは中国、アメリカに次いで世界第3位、
経済成長率7%台という将来有望な巨大マーケットであり、
2050年には中国を抜き世界一の人口になると言われる大国だ。
今回、その第5位の都市バンガロールを視察した。
先月の日経新聞の記事で、
インドのシェアで出遅れていたアップルが
開発拠点をバンガロールに開設するという発表を見たが、
他にもマイクロソフトを筆頭に世界的IT企業が集結しており、
バンガロールはインドのシリコンバレーと言われている。
視察の目的は、インドでITを学ぶ優秀な人材を
日本企業が採用できるのか、その可能性を見極めることで、
リサーチのため、現地の大学生や若い社会人、
日系企業の協力によるインド人技術者をインタビューした。
当社では、中国、韓国、ベトナム、カンボジアでの
外国人採用サービスを手掛けており、
各国の若者とコミュニケーションを取る機会も多い。
その経験とインドを比較すると、明確な違いがある。
東南アジアの若者には必ず、日本への憧れや尊敬がある。
国土は小さいが、日本は素晴らしいアジアのリーダーだ、
というイメージを持たれている。
多くの若者にとって日本での就職はひとつの夢と言える。
一方、インドの若者にとって日本は、
アジアの隅にある小国に過ぎない。
トヨタやスズキ、ソニーなど日本製品のイメージはあっても、
国としての日本にこれといったイメージを持っていない。
インド人にとって日本は、縁の薄い国らしい。
しかしマーケットとして見れば、巨大なことは間違いない。
貧困層が20%近く存在するが、国内の貧富差は大きく、
富裕層、中間層も多い。
莫大な市場規模である。
同時に、未だインフラは未整備で交通渋滞が激しく、
停電も多い。まだまだモノ不足で、質より量だ。
スーパーの陳列も見た目より数量重視で、
商品がうず高く積み上げられているなど、色気がない。
国民性はどうかと言うと、
12億人ものインド人の特徴を一言では表しにくいが、
多様性を許容しているという意味で、
総じて大人で、懐が深く、個人主義である。
イメージの強い宗教とカーストについては、
ビジネスでは全く口に出されることがなく、影響はない。
気質は、問題を避けようとする日本人の真逆で、
問題にぶつかって対処するチャレンジングな性格だ。
また、インドと言えば教育大国でもある。
語学の習得に長けていて、多くが3、4ヶ国語を話す。
教育制度は日本の6・3・3制とは違い、5・3・2・2制だ。
小学校を訪問し、10歳の数学の授業を見学したところ、
等比数列を習っていた。日本では高校数学の科目だ。
テキストには三角関数や因数分解も含まれていた。
だが、6歳の算数の教科書は日本とほぼ変わらないのだ。
その5年間での習得の早さとレベルには驚くばかりだ。
大学教育を見ると、バンガロールだけで188大学あり、
毎年4万人のIT人材が生まれている。
しかし失業率は高く、
職に就いてないエンジニアが30万人余り存在するという。
日本でエンジニア職は完全な売り手市場だが、
バンガロールには語学に長け、数学レベルの高い、
優秀なIT人材マーケットがあることは確かなようだ。
また、大陸としての人材ネットワークの繋がりがあり、
将来的に中東アジアやアフリカ市場を考えるのなら、
インドは戦略拠点として最適な位置にあると言える。
長期的な視点で海外展開を考えるならば、
これからインドはおもしろい存在になりそうだ。
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