「大手企業の内定をもらいましたが、
辞退しようと思っています」
これは3月上旬、ある中小企業の説明会で会った学生の話です。
学生が通うのは決して有名校と言える大学ではなく、
内定をもらったという企業は、誰もが知っている大手企業。
その内定を辞退すると言うのです。
経緯を聞いてみると、1月にその企業のインターンに参加し、
2月にインターン参加者限定の企業説明会の案内を受け、
数回の面接があり、3月上旬には内定に至ったそうです。
早期に獲得した有名大手企業の内定を辞退し、
知名度のない中小企業の説明会に参加しているのはなぜか。
「この内定、全く嬉しくなかったのです。
面接は1、2回で、その中で私が話したのはほんの数分。
ほとんど面接官の話を聞いていました。そんな面接で、
本当に私のことを理解してくれているとは思えなかったので…」
規模や知名度ではなく、
自分をもっと理解してくれる会社を探して、
この学生は就職活動を継続していました。
大手企業の内定が、ステータスにならなかった。
そこに価値を感じられないただの通知に終わったのです。
嬉しくない内定では、入社にたどり着かない。
ならば、その先に入社が待つ嬉しい内定とは何か。
私がお手伝いする企業様が、毎年蓄積されている情報で、
内定時の志望度合いと入社1年以内の離職のデータがあります。
第一志望で入社した社員の1年以内の離職:17%
第二志望で入社した社員の1年以内の離職:30%
第三志望以下で入社した社員の1年以内の離職:67%
歴然とした差です。
自分が入社したいと強く願った企業であれば、
入社後のモチベーションも高く、意欲的に仕事に取り組めるため、
早期離職は少ない。
一方、第三志望以下で入社すると、
やっぱり他社が良かった。本当にやりたいことではなかった、
違う環境ならもっと力を発揮できるのに、
など、自分への言い訳ができてしまい、
早期離職が起こりやすくなるのだと思います。
内定が入社意思を固め、入社後の活躍への原動力となるには、
内定の出し方だけでなく、
そこに至る選考プロセスが重要な意味を持ちます。
1.できるだけ多くの社員と接する機会を提供すること
2.できるだけ多く参加学生一人ひとりの話を聞くこと
3.最終局面で、必要な人材であることをきちんと伝えること
この3つに注力すれば、
学生にとっての嬉しい内定、入社意思が強まる内定、
入社後に「自分が選んだ場所なのだ」と
振り返る価値のある内定になると思います。
入社内定とは本来、一方的なものではなく、
相思相愛になって通知されるものです。
この学生を採用して良かった。
この会社から内定が出て良かった。
お互いにそう思えてこそ、内定に重みが加わるのです。
売り手市場の今、内定が正しく拘束力を持つことは、
採用成功の生命線です。
例年以上に内定の意味を意識して、選考に臨みたいと思います。
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