8月末まで熱戦が繰り広げられた夏の甲子園。
ニュースでは早実の清宮選手に注目が集まっていましたが、
見事45年ぶりの優勝を果たした東海大相模高校は、
プロ野球界が注目する左右の両エースを軸に、
鍛え上げられた守備と強力な打線を擁し、
まさに勝つべくして勝ったチームでした。
150キロ左腕の小笠原投手。
見事なリーダーシップを発揮した主将の長倉捕手。
強打好守でチームを牽引した杉崎遊撃手。
実はこの3人、
中学ボーイズリーグの全国大会・ジャイアンツカップで
日本一になったチームメンバーであり、
神奈川県のクラブチーム、湘南ボーイズのチームメイトでもあります。
この湘南ボーイズを運営しているのは、
東海大相模高校野球部のOBの方々なのだそうです。
同校は名門校ですから、野球界のネットワークは広く、
全国から優秀な選手を発掘し、育成することができます。
そのスカウトで東海大相模に入部した先輩を見て、
同じ道を目指す後輩選手も増える。
この好循環が名門校たる所以なのかもしれません。
3年間で自動的に卒業してしまう高校とは少し違いますが、
企業にも卒業生がいます。
労働人口が減少し、求人倍率が高まり、
さらに雇用が流動的になってきている今、
会社と卒業生との関係はどうあるべきか、
一度じっくり考える価値があると、私は思います。
一般的に、定着率が高い=良い会社、定着率が低い=悪い会社
と思われがちですが、企業も人間の体と同じで、
取り入れた要素を体内に蓄積し続けるには限界があります。
企業が健康でいるためには、健全な新陳代謝が必要なのです。
では、企業の新陳代謝の健全性を何で判断するのか。
それは、社員の退職の仕方と、その後の関係性、
継続的な接続率ではないでしょうか。
退社した社員が会社や上司・同僚を嫌い、憎み、
その後の関係性を一切遮断してしまうのは、双方ともに不幸。
逆に、何らかの理由で退社はしても、
互いに感謝の念を持ち、会社や同僚を尊重し続け、
人間関係や仕事の取引きなどで関係性を維持できること。
そして何より、互いに応援する気持ちを持てることが、
企業にとっても退職者にとっても健全な代謝と言えるでしょう。
退職者と良好な関係を築けていれば、
結婚や出産で離職した社員の復職や
転職して専門分野のキャリアを高めた社員の復帰、
その人数の増加も期待することができます。
こうした退職者との関係構築の仕組み化で有名なのは、
アクセンチュア社のアルムナイ組織です。
アクセンチュア社のアルムナイ所属者は全世界で15万人以上。
この組織内で実際にビジネス提携が実現したり、
現職での求人情報を出すことも、応募することもでき、
同様に、同社への再入社も支援しているそうです。
新たな人材の採用は何より重要であり、
採用した人材を育成することも当然大事ですが、
労働人口が減少している日本で、人材は貴重な資源です。
退職者という少なくとも一度はマッチングした人材を
退社後も資産であると捉えれば、
採用時や在籍中だけでなく、退職時やその後の時間も、
どうあるべきか、意識することができるのではないでしょうか。
企業と退職者が継続的に良好な関係を保ち、
互いに支え合う存在となるアルムナイ制度。
企業にとって常に大きな経営課題である人材戦略での
ひとつの有効な手段として、ご検討ください。
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