もう20数年前のことですが、
バブル期に『就職戦線異状なし』という映画がありました。
企業が内定者を海外旅行に連れ出して長期間拘束したり、
超高級なお店で接待したりするのです。
当時私はまだ中学生か高校生でしたが、
あれは本当なのかなぁと信じられなかったのを覚えています。
さらに、実際の就職活動は真逆の就職氷河期でしたから、
あの風景は、やはり本物とは思えないままです。
人材採用の仕事をはじめて20年弱、
数多くの企業の内定者フォローを見てきました。
景気変動に呼応する施策でもあり、
昨年あたりから各社の内定者フォローに熱を感じています。
施策を提案する立場であり、手厚さを否定するつもりはなく、
もちろんあのバブル期ほどではないのでしょうが、
真の目的に立ち戻って考えるほど、
学生の売り手市場を意識し過ぎた内定者フォローには、
警鐘を鳴らしたいという気持ちがぬぐえません。
内定者フォローには、大きく2つの目的があります。
1:内定辞退防止のため
2:入社までの教育のため
内定辞退防止とは、不安を払拭するということです。
企業は毎年採用活動を重ね、経験が増える一方ですが、
学生の就職活動はたった一度。
それも、たった数か月で選択を迫られるのですから、
自身の選択やこれからが不安なのは当たり前なのです。
会社から定期的に連絡を取ったり、同期意識を持たせたり、
先輩社員とのつながりを持たせる。懇親会や面談を実施する。
苦慮しながら、不安払拭に工夫を凝らすことが重要です。
では、もう一つの目的、入社までの教育とは何でしょうか。
それは、4月をどう迎えさせるのか。迎えさせたいのかです。
4月にどうなっていてほしくて、そのために会社は何ができるか。
ここに工夫を凝らすことの効果は、とても大きいのです。
ある企業では、CSRの一環で寄付している車イスの寄贈先を訪ね、
内定者が車イス利用者に感想や悩みを聞く機会を作っています。
ある企業では、内定承諾後に家庭訪問を実施し、
会社から家族に事業や仕事を説明する機会を作っています。
通常業務中の社内に内定者を1日迎え入れ、社長や社員に
自由にヒアリングできる機会を作っている企業もあります。
共通しているのは、
自社の価値観や考え方をより深く理解してほしいという想い。
4月の入社までに考え、学ぶ機会の提供であることです。
社会人として良いスタートを切るために、大事なのは何か。
その会社としての解を提示するのが、
内定者フォロー施策の役割なのではないでしょうか。
いわゆるビジネスマナーや社会人の基礎的スキルだけでなく、
一生涯の考え方や、仕事へのスタンスを身に付けてほしい。
仕事へ向かう姿勢、物事の考え方を教えたい。
更に深く自社を理解し、戦力になる日を待っている。
そんな考えが詰まった内定者フォローを実施することで、
結果、内定辞退の防止にも効果を発揮するのだと思います。
そして、企業が想いを伝えるフォロー施策をおこなうと同時に、
内定者自身にこそ、4月をどう迎えるのかを考える義務があり、
考える価値があるのだと伝えるのも、
忘れてはならない内定者フォロー施策のひとつです。
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