私のような仕事をしている者にとって、4月は特別な月です。
4月1日という日に不思議な昂揚感を感じると同時に、
自身が社会人として足を踏み出した時のことを
何年経っても必ず思い出してしまう時期でもあります。
できの悪い新入社員だった私は、研修官から
「学生気分が抜けないのなら帰りなさい」と叱られたものです。
未だに当時の同期と集まると、あれはお前が悪かったよなと、
自分達が新入社員だった時の話に花を咲かせるのですから、
新入社員時代の思い出は一生ものなのだと思います。
新入社員を迎えた企業にとって4月は、苦労して採用した人材を
いよいよ育成するステージのスタート地点です。
早く戦力になってほしいという想いを込め、初期教育を開始。
ビジネスマナーやベーシックスキル、仕事に向かうスタンス、
会社の歴史や商品内容、実践的なロープレや実技など、
多くの企業は悩みながら、試行錯誤を繰り返しています。
新入社員研修での大事なポイントはいくつかあるのでしょうが、
お客様企業の社長から聞いたこの研修がひとつの答えだと、
私は感じています。
その企業様では中途・新卒に関わらず、新入社員は全員、
最初に1週間の泊まり込み研修合宿に出かけます。
1週間みっちりと内容の濃い研修をおこなうのですが、
その研修官はすべて、社長なのです。
終了後に「今年の手ごたえはどうですか?」とお聞きすると、
こんな答えが返ってきました。
「手ごたえは分からないけど、
今回もいいプレゼントができたと思うよ」
社長曰く、この研修は、
1週間寝食を共にすることによる言葉と体験のプレゼント。
「いいプレゼントができた」とおっしゃいながら、
「明日から戦力になるような魔法の合宿ではないけどね」
と笑って話してくださる姿が印象的でした。
事前準備にも時間がかかり、継続は大変なはずですが、
創業以来ずっとこの1週間の合宿スタイルでの新入社員研修を
続けてられているのですから、その価値は大きいのでしょう。
人は体験から学びますが、体験しただけでは育ちません。
仕事を積み重ねる中で体験は経験になり、
ただの言葉が知識となり、知恵となり、血肉になっていきます。
その過程を経て自身の力になった瞬間、
きっかけとなった体験を思い出し、自身にフィードバックする。
これが、成長の正体なのではないでしょうか。
自分を救ってくれる技術やスキル、
かけがえのない仲間との絆、何かに貢献できる喜びなど、
人には様々な成長の仕方がありますが、
何かが身についたと自認できた時、ふと
「あの時あんなことを言っていたけど今なら意味が分かるな」
「あの時の体験がこの仲間との始まりだったんだな」
「あの時叱られたのはこの瞬間のためだったのかもしれない」
と振り返るものです。
いつか成長を促すスイッチとなる言葉や体験を贈ること。
これが、初期教育の最重要ポイントのひとつなのだと感じた、
社長の言葉でした。
自社の新入社員研修では、どんな言葉や体験を贈っていますか?
新入社員研修に工夫と想いを込めて、
最初のプレゼントを贈ってみてはいかがでしょうか。
忘れられない体験は必ず、
将来、社員の成長のスイッチとなるはずです。
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