政府は先の内閣改造後、初めてとなる規制改革会議の会合を開き、
政権の重要課題である「女性の活躍」の実現に向け、
あらたに女性活躍推進担当大臣を設けた。
日本の産業維持のためにシュリンクする労働人口問題に対し、
その問題解決策のひとつとして、
女性の戦力化を国家レベルで考えるのが創設の目的である。
人材採用の売り手市場が加速する中、
企業が従来は注力してこなかった採用マーケットにも
積極的に注目しなければならない状況にあるのは言うまでもない。
企業のグローバル化が進み、外国人採用の需要が増えたとはいえ、
実情として外国人のホワイトカラー採用はまだまだ少なく、
男女雇用機会均等法があるとはいえ、
男性と比べて女性の大企業への就職は厳しいのが現状だ。
しかし今、この2つの採用マーケットは無視できない。
弊社は設立以来、女性採用と外国人採用に力を入れてきた。
そこに優秀な人材を採用できる市場原理があるからだ。
外国人採用では、自社で中国人とベトナム人を採用し、
顧客へのサービスとしてもホワイトカラー採用を実施している。
しかし成果という意味では、顧客企業での採用成功実績はあれど、
社会通念的な壁を突破するほどの成果には、まだ至っていない。
ホワイトカラーで外国人を採用する企業は、
ビジネス日本語での会話や高度な論理的思考を要望するため、
単に日本語という言語を話せるというレベルだけでなく、
文化や社会的な背景を理解した上でのコミュケーション力を
求めなければならない。そうなると確認必須項目は増え、
採用決定に至るまでのコミュニケーションコストは
想像以上に高くなってしまうのだ。
外国人採用の手法は、これからも模索をつづけなければならない。
一方、女性という戦力は、中小企業にとって、
人材を採用し、獲得した人材が成果を上げるという目的に、
最も近い選択肢だと私は思う。
にも関わらず、
ほぼ全ての企業が優秀な男性採用を明確に意識しているのに対し、
女性採用に積極的な対策を持ち、実行できている企業は少ない。
さらに、女性社員の結婚や出産を契機に、組織のマネジメント層や
事業の中枢から外してしまう企業が存在するのも事実だ。
弊社では、女性採用の強化、特に新卒での女子採用と、
女性管理職候補の採用を積極的におこなっており、
社内外へ向けて明確に打ち出している。
それは、組織を大きく育てていくためには女性の存在が重要だと
私が考えているからだ。
女性社員は平均的に、独立志向よりも組織コミット志向が強い。
組織を成長させるためのメンバー育成面と、
徐々にピラミッド型を形成していく組織作りの面でも、
母性本能を持つ女性の方が、
競争本能優位の男性よりも大きく優れている。
また、女性社員の存在が男性社員を活性化させる効果も大きい。
優秀な女性社員を採用できていない会社には、
実際に活躍している中堅層の女性社員がいないことが多い。
ニワトリが先かタマゴが先かという話になってしまうが、
せっかく女性を採用するならば、入社後の育成の仕組み作り、
出産後などの復職後も活躍しやすい風土を含めた職場環境作りが、
まずは採用時のモデル社員となる女性社員を存在させるための
はじめの一歩だろう。
女性の戦力化に成功している企業には共通点がある。
それは、女性の活躍しやすい制度や風土はもちろんのこと、
対女性社員に限らず、企業としての評価システムの考え方、
労働時間や雇用形態、外国人の受入れなど、
すべての社員の働く環境作りに、柔軟な姿勢であることだ。
女性社員、特に既婚者や育児中の女性の働く環境を考える時、
出退社時間がその障害になることは多い。
しかし、そもそも管理職は労働時間数ではなく成果で評価する。
経営者にとって大事なのは仕事の成果であって、
オフィスに拘束するような勤務体制や長時間労働に意味はない。
そして、社員として雇用する意味と目的を考えれば、
その制約の無意味さは、管理職に限ったことではないなずだ。
女性の戦力化強化のためには、
既存の仕組みに対象を女性に限定した制度を追加するのではなく、
労働時間や定時出勤を評価する従来のシステムを見直すことだ。
その見直しと、労働環境変革を実行する経営者の決断こそが
女性採用と戦力化の成功可否を分けるのだと、私は思う。
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