日本の完全失業率は2010年以降下がりつづけ、
今、直近の10年間で最も低い値を示しています。
失業率の低下は喜ばしいことですが、
政府調査の「労働者の過不足感」でも強く不足傾向が出ており、
特に医療福祉、建設業、サービス業で不足の傾向が強いようです。
雇用者側の立場で考えると、
中途採用市場での不足感が新卒採用市場にも波及し、
採用に苦戦する企業が続出しているのが、今の人材市場です。
企業の採用予定数を見てみると、非上場企業で対前年比17.3%増、
従業員100人未満の企業では37.6%増と、
景気回復によって‘人手不足’を感じる裾野が広がっています。
全体でも15.1%増。企業の採用意欲は旺盛です。
採用実施の理由を細かく見ると、様々な事情がうかがえます。
多い順に、組織の活性化、人員構成の適正化、コア人材の確保、
経営状況の好転、既存事業の拡大とつづくのですが、
中でも、前年よりも増えている採用実施理由に、
「退職者の増加」と「前年度に新卒を採用できなかったから」
というものが出てきます。
この二つの理由は非常に気になる事情です。
予算と時間をかけて採用活動をしたにも関わらず、
失敗したがゆえに、さらに採用活動をおこなう。
苦労して確保した人材が定着せず、不足感から採用する。
どこの企業でもゼロではない事情ですが、
これが他の理由を差し置いて採用実施の理由になるならば、
非常に無駄であると言わざるをえません。
一方、求職者側の視点でみれば、
企業の採用意欲が旺盛なため、より好条件で自分に適した企業を
選択しやすくなっています。
今いる会社、今選考中の企業よりも魅力的な会社があれば、
その選択肢が人材を動かしやすい環境だということです。
では、企業は何に注力すべきなのか。
当然、新たな人材を確保するための積極的な取り組みは大事です。
ですが、人材計画に大きな無駄を生まないためには、
まず自社の社員に選ばれる必要があるのではないでしょうか。
今いる自社の社員に選ばれない企業は、
採用市場においても、いずれ選ばれなくなります。
表向きの顔つきが良くても、
今いる社員が活き活きとしていない会社が、
求職者から選ばれることは難しいでしょう。
今いる社員、正社員に限らず雇用しているすべての従業員、
さらには自社を取り巻く人たちを大切にできない企業は、
人材不足倒産への道を歩んでいると言えます。
新規採用と同時に、
組織の求心力を高める採用活動のやり方があります。
むしろ採用活動は組織求心力を高めるためのものだと、
私たちは考えています。
採用活動を実施し、組織が強化され、
社員にも求職者にも選ばれる会社になる。
求人意欲が高まっている今こそ、採用手法云々の前に、
ここに着手するべきなのではないでしょうか。
コラムへのご感想・ご意見など、ぜひお聞かせください。
→letter@kakehashi-skysol.co.jp